レクサス新旧比較

レクサスISは2020年11月に、2回目のマイナーチェンジを実施した。別のクルマかと思うほどの大変更だ。
コンセプトは“Agile(俊敏) & Provocative(挑発的)”とし、ボディサイズを変更、走行性能面も深化した。
今回はレクサスISマイナーチェンジ時の変更点と、新旧どちらがおすすめかを詳しく解説する。

この記事の目次 CONTENTS
レクサスISの歴史・概要
コンセプト&エクステリアデザイン
インテリア&安全装備
走り、メカニズム
お勧めは最新のレクサスIS? それともマイナーチェンジ前?
新車値引き交渉のポイント
レクサスISの価格・スペック

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

レクサスISの歴史・概要

レクサスISの歴史は少し複雑だ。

初代レクサスISは、1999年に発売を開始した。

初代レクサスIS 初代レクサスIS

発売当初、日本ではレクサスブランドの導入がされていなかった。
そのため国内では、ISをトヨタブランドの「アルテッツァ」として販売した。

2005年、日本にレクサスブランドが導入された。
同時に投入されたのが2代目ISである。
2代目ISには、ハイブリッド車はなかった。
ただ、モデル後期に「IS C」という2ドアのカブリオレモデルが投入され話題となった。

2007年、IS Fを発表した。
V8 5.0Lエンジンを搭載したモデルの投入により、ISはスポーツセダンとしてのイメージをより鮮明にした。

2013年、現行となる3代目ISがデビューした。
「真の“走る楽しさ”の体現」をキーワードとして開発された。

3代目レクサスIS 3代目レクサスIS

フロントフェイスには、レクサスのデザインアイコンであるスピンドルグリルが採用された。
迫力あるフェイスと、スポーツセダンらしい低重心感あるフォルムだ。
デビュー時のパワーユニットは、待望の2.5Lハイブリッドである。
優れた低燃費性能のアピール要因となった。
その他にも、V6 2.5Lと3.5Lが用意された。

「レーザースクリューウェルディング」や「構造用接着剤」なども導入された。
2021年4月現在では当たり前になっている生産技術を惜しみなく採用したのだ。
それに伴い、走行性能に大きく影響するボディ剛性も大幅に高まった。

2015年には直4 2.0Lターボエンジンモデルが加わった。
ハイブリッド車には4WDモデルも追加されている。

2016年に1回目のマイナーチェンジを行った。
外観デザインは、より立体感のあるデザインに変更された。
走行性能面では、剛性アップと軽量化の両立を実現した。
これは改良型ショックアブソーバーの採用や、フロントサスペンションロアアームをアルミ製に変更したためだ。
その他、スプリング・ブッシュの特性など、細部に渡り再チューニングを施し、スポーツセダンらしさを追求している。
このマイナーチェンジで、「レクサスセーフティシステム+」が全車標準装備化された。
歩行者検知式自動ブレーキを含む予防安全装備パッケージが導入されたのである。

2020年11月、2回目のマイナーチェンジが行われた。
このマイナーチェンジでは、フルモデルチェンジに近いほどの大変更が行われた。
コンセプトは“Agile(俊敏) & Provocative(挑発的)”である。
ボディサイズを変更し、よりワイドかつ低重心化を実現した。
ほとんどのボディパネルが変更され、まるで違うクルマのように見えるほどだ。
インテリアは、マイナーチェンジ前のモデルの面影を残しているものの、インパネ、センターディスプレイなどが変更された。

そして、スポーツセダンであり続けるために、走行性能面も深化させている。
全幅拡大によるワイドトレッド化に合わせ、19インチタイヤを装着した。
このタイヤとサスペンションの変更などにより、強力なコーナーリングフォースが可能となった。
マイナーチェンジ前のモデルを圧倒するハンドリング性能とコーナーリングスピードを手に入れている。

コンセプト&エクステリアデザイン

別のクルマになった? よりワイド&ローにこだわったマイナーチェンジ後モデル

3代目ISの外観 3代目ISの外観

2回目のマイナーチェンジでISは、「走りを予感させるワイド&ローなスタンス」と、「シャープなキャラクターラインによるアグレッシブなデザイン」を目指した。
コンセプトは “Agile(俊敏) & Provocative(挑発的)”である。

初代ISの外観 初代ISの外観

マイナーチェンジでのボディサイズ変更は稀だ。
全長、全幅は+30mmとなり、ボンネットフードは41mm、トランクは31mm低く設定されている。

3代目ISのトランク 3代目ISのトランク
初代ISのトランク 初代ISのトランク

その結果、マイナーチェンジ後のISのシルエットはよりワイド&ローなものとなりスタイリッシュさが際立っている。
さらに、大径19インチホイールも装備された。
マイナーチェンジ前のモデルと比べると、もはや異なるモデルに見える。
ほとんどのボディパネルが変更されているほどだ。
2回目のマイナーチェンジで、ISはまったく異なる外観となった。

マイナーチェンジ前のモデルも、デザイン面ではなかなか秀逸だ。

3代目ISのフロントフェイス 3代目ISのフロントフェイス
初代ISのフロントフェイス 初代ISのフロントフェイス

マイナーチェンジ前のISのスピンドルグリルは、視覚的低重心化をアピールしたデザインだった。
グリルは前方に張り出すような立体的なデザインで、ヘッドライトはやや後ろに設置されている。
下方をよりワイドにすることで、かなり彫りの深い顔かつ、押出し感のある迫力ある顔が象徴的だった。

前輪下部後方からリヤエンドまで一気に跳ね上がるキャラクターラインは、なかなか個性的なデザインだ。
マイナーチェンジ前のISの象徴ともいえる。

3代目ISのリヤエンド 3代目ISのリヤエンド
初代ISのリヤエンド 初代ISのリヤエンド

インテリア&安全装備

雲泥の差となった予防安全装備

インパネデザインは、マイナーチェンジ前後共に水平基調のデザインだ。

しかし、ダッシュボードそのものが変更されている。

2回目のマイナーチェンジ後モデルでは、スポーツセダンとして機能的であることに加え、走りやすさにもこだわった。

こだわりのひとつが、視線移動のスムースさだ。

3代目ISのインパネ 3代目ISのインパネ

マイナーチェンジ後のインパネは、高さ上限をあらかじめ決定し、その中にディスプレイを収めた。
スポーツ走行時だけでなく、街乗りでも快適で安全な運転に寄与してくれる。

対するマイナーチェンジ前モデルのインパネは、カッチリした立体感のあるデザインだった。

初代ISのインパネ 初代ISのインパネ

なお運転席、メーター付近のデザインの変更はない。

3代目ISの運転席 3代目ISの運転席
初代ISの運転席 初代ISの運転席
3代目ISのメーター 3代目ISのメーター
初代ISのメーター 初代ISのメーター

マイナーチェンジ前後で、ドライバーは視界以外あまり変わった印象を受けないかもしれない。
室内スペースは、マイナーチェンジ前後で変更はない。(ホイールベースなどの変更がないため)

3代目ISの後席 3代目ISの後席
初代ISの後席 初代ISの後席

安全装備は、2回目のマイナーチェンジ後モデルで大幅に進化している。
レクサス予防安全装備パッケージは「レクサスセーフティシステム+」だ。
ただ、同じ呼び名でも車種によって性能は大きく異なる。
2回目のマイナーチェンジ後モデルでは、最新のレクサスセーフティシステム+となった。

以前のISの自動ブレーキは、昼間の歩行者のみ検知可能だった。
それが2回目のマイナーチェンジを経て、以下を検知出来るようになった。

  • 昼間+夜の歩行者
  • 昼間の自転車
  • 右左折時の歩行者
  • 右折時の対向車両

単眼カメラとミリ波レーダーの性能向上によって、より多くの事故パターンに対応することが可能となった。
さらに、緊急時操舵支援も装備された。
これはドライバーの衝突回避操舵をきっかけに自車線内で操舵をアシストし、車両安定性確保と車線逸脱抑制に寄与する機能だ。

その他、後側方車両接近警報、後側方車両接近警報&自動ブレーキ、ヘルプネットも装備されている。
ヘルプネットは、エアバッグが開くような事故が起きた場合、自動で専門オペレーターへ通報し、救急車の手配などを代行してくれる機能だ。

2回目のマイナーチェンジ後のISは、レクサス車の中でもトップレベルの機能と性能となった。
予防安全性能を重視するのであれば、2回目のマイナーチェンジ後モデルがおすすめだ。

中古車購入の場合、2016年の1回目のマイナーチェンジ後モデルは、安全装備面の物足りなさを感じる。
自動ブレーキが昼間の歩行者しか検知出来ないためだ。

なお初期モデルの場合、歩行者検知機能は無く、ほとんどの予防安全装備がオプション設定だ。
安全装備面では、あまりおすすめできない。

走り、メカニズム

劇的進化した走行性能

レクサスISのパワーユニットは、デビュー直後は2.5LハイブリッドにV6の2.5Lと3.5Lの3タイプだった。

初代ISのエンジンルーム 初代ISのエンジンルーム

2015年に直4 2.5Lターボが追加された。

1回目のマイナーチェンジでは、V6 2.5Lが姿を消した。
2017年には、V6 3.5Lエンジンが改良され、燃費が若干向上された。

2回目のマイナーチェンジでは、パワーユニットに変更はなかった。

3代目ISのエンジンルーム 3代目ISのエンジンルーム

しかし2.5Lハイブリッド車は、アクセル開度に対するエンジンとモーターの駆動力制御を変更し、レスポンスを向上した。
2.0Lターボ車は、アダプティブ制御を採用した。
ドライバーのアクセル開度などから走行環境を判定し、シーンに応じて適切なギヤ段を設定してくれる。
アクセル操作に対してリニアなレスポンスが可能となった。
これら2つの制御は、レスポンスは向上しているものの、マイナーチェンジ前と比べると、それほど大差はない印象だ。

大きく異なっているのは、ハンドリング性能だ。
2回目のマイナーチェンジ後モデルでは、多くのグレードに19インチタイヤが装着された。最も切れ味の鋭い走りであるFスポーツに装着させたのは、フロントが235/40R19、リヤが265/35R19という前後異サイズのタイヤだ。
しかも、タイヤはやや引っ張り気味でホイールに装着されている。
こうしたタイヤのサイズアップに加え、ボディの補強やスポット打点の追加、ワイドトレッド化が成されている。
その結果、19インチタイヤのメリットを生かし、強力なコーナーリングフォースを発生させることが可能となった。
コーナーリングスピードは、マイナーチェンジ前のモデルとは比べ物にならない。
クルマの動きもスムースで安定感もある。

マイナーチェンジ前のモデルは、タイヤの接地感や手応えが希薄だっただけに、マイナーチェンジ後はかなり好印象といえる。
ピッチングやロールも適度に抑えられていて、フラットライドな乗り味だ。
マイナーチェンジ前のモデルと比べると、乗り心地や静粛性も向上し、別のモデルに乗っている感覚になる。
この進化の幅は大きい。

お勧めは最新のレクサスIS? それともマイナーチェンジ前?

安全装備・走行性能重視なら最新のIS

レクサスISのリセールバリューは、かなり高い。
「値引きゼロ」が基本であるぶん、下取り車を高額で買い取っている。
戦略的にリセールバリューを高くしているようだ。

リセールバリューが高いクルマの場合、中古車価格は相当高額になる。
ISの中古車も、かなり高額だ。
3年落ち程度では、新車より少し安価な程度で割安感がない。
セダン人気が低迷しているにもかかわらず、中古車としての旨みがない状態といえる。
ただ、中古車を買う時は高価だが、売却するときも高価なので、損をすることは無いだろう。

人気のハイブリッド300h系は、2017年式中古車価格が400万円以上であるケースが多い。
これに対して、最新のIS Fスポーツの価格は約580万円となっている。
この価格差をどう見るかで評価は変わる。

予算重視で、走行性能・予安全装備にこだわらないのであれば、価格も少し安くなっている1回目のマイナーチェンジを受けた中古車でも十分満足できる。
走行性能や予防安全装備を重視するのであれば、2回目マイナーチェンジ後の最新ISがおすすめだ。

新車値引き交渉のポイント

レクサス車は、全車値引きゼロ戦略を貫いているため、値引きはほとんど期待できない。
せいぜい、安価な用品サービス程度になる可能性が高い。
とはいえ、何もしなければ用品サービスさえ得られない可能性が高いので、しっかりとライバル車と競合させたい。

レクサスISのライバル車には、輸入車がおすすめだ。
BMW3シリーズやメルセデス・ベンツCクラスと競合させたい。
輸入車は、意外とすぐに値引きしてくれるので「BMWやメルセデス・ベンツも値引きしてくれるのに、レクサスはゼロなの?」と尋ねてみよう。
レクサスディーラーの営業マンも値引き交渉には慣れているはずだが、月末近くになりノルマの達成が厳しくなれば「値引きは無理ですが、用品サービスなら・・・」と歩み寄ってくる可能性もある。
商談期間は長めに取るといいだろう。

レクサスディーラーは、下取り車がレクサス車の場合、買取店でも負けるような高額な下取り価格を提示する可能性が高い。
より高額な下取り価格を付けてもらうためには、先に下取り車の適正価格を知っておく必要がある。
買取店2店以上で査定した上で、ディーラーが買取店を上回る価格を提示するかチェックしたい。
レクサス車は値引きがゼロなので、下取り車の価格がとても重要だ。

下取りがレクサス車以外の場合は、買取店での下取りがおすすめだ。
この場合でも、買取店2店以上で査定し、適正価格を知ってから交渉すべきだ。
 
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レクサスISの価格・スペック

  IS350 IS300h IS300
“version L”/2WD(FR) 6,000,000円 5,550,000円
“F SPORT”/2WD(FR) 6,500,000円 5,800,000円 5,350,000円
2WD(FR) 5,260,000円 4,800,000円
“version L”/AWD 6,420,000円
“F SPORT”/AWD 6,220,000円
AWD 5,680,000円
代表グレード IS300h“F SPORT”
ボディサイズ 全長 4,710mm×全幅1,840mm×全高 1,435mm
最小回転半径 5.2m
車両重量 1,690kg
燃料消費率 18.0km/L(WLTCモード)
エンジン総排気量 2.493L
最高出力[NET] 131kW[178ps]/6,000r.p.m.
最大トルク[NET] 221N・m[22.5kgf・m]/4,200~4,800r.p.m.
モーター最高出力 105kW[143ps]
モーター最大トルク 300N・.m[30.6kgf・m]
駆動用主電池種類 ニッケル水素電池
トランスミッション 電気式無段変速機
サスペンション (前)ダブルウイッシュボーン/(後)マルチリンク