ホンダは、個性派軽自動車のN-BOXスラッシュをマイナーチェンジし販売を開始した。

‖N-BOXの長所を取り除いたのに、オリジナリティあふれる魅力を持つ軽自動車、N-BOXスラッシュ

ホンダN-BOXスラッシュN-BOXスラッシュは、車名通りN-BOXの派生車なのだが、N-BOXとはかなり異なるクルマだ。



<ベースとなるN-BOXスラッシュは2014年12月にデビュー>

N-BOXはホンダNシリーズ5番目のモデルだ。N-BOXの魅力、1,780㎜という高い全高。この高い全高を生かし、長尺物や自転車などを積載でき使い勝手に優れる。さらに、両側はスライドドアを装備。左右が狭いところでも容易に乗り降りでき、小さい子供がいる場合、隣のクルマにドアをぶつける心配もない。 ところが、N-BOXスラッシュは、こうしたN-BOXの魅力を一切排除したモデルとして、2014年にデビューした。

<Nシリーズの枠にとらわれない、異色のN-BOXスラッシュ>

N-BOXスラッシュは、なんとAピラーを短くし、全高を1,670㎜とした。まず、ここで背高の魅力をここで失う。このAピラーを短くする手法は「チョップドルーフ」などと呼ばれ、アメリカンカスタムの手法。さらに、全体のシルエットは、ルーフ後端もやや下げ気味にし、リヤドアのノブも隠すようにデザインされたクーペのようなルーフをもつ。さらに、N-BOXの魅力であり、優れた使い勝手の良さを発揮する両側スライドドアをやめ、N-BOXスラッシュは普通のヒンジドアにした。これで、優れた使い勝手の良さを失った。

<あえて、スライドドアという「便利さ」を捨てるこだわり>

N-BOXスラッシュは、アメリカンカスタムに共感する顧客や、より個性的なクルマを望む顧客用ということもありスライドドアをやめた。さらに、スライドドアをやめることで、車重が軽くなり製造コストも安くなりホンダのメリットも大きい。ただ、高コストのスライドドアをやめた割には価格は高価なままだったりする。 ホンダN-BOXスラッシュN-BOXスラッシュは、チョップドルーフにしただけではない。クルマ全体でアメリカンカスタムを表現する。インテリアに古き良きアメリカをイメージした5つのインテリアカラーを用意。個性派の顧客層により共感を得るための手法だ。 さらに、オーディオのサウンドにもこだわった。軽とは思えないくらいのハイクオリティなサウンドを実現する「サウンドマッピングシステム」を用意。迫力ある重低音再生を実現するために、専用のバックロードホーン型サブウーファーまで新開発した。このサウンドマッピングシステムをさらに生かすオプションとして、車外からのノイズやスピーカーの音によるボディの共振・微振動を低減するデッドニングキット「ピュアサウンドブース」を用意した。その結果、軽自動車とは思えない迫力ある高品質なサウンドが楽しめる。このピュアサウンドブースは、副次的な効果も生み出した。通常走行時、N-BOXスラッシュの静粛性は極めて高くなったのだ。この静粛性の高さは、軽自動車の枠をはるかに超えるものだ。N=BOXの魅力を捨てながら、新たな魅力を得た個性派軽自動車がN-BOXスラッシュなのだ。  

‖マイナーチェンジで何が変わったの?

ホンダN-BOXスラッシュ

今回のマイナーチェンジでは、インテリアカラーパッケージのラインアップを拡充。インテリアカラーパッケージに、新たに「トレッキングスタイル」を追加した。このトレッキングスタイルは、やや派手な仕様が多かったインテリアカラーパッケージに対して、中間色を使いなかなかオシャレにまとめている。若い世代だけでなく、ダウンサイジングしてきた中高年の顧客でも十分に乗れる仕様となっている。派手さというよりは、品の良さを感じる仕様だ。
快適装備も充実させた。女性に人気の「360°スーパーUV・IRカットパッケージ」と「充電用USBジャック(急速充電対応タイプ2個)」を新設定し、快適性と使い勝手を向上。問題なのは、安全装備の設定だ。

<ザンネン!標準装備化されていた安全装備「あんしんパッケージ」はオプション化>

N-BOXスラッシュは、スライドドアをやめたのに価格が高い。そのため、従来、G・Lインテリアカラーパッケージ/G・ターボLインテリアカラーパッケージの標準装備としていた「あんしんパッケージ」を、メーカーオプション設定としてしまった。カラーパッケージ装着車をより買いやすくする価格設定として、より販売台数を伸ばしたい考えだ。端的にいえば、安全装備を外し安く見せ、より多く売りたいという設定なのだ。これは、ホンダの安全思想と大きく異なる行為にみえる。ホンダは「セーフティ・フォー・エブリワン」という立派な安全思想を掲げている。一部グレードには標準装備化していた装備をオプション化するということは、ホンダの安全思想に対して真逆の選択をしていることになる。

ホンダN-BOXスラッシュ

<しかも、装備したところで、他車の方が高性能というビミョーな安全装備・・・>

さらに、あんしんパッケージは、低速域で車両だけに対応する簡易型の自動ブレーキとサイドエアバッグなどを含んでいる。スズキは、歩行者検知式の自動ブレーキを用意しているので、性能的には競争力を持たない。これくらいの安全装備なら、せめて全車に標準装備化してもおかしくないくらいだ。クルマの安全性能を顧客の財布の中身次第にしてはいけない。ホンダの安全思想通りのクルマをマーケットに送り出してほしい。

<デザインは少し変わったが、燃費は物足りないまま>

その他の装備では、X・ターボパッケージ専用の15インチアルミホイールデザインを刷新。前衛的なデザインを採用し、より個性的な足元とした。残念ながら、ハード面の進化はないようで、燃費性能も25.8㎞/Lのまま。燃費性能は、他社の最新のモデルと比べると物足りないままだ。


‖N-BOXスラッシュを買うなら、どのグレードを選べばいいの?

ホンダN-BOXスラッシュの価格は、エントリグレードのGで1,320,000円から。それほど高い軽自動車に思えないかもしれないが、自動ブレーキはオプションでN-BOXスラッシュらしい装備はなにもない。ただチョップドルーフになったといった程度。

<少なくとも「G・Lインテリアカラーパッケージ」147万円から>

やはり、N-BOXスラッシュらしいグレードをということになると、G・Lインテリアカラーパッケージで価格は1,470,000円。マイナーチェンジ前が1,515,000円だったので、45,000円安くなっている計算だ。 ところが、自動ブレーキとサイド&カーテンエアバッグなどを含むあんしんパッケージがオプションになってしまったことにより、あんしんパッケージをオプション選択すると従来のモデルより価格がアップしてしまうケースもある。サウンドにこだわらないというのであれば、これでOK。しかし、サウンドにもこだわりたいということになると、このグレードだとサウンドマッピングシステムが選べないのだ。 ホンダN-BOXスラッシュ

<新型N-BOXスラッシュを満喫したければ、Xグレードで200万円コース>

サウンドマッピングシステムとインテリアカラーパッケージを同時に選びたいということになると、Xグレードになる。Xグレードの価格は1,600,000円。これに、インテリアカラーパッケージやあんしんパッケージをプラスしていくと、180万円を超えてくる金額になる。これにナビなどを加えていくと200万円コースの軽自動車になる。満足のいく仕様にすると、金額面ではかなりの出費となるので、かなりの覚悟が必要だ。 ただし、このフル仕様にするとかなり個性的で満足度は高い。走行中も静粛性が高く、軽乗用車とは思えないくらい。さらに、屋根を低くして、スライドドアをやめたことによる軽量化も効いていて、N-BOXより力強い走りを披露。さらに、乗り心地も向上している。乗車している感覚では、軽乗用車とは思えないクオリティなので、この違いに納得できればかなり満足度は高くなるだろう。

‖ホンダN-BOXスラッシュの価格表

・G FF 1,320,000円/4WD 1,450,000円
・G・Lパッケージ FF 1,360,000円/4WD 1,490,000円
・G・Lインテリアカラーパッケージ FF 1,470,000円/4WD 1,600,000円
・G・ターボLパッケージ FF 1,575,000円/4WD 1,705,000円
・G・ターボL インテリアカラーパッケージ FF 1,580,000円/4WD 1,710,000円

・X FF 1,600,000円/4WD 1,730,000円
・X・ターボパッケージ FF 1,710,000円/4WD 1,840,000円

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