メルセデス・ベンツGLEクーペ

<標準車は620Nmを発揮する3.0Lクリーンディーゼルのみの設定。AMG GLE63 Sクーペは、なんと585ps&760Nm!>

メルセデス・ベンツGLEクーペメルセデス・ベンツは、正統派SUVのGLEに加え、クーペとのクロスオーバー車である新型メルセデス・ベンツGLEクーペの発売を2016年8月頃より開始。このGLEクーペは、メルセデス・ベンツのSUVラインアップ初のクーペSUVであり、6番目のSUVとなる。

メルセデス・ベンツは、欧州でクーペとセダンをクロスオーバーさせた初代CLSが大ヒット。セダンでありながら全高を下げ、クーペのようなシルエットとした4ドアクーペのパイオニア的存在でもある。これが、今ではメルセデス・ベンツの十八番といえ、CLSだけでなくCLAなどラインアップを増やしている。こうした4ドアクーペは、今では当たり前ともいえるカテゴリーになり、他社では同様のコンセプトをもつモデルが多く用意されている。

そんな経緯もあり、メルセデス・ベンツはクーペとクロスオーバーさせたモデルが得意なイメージもあるが、SUVとクーペのクロスオーバー車は、このGLEクーペが初となる。SUVとクーペをクロスオーバーさせたパイオニア的存在は、ライバルのBMW X6。BMWは逆に、SUVクーペが得意でX4など他のクラスまでラインアップを増やしているほどだ。

メルセデス・ベンツGLEクーペとはいえ、SUVクーペというカテゴリーは、やはりニッチ。しかし、世界中でSUVが人気となり、各社ラインアップを強化している中で、こうしたニッチなセグメントのモデルも重要視されている。ニッチなセグメントとはいえ、世界中で売れればそれなりの販売台数となり、無視できないセグメントになったといえる。端的に言えば、顧客ニーズの多様化に対応したカタチだ。

クーペのデザインは、とくにサイドビューが印象的だ。ルーフの一番高い部分は、ドライバーシート付近。そこから、急速にリヤエンドへ、流れるようなラインを描きルーフがドロップしていく。このシルエットは、まさにSUVクーペと言えるものだ。スクエアなシルエットで、いかにも正統派SUVといえるGLEとは、見事に対照的といえるデザインだ。

GLEとGLEクーペの全高差は、なんと64㎜。これだけ全高が低い上に、急激に後方へ向けてドロップしているルーフのため、リヤのヘッドクリアランスは、随分少なくなっていると思われる。居住性や乗り降りを含め、購入時はこうした部分もチェックする必要がある。

メルセデス・ベンツGLEクーペリヤエンドは、ボディの幅を広く見せ安定感を演出する。実際にGLEクーペはGLEに対して全幅で68㎜もワイド。前方から見たときのシルエットは、なかなか安定感がある。また、バンパーに一体化されたナンバープレートホルダーなど、クーペの性格を強調するデザインは、Sクラス クーペで初めて取り入れられたデザインだ。

こうした外観デザインは、ベースとなるGLEとはかなり差別化されたが、インテリアはなぜかほぼ同じ。これだけ、外観デザインにこだわり差別化したのなら、もう少しインテリアも違いがあるといい。とくにGLEクーペのインテリアは、もう少しクーペらしい艶やかさが欲しい。

気になるのは、ラゲッジスペース。SUVなので、いかにSUVクーペとはいえ狭すぎるのは困る。まず、GLEのラゲッジスペースは690L。対して、GLEクーペは650Lとなっている。クーペ化により、若干スペースはダウンしていることになるが、まぁ許容範囲だろう。直接のライバルとなるX6は、通常時が580Lなので、GLEクーペはX6よりやや広いラゲッジスペースとなっている。

搭載されたエンジンは、GLEと同じ3.0L V6のクリーンディーゼルエンジンで、258ps&620Nmというスペックを誇る。620Nmという大トルクなら、いくら2トン超の車重であっても、余裕あるクルージングが可能だ。組み合わされるミッションは9速AT。9速もあると、ワイドなギヤレシオが可能となり、高速域ではエンジンの回転数を下げ低燃費化できる。また、燃費効率が高い回転数できめ細かいシフトチェンジができるようになるため低燃費化できる。クリーンディーゼルのもつ低燃費性能を、効果的に引き出すことができるミッションだ。

GLEクーペは、GLEと同じくクリーンディーゼルエンジンのみの設定。大きく重いSUVは、やはりパワーよりトルクが大きい方が乗りやすい。また、低燃費時代の現代において、単なるガソリン車では存在価値も無い。中途半端にガソリン車を導入しても、結果的に販売効率が悪くなるだけ。低燃費性能とクリーンディーゼルの魅力をアピールするのであれば、これくらい割り切った方が顧客にもメルセデス・ベンツのメッセージが伝わりやすいというものだ。

また、クリーンディーゼルは、ハイオク仕様の輸入車に対して、軽油を使うため燃料費が30円/L前後安い。燃費が良い上に、燃料の単価も大幅に安いとなるとCO2削減だけでなく、燃料コストも大幅に下がる。クリーンディーゼルは、エコロジーでありエコノミーでもある。もちろん、GLEクーペもエコカー減税は免税対応となる予定なので、税制面でのメリットも大きい。

どうしても古典的なガソリン車で、とにかく速くて高価が一番、という顧客向けにAMGモデルが2タイプ用意された。ひとつ目は、V6 3.0Lターボを搭載するメルセデスAMG GLE43。367ps&520Nmというスペックをもち、0-100km/h加速は、5.7秒! 2トン超の車重でありながら、もはやスポーツカー顔負けの加速力を誇る。

メルセデス・ベンツGLEクーペそして、SUVがこんなに速くて良いのか? と、疑問さえ感じてしまうほど過激なのがメルセデスAMG GLE63Sクーペだ。こちらは、V8 5.5Lターボで585ps&760Nm。リアルスポーツカーのメルセデスAMG GTよりパワフル。ライバルには、BMW X6Mがあり575ps&750Nmを発揮していた。もはや、X6Mに勝つために造られたようなモデルでもある。

2トンを楽々超える重量級のSUVなので、自動ブレーキ関連の安全装備は重要だ。これだけ大きく重いクルマが歩行者と接触すれば死亡事故に直結する。GLEクーペには、十分な安全装備が用意され、歩行者検知式の自動ブレーキ、レーダーセーフティパッケージは全車に標準装備化された。レーダーセーフティパッケージは、前方だけでなく後側方、後方とクルマのまわり360度を監視し、もしものときに被害を回避、または軽減してくれる世界トップレベルの安全装備だ。

また、多くのセンサーを使っているこの機能は、メルセデス・ベンツがインテリジェントドライブと呼ぶ部分自動運転も可能としている。車線を維持しながら前車追従する機能なども用意される。このドライバー支援機能は、ドライバーの疲労を軽減し、結果的に事故軽減にも効果がある。

メルセデス・ベンツGLEクーペの選び方。AMGモデルは、お好きならどうぞ的な存在。標準車は、3.0Lクリーンディーゼルエンジンしかないため、標準車かスポーツか二択になる。グレード間の価格差は100万円。この100万円で、スポーツには標準車に対して、AMGのエアロパーツ関連とシート、メルセデス・ベンツロゴ付きブレーキキャリパーなどが装備される。また、ハーマンカードン製14スピーカーのオーディオがプラスされている。その他の細かい装備差を感がると、まぁ妥当な価格アップといったところだ。

まず、乗り潰すつもりならどちらでもいい。ただし、短中期の乗り換えならスポーツがお勧めだ。中古車でもSUV人気は高く、高値を維持している。そんな中でも、日本ではスポーツのように、エアロパーツ装備車の人気が非常に高い。こうした傾向は、SUVだけでなくセダンでも同じ。恐らく、標準車とスポーツとでは、リセールバリューで少々差が付くだろう。こうなると、実際の100万円という価格差は小さくなる。リセールバリュー面でみれば、よりスタイリッシュで豪華装備のスポーツの方が満足度も高くなるだろう。

■メルセデス・ベンツGLEクーペ価格

・GLE 350 d 4MATIC クーペ ¥8,900,000
・GLE 350 d 4MATIC クーペ Sports ¥9,800,000
・メルセデスAMG GLE 43 4MATIC クーペ ¥12,000,000
・メルセデスAMG GLE 63 S 4MATIC クーペ ¥17,800,000