テスラ モデルY(TESLA Model Y)は2022年に日本で発売された。2025年1月にはマイナーチェンジモデルが発表され、外観や装備に大幅な変更が加えられた。
今回は、そんなモデルYのマイナーチェンジ車に試乗した。
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- 世界で最も売れた電気自動車 テスラ モデルY
- モデルYはマイナーチェンジでまったく異なる外観デザインに変更
- シフトレバーさえ無くした斬新インテリア
- 新型モデルYはタッチスクリーンの操作性に賛否両論!?
- 装備充実、快適性もアップしたマイナーチェンジ
- 新型モデルYは静粛性が大幅に向上!
- 大トルクでドーン!と加速するロングレンジAWD
- 重いのに軽快なハンドリング。新型モデルYは乗り心地もより快適に!
- アジア勢に負けない神コスパBEVがモデルY
- テスラ モデルYの新車価格
- テスラ モデルY のスペック(航続距離、サイズなど)
世界で最も売れた電気自動車 テスラ モデルY
テスラが初めて送り出したBEV(バッテリー電気自動車)は、2008年に登場した「ロードスター」だ。当時は、多くの人や自動車メーカーが、まだBEVの時代ではないと考えていた。
その後、モデルS、モデルX、モデル3、モデルYといった新型車を次々と投入。どのモデルも、デザインやメカニズムの両面で独創的かつ革新的だった。新型車が発表されるたびに話題となり、他の自動車メーカーに大きな衝撃を与えてきた。
テスラはBEVに真摯に向き合い、熱狂的なファンの後押しもあって、販売台数を着実に伸ばしていく。一方で、地球温暖化対策としてCO2を排出しないBEVへのシフトが世界的に進み、追い風となった。
最近ではBEVの販売台数でBYDに抜かれ世界2位となったものの、テスラが存在しなければ、世界のBEV進化は大きく遅れていただろう。
そんなBEVのパイオニアであるテスラにおいて、世界で最も売れたBEVが「モデルY」だ。2023年と2024年には、2年連続で年間100万台超えのセールスを記録した。
モデルYはマイナーチェンジでまったく異なる外観デザインに変更
今回のマイナーチェンジで、新型モデルYの違いがひと目で分かるのが外観デザインだ。前後の短いオーバーハングやAピラーの角度など、シルエットは従来モデルと同様だが、フロントやリヤのデザインはまったく異なる。
フロントフェイスには、左右を一文字につなぐデイタイムランニングライトを採用し、精悍な印象を演出。サイバートラックなどと共通するデザインテイストとなっている。BEVであることを印象づけるグリルレスデザインとの相乗効果で、先進性は大幅に向上。最低地上高167mmのSUVとは思えないほど、スポーティな雰囲気を漂わせている。
モデルYは従来から空力性能に優れ、Cd値は0.23を誇っていた。今回のマイナーチェンジでさらに空力性能が向上し、Cd値は0.22へと改善。空気抵抗は高速走行時の電費に大きく影響するため、Cd値の低減は航続距離を伸ばす上で非常に重要な要素だ。
シフトレバーさえ無くした斬新インテリア
続いて紹介するのは、なんとも斬新なインテリアだ。ミニマリストが泣いて喜ぶとも言われるほど、シンプルを極めたデザインとなっている。もはやシフトレバーすら存在せず、15.4インチの大型タッチスクリーンで、ほぼすべての操作を行う仕様だ。
この15.4インチのタッチスクリーンが故障した場合、「クルマ自体を動かせなくなるのでは?」と不安に思ったが、そこはしっかりと対策済み。オーバーヘッドコンソールには、「P」「R」「N」「D」のボタンが配置されており、タッチスクリーンが使えない状況でも基本操作が可能となっている。
とはいえ、あえて視認性の低いオーバーヘッドコンソールにスイッチを配置するあたりに、スイッチ類の徹底排除を追求するテスラのこだわりが感じられる。
新型モデルYはタッチスクリーンの操作性に賛否両論!?
スイッチ類を極力排除したいという思想は理解できるが、重要なのは操作性や使いやすさだ。15.4インチの大型タッチスクリーンを「使いやすい」と評価する人もいる一方、正直なところ、筆者にとっては使いにくかった。
現在、多くの車種がタッチスクリーンによる操作を採用しており、この流れは今後さらに加速していくだろう。しかし、そもそも右ハンドル車であれば、操作は左手で行うことになる。日本人の約90%が右利きであることを考えると、多くの人が利き手ではない左手で細かい操作を強いられるのだ。
小さなアイコンをタップしたりスワイプしたりする操作を、利き手ではない左手で行うのは、思いのほかストレスがたまる。新型モデルYでは、シフト操作もタッチスクリーンで行い、上にスワイプすると前進、下にスワイプすると後退する仕組みだが、これも左手での操作では、アイコンを見ながら慎重に行う必要がある。
かつて大きなシフトレバーをノールックで操作していた人にとっては、これだけでもかなりのストレスになるだろう。これはシフトに限らず、メニュー階層が深くなるほど操作性への不満も増していく。
デザインや斬新さにこだわる姿勢は評価できるが、使い勝手にももう少し配慮してほしいと感じる。とはいえ、左利きの人や、左ハンドル仕様であれば、利き手である右手での操作となるため、評価はまた変わってくる。非常に悩ましいポイントだ。
装備充実、快適性もアップしたマイナーチェンジ
装備面もさらに充実した。運転席および助手席にはシートベンチレーションが標準装備され、特に夏場の快適性が大幅に向上している。また、後席には8インチのタッチスクリーンが新たに装備された。
快適性の面でも進化が見られる。ルーフガラスにはシルバーメッキコーティングが施され、遮熱効率は従来比で26%向上。これによりエアコンの使用電力を抑えられるため、実航続距離の延伸にも寄与する。
リヤシートも新設計となり、座面とヘッドレストの形状が最適化された。座面は1.5cm延長され、ヘッドレストの幅は1.7cm拡大。これによりシートのサポート性が向上し、長距離移動時の快適性も高まっている。さらに、リヤシートの背もたれは電動調整に対応。シート側面のボタンに加え、トランク側面やセンターディスプレイからも、ワンタッチでフルフラットに調整可能となった。
実用面では、ボンネット下のトランクも刷新されている。テスラが「フランク」と呼ぶこのフロントトランクは、117Lの容量を確保。今回は仕切り板の追加により、収納スペースを柔軟にカスタマイズ可能になった。さらに独立した排水口が新設され、濡れた荷物の収納にも対応するなど、実用性が大きく向上している。
新型モデルYは静粛性が大幅に向上!
今回試乗したのは、新型モデルYのロングレンジ4WD。まず運転席に座り、シートやミラーの位置を調整して、いざ出発…といきたかったが、前述の通りシフトノブが見当たらない。
テスラのスタッフにレクチャーを受け、15.4インチの大型タッチスクリーン上の操作画面で上方向にスワイプ。恐る恐るアクセルを踏むと、新型モデルYは静かにスルスルと走り出した。とはいえ、どこか心にモヤモヤが残り、駐車場で軽くバックの練習。慣れてしまえば問題ないが、慣れるまでには少し時間がかかると覚悟したうえで購入すべきだと感じた。
走り出してすぐに気づくのは、静粛性の高さだ。ザラついた路面で聞こえるザーッというロードノイズやゴーッという音も、大幅に抑えられている。これは、新たに追加された複数のシーリング材や遮音材の効果によるもの。実際、ロードノイズは従来比で22%、高速走行時に発生する風切り音も20%低減されているという。
大トルクでドーン!と加速するロングレンジAWD
ステアリング操作は、やや重め(標準)の設定となっている。もう少し軽めの設定であれば、非力な女性ドライバーや街乗りでの取り回しが楽になると感じた。アシスト量は「軽い」「標準」「重い」の3段階から選択可能だが、設定変更にはタッチスクリーンのやや深い階層にアクセスする必要があり、左手での操作が煩わしく今回は断念。そのまま走行を開始した。
試乗車の新型モデルY ロングレンジAWDは、フロントに150kW(240Nm)、リヤに220kW(350Nm)のモーターを搭載するデュアルモーター仕様。わずかなアクセル操作でも瞬時にトルクが立ち上がり、力強く加速する。その制御は、いかにもBEVらしく、モーターの鋭い反応が際立っていた。
少し踏み込んだだけでもスピードがどんどん伸びるため、高い電費を維持するには繊細なアクセルワークが求められる。アクセルを約50%踏み込むだけで、背中がシートに押し付けられるような強烈な加速を味わえた。
新型モデルYの0-100km/h加速は、わずか4.8秒。もはやスポーツカー並の俊足ぶりだ。この圧倒的な加速力こそがBEVらしさを際立たせ、テスラのアイデンティティを象徴する要素の一つでもある。
重いのに軽快なハンドリング。新型モデルYは乗り心地もより快適に!
試乗コースである箱根・芦ノ湖スカイラインでは、新型モデルYがSUVであることを忘れてしまうほど、スポーティな走りを披露してくれた。当初はやや重く感じたステアリングも、カーブが連続するワインディングではちょうど良い手応えに変化。ステアリング操作に対する応答性も高く、曖昧さがなくしっかりと車体が曲がる印象だ。狭く急カーブの多い道でも、車重1,990kgの重い車体を感じさせない軽快なフットワークで、ドライビングを存分に楽しめた。
モデルYはやや背の高いSUVだ。一般的なガソリン車であれば、このような道では重心の高さが影響し、車体がふらつきやすい。対するモデルYは、大型の駆動用リチウムイオンバッテリーを床下に搭載することで、低重心化を実現。背の高さを感じさせず、カーブでも安定した姿勢でスムーズに走り抜けていく。この安定感は、BEV特有のメリットといえる。
サスペンションはやや硬めのセッティングで、車体はわずかにロールしつつも、限りなくフラットな姿勢を保ちながらカーブを駆け抜ける。「これがSUVなのか?」と思わず感じるほどのスポーティさだ。
そして、今回のマイナーチェンジで大きく進化したのが乗り心地。従来モデルでは硬さが際立っていたが、新型ではやや硬めながらもマイルドさが増し、明らかに快適性が向上している。テスラによると、悪路での振動吸収性は51%も改善されたという。ただし、大径19インチタイヤの特性もあり、大きな段差ではリアタイヤを中心に「ドンドン」「ゴツゴツ」といった突き上げ感が残る場面もあった。とはいえ、マイナーチェンジ前と比較すれば大幅な改善が見られ、十分に許容できるレベルだ。
アジア勢に負けない神コスパBEVがモデルY
今回のマイナーチェンジによって、新型モデルYはさらに魅力的な1台へと進化を遂げた。
近年では、BYDやヒョンデといった新興BEVメーカーが、高いコストパフォーマンスで注目を集めているが、テスラもそれに引けを取らない。価格面では、これらのメーカーに対してやや高価な印象を受けるかもしれないが、装備の革新性や先進的な技術を総合的に考慮すれば、互角以上の競争力を備えているといえる。
今回試乗した新型モデルY ロングレンジAWDの価格は647万6,000円。ここから国のCEV補助金として87万円が支給されるため、実質的な購入価格は大きく下がる。
価格に見合った性能と装備、そして先進的なドライブ体験を考えれば、モデルYのコストパフォーマンスは非常に高いレベルにあると実感できた。
テスラ モデルYの新車価格
- Model Y RWD 5,587,000円
- Model Y ロングレンジAWD 6,476,000円
*CEV補助金 87万円(2025年9月現在)
テスラ モデルY のスペック(航続距離、サイズなど)
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代表グレード |
モデルY ロングレンジAWD |
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全長×全幅×全高 |
4,800mm×1,920mm×1,625mm |
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ホイールベース |
2,890mm |
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最低地上高 |
167mm |
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乗車定員 |
5名 |
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最小回転半径 |
- |
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車両重量 |
1,990kg |
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システム最高出力 |
F:158kW R:220kW |
|
システム最大トルク |
F:240Nm R:350Nm |
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航続距離 |
635km(WLTP) |
|
0-100km/h加速 |
4.8秒 |
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最高時速 |
201km/h |
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駆動方式 |
4輪駆動(AWD) |
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駆動用バッテリー種類 |
リチウムイオン |
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サスペンション型式 |
F:ダブルウィッシュボーン式 R:マルチリンク式 |
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タイヤサイズ(前後) |
255/45R19 |
