自動運転車は、これからのAI時代におけるシンボル的存在となる乗り物です。国内外で多くの自動運転車が開発されています。
今後ますます自動運転車の開発が進み、私たちの生活にとってより身近な存在になれば、車の運転が苦手な人でも安心して運転できる時代が到来すると予想されます。
本コラムでは、自動運転車の基礎知識についてまとめていきます。
※自動運転の機能を過信せず、責任を持って安全運転を心がけましょう。
自動運転車って一体どんな乗物なの?
自動運転車とは「運転操作が自動化される」車のことです。今まではドライバーが目的地まで車を運転していましたが、ドライバーは何もしなくても目的地にたどり着くことが可能になる時代もそう遠くないと考えられています。
自動運転は、米運輸省道路交通安全局(NHTSA)が発表した6段階の「自動運転レベル」で定義されています。
- レベル0:運転自動化なし
- レベル1:運転支援
- レベル2:部分運転自動化
- レベル3:条件付き運転自動化
- レベル4:高度運転自動化
- レベル5:完全運転自動化
自動運転レベルに関して詳しくは、後の項目で詳しくご紹介します。
現在の自動運転レベルは部分運転の自動化である「レベル2」までとなっており、今の日本ではまだ実験段階です。
しかし、2020年には自動運転「レベル4」である高度運転自動化の技術は、一定程度の水準に達するとの見方が強くなっています。
さらに欧州や米国、日本などは2030年前後を目途に、自動運転が成立するためのインフラを整える方向性を示しています。
自動運転が普及すると、ドライバーの運転を支援してくれるため運転の負担が軽減し、操作や判断ミスによる事故を減らすことが期待できます。
また、渋滞情報を察知し最適なルートで移動してくれるため、車の交通がスムーズになり、それに伴い燃費を向上にもつながります。さらには、高齢者など運転が難しい人の移動を支援することもできると考えられています。
完全自動化が進むと、ドライバーであっても車内で会議や打ち合わせができることが予想され、近い将来運転席に人がいなくても問題なく走行できるようになるでしょう。
自動運転車の実現には先進技術が不可欠
さまざまなことが可能となる自動運転車には、そのためのたくさんの先進的な技術が必要になります。
まず、車が自分の位置を把握しなければいけないため、GPSやカメラ、ミリ波レーダーなどの「位置特定技術」や「認識技術」が欠かせません。
また、道路情報を集めて走行ルートを判断しすることや、ハンドル操作やブレーキといった人間が行っていた操作を、ビッグデータをもとにAIが判断・操作するため、「AI」「ビッグデータ」「通信技術」なども不可欠でしょう。
さらに、車内で人がどのような状態なのかを監視する「ドライバーモニタリング技術」が必要になります。
普及に伴い、新しい法律も必要になるため、たくさんの課題もあります。
そこで、自動運転車のメリットや今後の課題、基礎知識について覚えておくと便利なことをピックアップしてご紹介していきます。
自動運転車の登場が私たちの生活にもたらすメリットと課題とは?
ドライバーが運転しなくても目的地に行けるイメージが強い自動運転車ですが、生活にもたらすメリットとデメリットは一体どのようなものでしょうか。
自動運転車のメリット
自動運転車のメリットは次の6つが考えられます。
- 運転から解放される
- 交通事故の減少
- 渋滞ストレスからの解消
- 環境問題に貢献
- 運転できない人の移動手段となる
- 自動車保険が安くなる
詳しく見てみましょう。
運転から解放される
自動運転が実現すればドライバーは運転しなくても済むため、長距離運転や見知らぬところを走行するときに運転する緊張感から解放されます。
自動運転ということは、バスやタクシーに乗っているのと同じ状態であるため、読書をしたり仕事をしたりと時間を有効活用することができます。
交通事故の減少
自動運転最大のメリットとも言えるのが、交通事故の減少でしょう。
現在発生している交通事故の主な原因は、ドライバーの操作ミスや確認不足、判断ミスといった人的原因がほとんどとなっています。人は必ずミスをするものであるため、この状況では事故はなかなか減ることはありません。
しかし、自動運転になれば常にコンピュータが瞬時に判断するため、脇見運転や操作ミスといった原因の事故はなくなります。高齢化が進む日本では特に効果的なメリットとなるでしょう。
渋滞ストレスからの解消
道路状況をリアルタイムで把握したり、他車との連携によって回り道を検索したり、常に最善のルートを割り出すことが可能です。
より正確に車間距離や速度の調整をできるようになるため、そもそも渋滞が発生する状況が起こりにくくなることが予想されます。渋滞ストレスからも解放されるでしょう。
環境問題に貢献
ドライバーが運転すると、必要以上にアクセルを吹かしたりスピードを出しすぎたりすることがあります。
そうすると、必要以上に二酸化炭素を排出してしまい、環境問題にも影響を与えてしまいます。また、タイヤの摩耗やエンジンの負担も大きくなり、車の寿命にも大きく関わってきます。
しかし自動運転になると、必要最低限の加速やハンドル操作で運転してくれるため、ガソリンの無駄な消費や車への負担を減らすことができ、環境に与える負担を大きく減らすことができるでしょう。
運転できない人の移動手段となる
運転が自動化するため、現在の免許制度が大きく変わります。
そのため、今までは視力や判断力が衰えた高齢者や、障害があることで運転免許を持てなかった人も利用できます。
自動車保険が安くなる
自動車保険は、事故が多いと保険会社が保険金をたくさん支払わなくてはいけないため、保険料が高くなります。
しかし、自動運転により交通事故が大幅に減ることで保険金を支払わなくても良くなるため、自動車保険料もどんどん安くなります。自動運転中の責任はシステムに責任があるとなれば、場合によっては自動車保険自体不要になるかもしれません。
そうなれば、車を維持する上で大きなコストとなっていた保険料が値下がりすることは、大きなメリットとなりますね。
自動運転車のデメリット
自動運転車が普及すると、これまでの生活スタイルが大きく変わる楽しみがありますが、まだまだ課題は多くあります。
- 事故発生時は誰が責任なのか
- システムのトラブルやハッキングの問題
- 緊急時などのドライバーの対応
- 事故不可時などの高度な判断
- 自動車・交通産業の就業人口に影響
まず、自動運転レベル2までは「ドライバーの責任」となり、レベル3になると「ドライバーとシステム両方が責任を取る」とされています。
レベル4以降は「システムが全責任を取る」とされていますが、最終的な判断ははっきりと決まっていないため、事故の際に揉める可能性があります。
また、災害時や天候によって正常に作動するかどうかは予測不可能であり、万が一ドライバーが代わりに運転するようになったときに対応するドライバーの技量不足も懸念されます。
さらに、外部からのハッキングに注意しなければいけません。もし自動運転中にシステムがハッキングされると、わざと事故を起こすようプログラムされたり、無人でいきなり動き出したりといった、テロや犯罪行為に使われる可能性もあります。
一番怖いのが、万が一事故を避けられないときに、どのように判断するかということです。
例えば、前方に突然障害物が発生し、緊急時に避けようと判断したところに歩行者いるとき、そのまま車が歩行者の方に避けて人身事故となるといった「どっちをとるか」といった場面で、正しい判断をAIができるのかという心配もあります。
これ以外にもカーシェアリングの普及が予想されるため、自動車自体が売れなくなったり、バスやタクシーといった交通機関が必要なくなってその業界で働いている人の仕事が無くなってしまったりする懸念もあります。
これらは現時点で懸念されているもので、今後自動運転技術が発達するにつれ、また別の問題が浮き彫りになる可能性があります。
レベル別に解説!自動運転車の機能
冒頭でもご紹介しましたが、自動運転の技術によって0~5までの6段階のレベルに分けられます。
レベル0
加減速やハンドル操作を含めた全ての操作をドライバーの判断で行います。現在の車のほとんどがレベル0です。
後方検知機能やABS(アンチロック・ブレーキシステム)など、ドライバーの運転中に警告したり、介入したりする装備はレベル0の装備となります。
レベル1
「ハンドル操作」や「加減速」といった操作を相互連動せずにサポートすることをいいます。
例えば、車線から外れると検知し修正するシステムや、先行車との距離を一定保つために加減速をコントロールする「クルーズ・コントロール」など、最近の新車に多く搭載されている運転支援システムが当てはまります。
レベル2
「ハンドル操作」と「加減速」の操作が連動して運転をサポートしてくれ、現在の公道最高水準となります。
例えば、渋滞時に走行レーンを走りながら先行車の動きに追従するため、前の車が止まればそれによって停車し、再び前の車が動き出せば再度発進するシステムとなります。
すでにいくつかのメーカー市販車がこのシステムを搭載したモデルを発売しています。
レベル3
ある場所で全ての操作が自動化し、緊急時のみドライバーが操作するシステムとなります。
例えば、高速道路などで交通状況を認知し、運転に関わる全ての操作を自動で行います。これによってドライバーは運転しなくてもよくなりますが、緊急時や自動運転の作動が困難になったときは代わりに運転しなければいけないため、運転席には座っていなくてはいけません。
レベル4
レベル3のように特定の場所で全ての操作が完全に自動化され、さらに緊急時の対応も自動運転システムが判断・操作を行います。そのため、自動運転が作動しているときはドライバーの運転操作は必要ありません。
レベル5
レベル4同様に車が判断して運転に関わる操作を行ってくれます。
レベル5では、いつでもどこでも自動運転されるため、もはやハンドルもアクセルも必要なくなります。そのため、従来の車のスタイルから全く異なる内装のアレンジが可能で、車というよりも「動く小さなリビング」と呼んでもいいでしょう。
デメリットでもご紹介しましたが、2018年12月時点では、国内で「レベル2」までが市販車に採用されています。「レベル2」までは、主にドライバーの運転をサポートする技術であり、万一事故を起こした際の責任はドライバー側にあります。
また、「レベル3」以上は基本的にドライバーが操作を行う必要がないので、事故の責任はシステム側(車)になるというガイドラインがあります。そのため「レベル3」以降の実用化は、現時点ではまだ曖昧となっています。
自動運転車のメリットと課題を理解しておこう
自動運転車は、今までドライバーがおこなっていた運転を自動で行ってくれるため、ドライバーは運転中に他のことが行えるなど、今までは考えられない自動車の使い方ができるでしょう。
ただ実用化されるにつれ、自動運転のメリットばかりではなく新たな課題も続々と出てきています。実用化に向けては、新たに法律を作ったりインフラを整えたりといった国家規模の取り組みが必要なため、現在の自動運転技術はドライバーの運転を補助するといった程度のものにとどまっています。
しかし、2030年を目処にインフラを整えるという数字目標が発表されているため、完全自動化になる日もそう遠くはないでしょう。
- Supervised by norico編集長 村田創
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中古車のガリバーに勤務して20年以上のベテランが車の知識をわかりやすく解説します。車のことは、多くのメーカーを横断して取り扱うガリバーにぜひ聞いてください。「車ってたのしい!」を感じてほしいと思っています!