実用性より、デザインを重視したモデルが4ドアクーペ

アウディA5/S5シリーズのテーマは、「美しさとスポーティな走りと実用性の融合」。こうしたテーマをより具体的に表しているのがアウディA5/S5のスポーツバックだ。このA5スポーツバックは、A5クーペをベースとして2010年に登場している。
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こうした流麗なルーフラインをもつモデルを4ドアクーペと呼ぶ。初代A5スポーツバックがデビューした頃は、欧州を中心に、このカテゴリーが流行っていた。メルセデス・ベンツCLSやBMW4シリーズグランクーペ、フォルクスワーゲン パサートCCなどがこの頃のクラスのライバルとなる。4ドアの実用性とクーペのような美しいスタイリングを実現しモデルとして、一時期各社力を入れていた。
アウディA5/S5シリーズの中でも、A5スポーツバックが最も人気が高く、A5シリーズ中、約50%がスポーツバックを選択していたほどだった。
ただ、この4ドアクーペブームは、あまり定着しなかった。人気が出なかった理由は、デザインを優先するあまり後席の頭上スペースが窮屈に感じることや荷室が狭いなどの実用性面が大きな理由だ。デザインならクーペ、実用性ならセダンということで、やや中途半場感があったのは事実だ。こうした傾向は、メルセデス・ベンツやBMW、VWも同様だ。
売れ筋A5スポーツバックには、従来のAWDのみから安価なFFモデルが加わり2グレードを用意

FFモデルは、A5 Sportback 2.0 TFSIとA5 Sportback 2.0 TFSI sportが設定。この2モデルには、新開発の2.0L直4ターボが搭載され、190ps&320Nmを発揮。A5の車格に対して十分なパワーとトルクをもつ。
そして、クワトロを採用したA5 Sportback 2.0 TFSI quattro sport、A5 Coupé 2.0 TFSI quattro sport、及びA5 Cabriolet 2.0 TFSI quattro sportの3モデルには、よりパワフルな252ps&370Nmを発揮する2.0L TFSIエンジンが搭載された。これだけパワーとトルクがあると、もはやFFではパワーを使い切ることは難しい。組み合わされるトランスミッションは、すべて7速Sトロニックとなる。

そして、スポーツモデルとなるS5系には、クーペ/スポーツバック/カブリオレ共に、354ps&500Nmの3.0L V6ターボエンジンが搭載された。クワトロと8速Sトロニックの組み合わせとなる。S5 スポーツバックの燃費値は12.7㎞/Lだ。
残念ながら、今回もアウディが得意とするクリーンディーゼルエンジンは用意されていない。
やや広くなった室内。視認性と安全性に優れたアウディ バーチャルコックピットはオプション設定

最近のアウディで注目したい装備が「アウディ バーチャルコックピット」だ。高級車なのに、アウディバーチャルコックピットはオプション設定されている。アウディ バーチャルコックピット」は、視認性に優れているのが特長。メータパネル内に、12.3インチの大型TFTモニターがあり、ステアリングホイールに設置された ボタンを押せば、画面を切り替えることができる。
ナビ画面をメーター内に表示させると、メーター類は左右に配置されコンパクトなサイズに変更される。ナビ画面がメーター内にあると、前方から視線移動が少なくなり安全性は高まる。必要最低限の情報は、ヘッドアップディスプレイに表示されるので、ドライブ中は大きく視線を移動する回数が減り、前方不注意によるリスクを軽減してくれる。また、各種ディスプレイの表示もキレイで見やすいのも魅力的だ。
また、遅れていた歩行者検知式自動ブレーキなどの先進予防安全装備もイッキに向上。先進予防安全装備であるアウディプレセンスは、全車標準装備化された。ただ、残念ながらアダプティブクルーズコントロールやアウディサイドアシスト、アウディアクティブレーンアシストなどの関連する安全・ドライバーアシスト装備が、オプション設定となるグレードがある。今時、これほどの高級車でこうした装備がオプションというモデルは少ない。オプションとして、見た目の価格を安く見せたいのは理解できなくもないが、「アウディって、こんな装備もオプションなの?」と、ブランドイメージを悪くすることもあるので、この程度の安全装備は標準装備化するべきだろう。
軽量化と空力抵抗減で低燃費化と、優れたハンドリング性能を手に入れた

フロントサスペンションのストラットドームは、アルミ鋳造パーツを精密に組み合わせた構造とし、従来型コンポーネントと比較すると、合計8㎏軽量化された。こうした軽量化を積み上げて、車両重量は、最大で70㎏軽量化されている。軽量化と同時に、サスペンションのアッパーリンクとボディの組み付け剛性も上がり、ステアリングレスポンスが向上。気持ちの良いハンドリング性能に貢献してしている。
アウディは、新型A4で優れた空力特性を披露した。空気抵抗減は、燃費向上に有効な手法のひとつ。とくに、高速域では明確な違いになる。もちろん、燃費だけでなく高速域でのパフォーマンスも影響を及ぼす。そのため、A5でも空力にこだわった。A5シリーズの空気抵抗係数cd値は、クーペが0.25、スポーツバックが0.26と優れた数値とし、優れた走りと低燃費を両立している。
アウディA5/S5シリーズの選び方。やや高めの価格設定と高価なオプションが難点

まず、スポーツバック2.0 TFSIの価格は5,460,000円。スポーツバック2.0 TFSI sportが6,030,000円。価格差は57万円だ。装備差で大きなところは、シートヒーターや3ゾーンオートマチックエアコンディショナー、スポーツサスペンション、アダプティブクルーズコントロール、アウディアクティブレーンアシストなど。スポーツバック2.0 TFSIは、価格訴求用グレードといった印象が強い。満足度やリセールバリューを考えるとsportグレードを選んだ方が無難だ。
ただ、sportを選んでも、十分な満足度を得られるかというと微妙。アウディを象徴する魅力的な装備がオプション設定となっているからだ。まず、セーフティパッケージが21万円。バーチャルコックピット7万円。マトリクスLEDヘッドライトパッケージ27万円、ヘッドアップディスプレイ14万円と、これらのオプションを装備すると、計69万円にもなる。車両価格が603万円なので、オプションをプラスすると672万円という高額車になる。FFモデルなのに、FR(後輪駆動)のBMW420iグランクーペ M Sportの582万円が安く感じるほどだ。かなり強気な価格設定だ。
これがクワトロsportとなると、価格は6,860,000円。これに、セーフティパッケージ13万円、マトリクスLEDヘッドライトパッケージ27万円、ヘッドアップディスプレイ14万円などと、同様に高額なオプションがドンドンとプラスされていく。もはや、価格は700万円オーバーだ。
A5スポーツバックのリセールバリューは、それほど高くない。短期の乗り換えでは、かなりリスクがある。A5スポーツバックのスタイルに惚れ込んでいる人以外は選びにくい価格だ。
アウディA5/S5 価格
クーペ
・Audi A5 Coupé 2.0 TFSI quattro sport 6,860,000円・Audi S5 Coupé 9,130,000円
スポーツバック
・Audi A5 Sportback 2.0 TFSI 5,460,000円・Audi A5 Sportback 2.0 TFSI sport 6,030,000円
・Audi A5 Sportback 2.0 TFSI quattro sport 6,860,000円
・Audi S5 Sportback 9,130,000円
カブリオレ
・Audi A5 Cabriolet 2.0 TFSI quattro sport 7,570,000円・Audi S5 Cabriolet 9,980,000円
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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表 大岡 智彦 氏CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。