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一枚の名車絵 第17回 ポルシェ928(Porsche 928)


「ポルシェ」といえば、まず思い浮かぶのは「911」です。1963年に登場し、その後数回のフルモデルチェンジを経ながらも今なお進化を続け、世界でも一線級の性能を持ったスポーツカーとして知られています。ですがポルシェは1970年代以降、911以外の新しいスポーツカーをいくつか発売して来ました。安価で手頃なスポーツカーとして企画された914の後継として914同様にVW/アウディの部品を活用して作られた924系、そして今回取り上げる928になります。


◆現代でも通用するモダンデザインのGT


1975年登場の924に次いで1977年に発売が開始された928は、911よりも上位車種として開発されました。駆動方式は924同様のFRで、エンジンは240psを誇る新開発の水冷4.5リットルV8 SOHCが搭載されました。曲面を多用したボディは現在から見てもモダンなデザインで、これは元オペル出身で当時ポルシェのチーフデザイナーだったトニー・ラピーンの手によるものです。

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外観の最大の特徴はラウンドしたリアに合わせたクオーターウインドウ、そして点灯時はひょっこり持ち上がる丸目のリトラクタブルヘッドライトです。メーターナセルのみ飛び出るゆるやかに傾斜したT字型のダッシュボードは数多くのデザインフォロワーを生み出したことでも知られており、ホンダのNSXや日産 フェアレディZ(Z32型)などが928のそれをイメージさせる内装を持ちます。

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◆GTカーでも変わらぬポルシェらしさ


928は方向性は「高級グランドツーリングカー」でしたが、そこはさすがのポルシェ、決してハンドリングをおろそかにすることはなく、924と同様にトランスミッションをリアデフ前に置く「トランスアクスル方式」により前後重量配分50:50を実現したほか、簡易的な4WS機構「ヴァイザッハ・アクスル」を採用。これにより全長4.5m、幅1.85mという堂々としたサイズの928を機敏に走らせることが出来ました。もちろん乗り心地、遮音性などのグランドツーリングカーに求められる要素はクリアーされています。

copyright_izuru_endo_2017_m017_porsche928_1280_687(クリックで拡大)発売以降順調に販売台数を増やした928は、その後バリエーションを拡充。1979年には4.7リットルで300psを達成した高性能版「928S」を追加、さらに1985年にDOHC化と排気量を5リットルに拡大したエンジンで292psまで増強された「928S2」、1986年には「928S4(320ps)」へと進化していきました。928S4では内外装にも比較的大きく手が入り、より一層モダンでスタイリッシュなデザインをまとうこととなりました。928は1990年の「928GT(330ps)」を経て最終的には1992年に「928GTS」となるのですが、GTSではエンジンが5.4リットルとなり、パワーも350psを獲得するに至りました。

928は1995年に惜しまれつつも製造を終えましたが、実質的に直接の後継車は現在も登場していません。ポルシェが現在製造するクルマでFRのグランドツーリングカーといえば、2009年に登場したポルシェ初の5(4)ドアサルーン、パナメーラが928のイメージに近いのかもしれませんね。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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