スズキ フロンクスのスペックは?価格254万円~の小型SUVを試乗

スズキは、小型SUVである「新型フロンクス(FRONX)」を2024年10月16日に販売開始した。価格は254万1,000円(2WD)~なのでSUVとしては手が届きやすい。今回はフロンクスの試乗を通じ、サイズや走行性などのスペックについて評価した。

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フロンクスはインド生産車

フロンクスの車両全景

新型フロンクスは、すでにインドで生産・販売されているモデルだ。日本で販売されるフロンクスは、インド生産車をベースとし、日本専用装備などがプラスされ輸入される。コンパクトカー「バレーノ」のプラットフォームなどをベースとしたSUVだ。

 

インド生産車の輸入といえば、真っ先に思いつくのがホンダWR-V。2024年3月から発売が開始され、今のところ販売は好調だ。日産の場合は、タイからマーチやキックスを輸入している。

なぜ、アジア生産車を日本へ輸入しているのだろうか? 答えは、やはり価格競争力を得るためだ。特にコンパクトカーはその傾向が強い。だが新車価格はちょっと安い程度だ。すでに発売済みのWR-Vは、ボディサイズが大きめで価格はちょっと安価という絶妙なポジションで高い人気を得ている。

フロンクスのサイズはWR-Vより一回り小さい

新型フロンクスはWR-Vと同じコンパクトSUVだが、ボディサイズが少々異なる。

 

スズキ フロンクス

全長×全幅×全高

3,995mm×1,765mm×1,550mm

ホイールベース

2,520mm

 

ホンダWR-V

全長×全幅×全高

4,325mm×1,790mm×1,650mm

ホイールベース

2,650mm

このように、新型フロンクスはWR-Vよりもひと回りボディサイズが小さい。搭載エンジンは両車とも1.5Lガソリンだが、新型フロンクスはマイルドハイブリッド仕様と違いがある。

WR-Vはひと回りボディサイズが大きいが、価格なども含めると、国内でライバル関係になる。

フロンクスはスズキらしくないデザイン

新型スズキ フロンクスのデザインは、良い意味でスズキ車らしくない。スズキ車といえば、スッキリとしたシンプルでクリーンなデザインのモデルが多い。ところが、新型フロンクスは、張りのある面やシャープな線が複雑に絡み合うパワフルなデザインとなった。

フロンクスのフロントフェイス

フロントフェイスは、売れるSUVのデザイントレンドだ。大きく立体感あるグリルをメインに、フェイス上部のサイドには切れ長LEDヘッドライトを装着し精悍を表現した。小さなボディサイズながら重厚感がある。

最もフロンクスらしさを表しているのが、大きく張り出したフェンダーだ。このダブルフェンダーは、SUVらしいタフネスさとグラマラスなシルエットを持つ。

フロンクスのリヤエンド

ルーフラインは流行りのクーペルックだ。2トーンルーフだと、よりスタイリッシュに見える。

フロンクスのバックライトが点灯している状況

新型フロンクスでは、ヘッドライトやリヤコンビネーションランプにもこだわった。特にリヤコンビネーションランプは立体的に光り、フロンクスらしさを強烈にアピールしている。エンジニアに聞くと、スズキ車のなかでもかなりコストをかけてデザイン、設計した部分だそうだ。欧州のプレミアムコンパクトカーにも負けないオリジナリティと美しさをもっている。

メーターがアナログなのが惜しい

フロンクスの内装:インパネデザイン

インテリアデザインも従来のスズキらしくない。インパネデザインは、複雑な面や線で構成されている。センターコンソールは、SUVらしく太く力強いデザインだ。上部には、アルミをイメージした高輝度シルバー塗装を施し、クルールなスポーティさを表現している。だが、新型車なのに、メーターはアナログ。液晶メーターが欲しいところだ。

フロンクスのメーターの画像

シート生地はレザーとファブリックを用いた。コンパクトSUVとは思えない贅沢な仕様だ。質感も高く、プレミアムSUVのようだ。

装備面で割り切ったWR-V。割り切れなかったフロンクス

新型フロンクスの装備も充実している。同じインド生産のWR-Vとは全く異なるアプローチだ。それを象徴する部分がパーキングブレーキ。WR-Vは、インド仕様そのままの手引きタイプだ。今や軽自動車でも、電動パーキングブレーキの標準装備化が進んでいる時代である。20代なら、手引きのパーキングブレーキは「教習所のクルマで乗ったくらい」という人も多いだろう。

ただ、WR-Vは必要最低限の装備で、価格競争力を重視したモデルと割り切っているのだから、戦略通りなのだろう。対する新型フロンクスは、インド仕様の手引きパーキングブレーキから、電動パーキングブレーキへと変更し日本に導入している。

 

他にも降雪地帯のある日本に合わせ、シートヒーターや4WDを設定した。WR-Vやインド仕様のフロンクスには設定がない。

 

このように、徹底的に割り切った仕様のWR-Vに対して、新型フロンクスは、インド仕様には無い装備を日本のユーザーのために専用設定しているのが特徴だ。同じコンパクトSUVながら、新型フロンクスとWR-Vでは、まったく考え方が異なるのだ。

フロンクスは1.5Lマイルドハイブリッドを搭載

フロンクスのエンジンルーム

フロンクスとWR-Vの考え方の違いは、エンジン設定にも表れている。

新型フロンクスに搭載されたエンジンは、K15C型1.5L直4+マイルドハイブリッド。ミッションは、6速ATだ。

1.5Lエンジンの最高出力は74kWで最大トルクは135Nm。これに2.3kW&60Nmの小さなモーターが加わる。カーボンニュートラル時代に対応したエンジンとなった。

一方、WR-Vは1.5Lの純ガソリンエンジンのみの設定。同じインド生産車ながら、日本でのカーボンニュートラルへの取り組みもスズキとホンダでは異なる結果となった。

 

新型フロンクスの試乗は、アップダウンが激しいクローズドのコースで行われた。そのため、最高出力74kWのエンジンでは、急な登り坂だと高回転を維持しなければならなかった。ややパワー不足だと感じたものの、1.5Lエンジンの平均的レベルだ。平坦路であれば、十分なパワーでキビキビと走る。

 

新型フロンクスはマイルドハイブリッド仕様だ。なので、アクセルオフから再びアクセルオンにした時に、わずかだがモーターアシストが加わる。そのため、アクセルレスポンスが純ガソリン車より少し良く、気持ちよく走れた。

硬いが不快ではないフットワークのフロンクス

フロンクスの運転席の内装画像

新型フロンクスの乗り心地は、やや硬めだ。最近のスズキは、硬めの乗り心地を好む傾向にある。低速域だとゴツゴツ感が少しある。速度が上がると、しなやかさを増すタイプだ。

後席の乗り心地も、基本的に硬めだ。

フロンクスの後席の内装画像

後席の乗り心地も重視したことで、多少のゴツゴツ感はあるものの不快な衝撃は伝わってこない。足元のスペースも十分と、後席もなかなか快適だった。

ハンドリングや乗り心地なども日本の路面に合わせたセッティングに変更されている。

フロンクスの荷室の画像

快適なフットワークに加え、静粛性にもこだわった。ボディ骨格断面各所に遮音壁を設定するなど、徹底的な吸・遮音対策を施している。特に高周波の音を低減し静粛性を上げている。

街中を流すような走行シーンでは静粛性が高く、わずかにロードノイズが聞こえる程度だ。ただ、エンジンが高回転域まで回ると、さすがに室内は賑やかになる。高回転域でのエンジンノイズを上手く抑えることができたなら、まさに小さな高級SUVになりそうだ。

フロンクスのお勧めは4WDモデル! その訳は?

日本版の新型フロンクスには、インド仕様には無い4WDが設定されている。このビスカス式4WDの出来が、とてもよかった。新型フロンクスは、FF(前輪駆動)でも軽快な走りを見せたが、むしろ4WDの方がよく曲がり、気持ち良く走れた。タイトなカーブでも、ノーズがクルリと軽快に向きを変えるため、カーブでの安定感もFF車を上回る。

 

一般的に、4WDモデルは後輪側の部品がプラスされることにより、後方の重量が重くなる。その結果、FF車よりも前後重量配分のバランスがよくなり、曲がりやすくなるのだ。

新型フロンクスの4WD車は、こうした前後重量配分以上によく曲がる印象が強かった。4WD車はFF車より高価になるが、予算に余裕があるのであれば4WDがお勧めだ。

 

4WD車の快適性も高いレベルにある。4WDモデルは、FF車に比べるとリヤの駆動系からの音や振動が多くなる。このクラスだと、一般的にコスト高になるため対策を施さないことが多く、快適性はFF車が上回ることが多い。だが、新型フロンクスでは、スズキのエンジニアの配慮によって防振ゴムの設定やプロペラシャフトの振動低減などの対策を施した。この恩恵で、FF車並みの快適性を維持している。

 

新型フロンクスは、インドで生産することでコスト競争力を重視したモデルだ。しかし、スズキはインド仕様のままでは、日本の顧客には受け入れられないと判断。開発前から、日本での導入を前提に多くの日本用の装備を織り込めるようにした。生産先はインドだが、コンパクトカーを熟知した日本メーカーのスズキが、日本人のために開発したモデルでもある。新型フロンクスは久しぶりに「売れそう!」と感じたコンパクトSUVといった印象だ。

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スズキ フロンクスの燃費、ボディサイズなどスペック(参考値)

代表グレード

フロンクス

全長×全幅×全高

3,995mm×1,765mm×1,550mm

ホイールベース

2,520mm

乗車定員

5名

車両重量

1,070kg

タイヤサイズ

195/60 R16

最小回転半径

4.8m

サスペンション (フロント/リヤ)

ストラット/トーションビーム

駆動方式

2WD(後輪駆動)

ミッション

6速AT

エンジンタイプ

直4 DOHC16バルブ+モーター(マイルドハイブリッド)

エンジン型式

K15C型

エンジン最高出力

74kW/6,000rpm

エンジン最大トルク

135N・m/4,400rpm

モーター型式

WA06A

フロントモーター最高出力

2.3 kW

リヤモーター最大トルク

60N・m

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員