レクサスLBXを試乗。価格460万円~の高級コンパクトSUV

レクサスLBXは、2023年11月に発売された。レクサス初のコンパクトSUVだ。ヤリスクロスなど、トヨタのコンパクトSUVとの差別化はできているのだろうか?試乗を通して内装や走行性能についてレポートする。

トヨタとの違いを明確化してきたレクサス

レクサスは、高級車ブランドとして独自の価値を提供している。レクサスのブランド力は年々上がり、国内外を問わず高い人気を誇る。しかし、プラットフォーム(車台)やパワートレインなどは、トヨタブランドと共用だ。レクサス専用のプラットフォームやパワーユニットは、ほんのわずかしかない。そのため、ひと昔前のレクサス車は、トヨタブランド車を高級仕様に焼き直した印象も強かった。

そこで、当時の豊田社長による「もっといいクルマをつくろう」というスローガンのもと、レクサス車は急速に進化した。プラットフォームやパワートレインは、トヨタ車との違いをより明確にした。最近のレクサス車に乗ると「トヨタ車とは全く違うクルマ」と、すぐに感じるほどだ。

レクサスLBXのコンセプトは「小さな高級車」

レクサスLBXの車両全景

そんなレクサスブランドに、最も小さなモデルである新型レクサスLBXが加わった。LBXのサイズは全長4,190mm×全幅1,825mm×全高1,545mm。新型LBXは、レクサス初となるBセグメントのコンパクトSUVだ。レクサスらしさを象徴するこだわりが詰まっている。

 

新型レクサスLBXは、「本物を知る人が、素の自分に戻り気負いなく乗れるクルマ」を目指した。現、豊田会長の「これまでの高級車の概念を変える、コンパクトサイズながらも走りやデザインも上質であるサイズのヒエラルキーを超えたクルマをつくりたい」という思いを実現している。

 

端的に言えば「クラスレスでコンパクトな高級車」ということだ。車名は「Lexus Breakthrough X(cross)-over」だ。コンセプトを象徴する車名となっている。

今までも、稀にこうしたコンセプトをもつモデルが登場してきた。しかし現在も残っているような成功したモデルは無い。つまり、非常に難易度の高いコンセプトといえる。

小さくても存在感のあるデザイン

レクサスLBXの車両後景

新型LBXのデザインコンセプトは「Premium Casual」だ。コンパクトなボディサイズにとらわれない存在感と上質さを併せ持ち、高い審美眼をもったユーザーが日常でカジュアルに使いたくなるコンパクトクロスオーバーを目指した。

 

全体のスタイリングは塊感があり、面の張りが強く筋肉質なシルエットをもつ。全高は1,545mmとSUVとしては低めだ。全幅は1,825mmだ。BセグメントのコンパクトSUVとしてはかなりワイドで、ドッシリとした独特な存在感があるのが特徴といえる。

レクサスLBXのフロントフェイス

新型LBXのフロントフェイスには、レクサスの新たなフェイスデザインである「ユニファイドスピンドル」を採用している。低い位置に配置したラジエーターまで、スピンドルシェイプを上下に圧縮する。フードとバンパー間のスリットが左右ヘッドランプにつながり、レゾリュートルック(毅然とした表情)としている。サイドギリギリに設置されたキレのある小型のヘッドライトは、よりワイド感を強調。台形グリルは、視覚的重心を下げ、安定感あるルックを生み出した。

レクサスLBXのリヤエンド

新型LBXのリヤコンビネーションランプは、流行りの横一文字タイプでワイド感がある。キャビンはグッと絞り込まれていて、ドッシリとした安定感あるリヤビューだ。

 

新型LBXのインテリアでは、人間中心の思想をさらに進化させた新しいコックピット設計の考え方「Tazuna Concept」を採用している。人が馬を操る際に使う「手綱」に由来するもので、人とクルマがしっかりと意思疎通できることを目指した。

レクサスLBXのインパネデザイン

インパネは水平基調とし、広さを表現している。センターコンソールは、やや太めだ。

レクサスLBXのメーター

タッチディスプレイは9.8インチと大型で、視認性に優れている。スイッチ類も含め、全体的にシンプルで、落ち着いた雰囲気の空間にまとめられている。

LBX専用開発されたプラットフォーム

新型LBXには、GA-Bプラットフォームが使われている。パワートレインは、直3 1.5Lのハイブリッドだ。この情報だけ聞くと、トヨタ ヤリスクロスと同じだと思うだろう。

ところが、最近のレクサスは「もっといいクルマをつくろう」とこだわっている。GA-Bプラットフォームをベースとし、新型LBX用に専用開発した。

 

そもそも、新型LBXの全幅は、ヤリスクロスに対して+60mmもワイドになり、1,825mmもある。トレッドもワイドになるため、225/55R18サイズの大径ワイドタイヤを履くことになる。通常のGA-Bでは役不足だ。

従来なら、ちょっとした改良で、なんとかしていたのかもしれない。だが、「もっといいクルマをつくろう」というのであれば、プラットフォームの専用開発も当然といえる。

 

プラットフォームだけでなく、サスペンションも新開発した。この新開発サスペンションには、高価な高剛性アルミ鍛造ナックルを採用しバネ下を軽量化している。加えて、新開発の3点締結の入力分離型アッパーサポートも用いた。ホイールベースは+20mmの2,580mmとなった。

もはや、2クラス上のフットワーク?!

レクサスLBXの運転席

試乗では、新型LBXはヤリスクロスとは全く異なるフットワークを披露した。こだわり抜いたプラットフォームやサスペンション、ボディの恩恵だ。

まず走り出して気が付いたのは、小さな凹凸をサスペンションが何事も無かったかのように吸収する点だ。低速域は、滑るように走り出す。2クラス上の高級車に乗っているかのような、快適な乗り心地だった。

レクサスLBXの後席

中高速域になると、新型LBXらしさが伝わってきた。とにかく直進安定性がよい。ホイールベースが伸びたことやキャスター角を大きく取った新開発サスペンションの恩恵だ。この直進安定性の良さは、Bセグメントのモデルとは思えないほど。2クラス上のモデルのような直進安定性を持つ。

 

一般的に、直進安定性と機敏なハンドリングというのは、背反関係にある。だが、新型LBXのハンドリングは、リニアでスポーティだ。わずかなステアリング操作でも、しっかり反応する。ステアリングを切り足しても、ノーズはグイグイとイン側に入っていく。ドライバーの操作に対して忠実なので、乗っていて気持ちがよい。

レクサスLBXの荷室

新型LBXはSUVだが、まるでスポーツカーに乗っているような感覚で走れた。腰高感もなく、ヤリスクロスとヤリスの中間くらいのヒップポイントだ。

文字面は同じでも全く異なるパワートレイン

レクサスLBXのエンジンルーム

パワートレインにも、レクサスらしいこだわりが詰まっていた。新型LBXのハイブリッドシステムは、直3 1.5Lを有する。ヤリスクロスの駆動用バッテリーはリチウムイオンだが、新型LBXは高い電池出力に優れたバイポーラ型ニッケル水素電池を使用している。さらに、直3エンジン特有の振動を軽減するために、バランスシャフトを追加した。フロントモーターも、ヤリスクロスなどに使われている1NM型モーターから、プリウスなどに使われる1VM型に変更している。

 

その結果、システム出力はヤリスクロスの116㎰から、136㎰へと大幅にパワーアップした。「直3 1.5Lハイブリッド」という名称は同じだが、新型LBXのハイブリッドシステムは、全くの別物だ。

 

LBXは、アクセル操作に対するレスポンスが抜群によい。EVに近いようなフィーリングで、モーターの力強いトルクが伝わってくる。全ての速度域が、走っていて気持ち良いのだ。

動力性の面でも、トヨタブランド車とはまったく異なる走りを見せた。1クラス上のCセグメントのトヨタブランド車も含め、ハイブリッドシステムのパワーフィールがナンバー1だと感じた。

「小さな高級車」というコンセプト通り、静粛性にも抜かりは無い。優れた乗り心地にもあり、快適な移動空間を生み出している。

ヤリスクロスの約2倍の価格! LBXの価値とは?

新型LBXは「小さな高級車」として非常に完成度の高い仕上がりを誇る。正直驚いたほどだ。レクサス車らしさも十分で、トヨタ車との明確な差別化にも成功している。

 

その分、車体価格は高級だ。新型LBXの価格は460万円から。ヤリスクロスハイブリッドのエントリーグレードが約230万円なので、ほぼ倍の価格だ。

細部に宿るレクサスらしさへのこだわりをどう評価するかが、安いか高いかの分かれ目になるだろう。

「本物の高級車」として物足りない部分とは?

新型LBXで物足りないのが、予防安全装備と運転支援装備だ。新型LBXには、最新の予防安全装備パッケージ「レクサスセーフティシステム+」を全車標準装備している。

 

レクサスセーフティシステム+は、クラストップレベルの実力を誇る。しかし、このシステムをさらに活かした、より高度な予防安全装備や運転支援システムがオプション設定となっているのだ。

以下の機能がオプション設定となっている。

  • Advanced Drive(渋滞時支援)…高速道路上で条件を満たすとハンズオフが可能になり、ドライバーの疲労を大幅に軽減
  • Advanced Park(リモート機能付)
  • パーキングサポートブレーキ(周囲静止物)[PKSB]
  • 緊急時操舵支援(アクティブ操舵機能付)
  • フロントクロストラフィックアラート[FCTA]
  • レーンチェンジアシスト[LCA]
  • ドライバーモニター連携

確かに、Advanced Parkなどは、オプションでもよいかもしれない。しかし、小さな高級車を標榜するのであれば、安全運転をサポートする機能は標準装備すべきだろう。

安全性はクルマに求められる重要な要素のひとつだ。予防安全装備に関しては「オプション装備するものなど無い」という状態こそが「本物の高級車」では、と感じた。

レクサスLBX価格

 

FF

E-Four

LBX“Cool”

4,600,000円

4,860,000円

LBX“Relax”

4,600,000円

4,860,000円

LBX“Bespoke Build”

5,500,000円

5,760,000円

レクサスLBX燃費などスペック

代表グレード

LBX Relax(FF)

全長×全幅×全高

4,190mm×1,825mm×1,545mm

ホイールベース

2,580mm

トレッド(前/後)

1,570mm/1,570mm

最低地上高

170mm

車両重量

1,310kg

荷室容量

AWDハイデッキタイプ:253L+2L(デッキ下収納容量分)

エンジン型式・タイプ

M15A-FXE型直3DOHC

総排気量

1,490cc

システム最高出力

136㎰

燃費(WLTCモード)

27.7km/L

駆動用主電池

バイポーラ型ニッケル水素電池

駆動方式

E-Four(電気式4輪駆動)

サスペンション

前:ストラット

タイヤサイズ

225/55R18

最小回転半径

5.2m

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員