SUVテイストをプラスしたクロスオーバー車「DS4クロスバック」が新登場!


シトロエンDS4シトロエンにとって、DSというブランドは特別なモデル。このブランド名は、1955年に登場したDSと呼ばれるモデルの名を冠している。当時のDSは、宇宙船のようなユニークで高いデザイン性に、その後シトロエンの代名詞ともなる油圧制御のサスペンションであるハイドロニューマチックを搭載していたなど、現代のシトロエンブランドの礎ともいえるモデル。そんなDSのDNAを受け継ぎ、先進技術と優れたデザインを融合した特別なモデルが最新のDSブランドなのだ。

過去のクルマであるDSをリスペクトし、ブランド化したのには訳がある。単純に過去のクルマをあがめている訳ではなく、用意周到に考え抜かれた商売上のブランド構築という意味合いが強い。

ブランドの再構築という視点では、BMWがミニのブランドを手に入れ大成功を収めている。ミニは、プレミアムコンパクトと呼ばれ、新カテゴリーを生み出した。その強力なブランド力と高いクルマのパフォーマンスを背景に、コンパクトカーの枠を超えた高額な価格で売られている。

とくに、日本では値引きが基本的にゼロ。値引きが前提の自動車販売業界において唯一無二の存在といってもいい。また、世界的に見ても非常に高い収益性をもつモデルで、多くの自動車メーカーが、ミニのような収益率の高いマーケットに参入し利益を上げたいと考えるのは当然だ。シトロエンも、過去に偉大な功績を遺したDSを持ち出しブランド化することで、高収益を得たいと考えているのだ。

ただ、このクラスは簡単にブランド化するのが難しく、アウディもA1を投入するなどしているが、ミニの相手にもなっておらず、いかにミニブランドがユニークな存在であるかが分かる。DSブランドは、そんなミニに負けない高いデザイン性でプレミアムマーケットに挑んでいるモデルなのだ。

シトロエンDS4そんなDSブランドの核となるのが、激戦Cセグメントに属するDS4だ。今回はデザイン変更すると共に、新たに全高を高めSUVとのクロスオーバーとしたDS4クロスバック(CROSSBACK)を設定し発売を開始した。

今回、主にデザイン部分のみというのは、2015年6月に改良型1.6ℓターボエンジンを搭載し165psにパワーアップしている。さらに、このエンジンに組み合わされたのは、待望の新6速AT。ストップ&スタート機能がプラスされ燃費を32%も改善し14.9㎞/Lとなって進化しているからだ。シトロエンとプジョーの日本での販売上の悩みどころはミッション。旧モデルは、シングルクラッチの自動変速機付き6速MTだったため、シフトフィールには独特の空走感もあり、スムースなATやCTに慣れた日本人にはあまりお勧めできるものではなかった。6速ATが設定されたことで、より多くの顧客がDS4を楽しむことだできるようになった。

今回の改良で注目なのは、なんといっても新グリルデザインが採用されたことだ。なんと、シトロエンのらしさの象徴ともいえるダブルシェブロンが消えたのだ。

その代わりに、NEW DS WINGとよばれるグリルが採用されている。シトロエンのエンブレムから、DSエンブレムになり、フロントグリルを縁取るクロームは輪郭がヘッドライトと連なるように左右に広がり独立したブランドとしてのアイデンティティをアピールする。

ダブルシェブロンは、姉妹車であるC4などにも共通。DSブランドが、より明確にプレミアムブランド化するためには、グリル程度とはいえシトロエンと同様なデザインテイストでは明確な差別化ができないという判断なのだろう。今後、このNEW DS WINGがどう進化していくかにも注目だ。

また、グリル同様にクルマのデザインを強調するヘッドライトも変更されている。バイキセノンヘッドライトとLEDポジションランプからなるDS LED VISIONが採用された。このヘッドライトは、機能とデザインを兼ね備えた新しいDS4のアイコンとなる。NEW DS WINGと共に、DS4の新たな顔となる。

そして、DS4には新たな選択肢も加わった。SUVとのクロスオーバー車であるDS4クロスバックだ。DS4クロスバックは、DS4の全高を30㎜高め1,530㎜とした。最低地上高も20mmアップの170㎜としている。FF車のみなので、走破性云々というレベルではないものの、ラフロード程度なら十分に対応できる。また、この車高は、日本においてはなかなか絶妙。日本の都市部に多い立体駐車場の全高制限は1,550㎜。つまり、1,550㎜を超えると車庫証明が取れず、DS4クロスバックが欲しくても買えないということになる。こうした輸入車は、都市部中心で売れるクルマであることから、立体駐車場でも購入できるということは大きなメリット。マツダのCX-3もこうした理由から、全高を1,550㎜にしているくらいだ。

DS4クロスバックの外観デザインは、ルーフモールディングやルーフスポイラーなどを装着しSUV要素を強調。フロントバンパー、17インチブラックホイール、ホイールアーチモールディング、リアエンブレム、フロアマットなどの DS4クロスバック専用パーツが、クロスオーバー車であることをアピールする。また、DS4クロスバックの専用色、オランジュ トルマリンが設定された。

シトロエンDS4さて、DS4の選び方。エントリグレードとなるDS4シックの価格は2,930,000円と、プレミアムブランドということもあり高めの価格設定となっている。DS4シックには、新たなDS4の顔ともいえるDS LEDビジョンの設定が無く、スマートキーシステムも用意されていないなど、価格が高い割には装備が貧弱なので満足度は低い。そうなると、DS4シックDS LEDビジョンパッケージということになる。ただし、価格はグッとアップして33万円高となる3,260,000円。まぁ、コンビネーションシート(レザー/ダイナミカ/ファブリック)にアップグレードされているので、まぁ納得できるレベルで買い得感はない。よりプレミアム性を重視するのなら、クラブレザーシートがお勧めだが、価格は380,000円と安くはない。このクラブレザーシートは、DS4らしさを鮮明にしてくれるオシャレ度が高いアイテムだけに、予算に余裕があれば、積極的に選択したいオプション。満足度もアップする。

DS4クロスバックは1グレードしかないので、選びようがない。4WDではないので、降雪地域に住む人に積極的にお勧めできるほどでもない。DS4は、元々アップライトな着座位置。それがさらに高くなっているので、高齢者や初心者には乗りやすいクルマである。大型のセダンからのダウンサイジングで、あまり安っぽいコンパクトカーには乗りたくないという人にはお勧めだ。

安全装備面では、やや物足りない。歩行者検知式自動ブレーキを含んだ先進安全装備が用意されていないからだ。サイド&カーテンエアバッグ、ブラインドスポットモニターシステムなど、基本的な装備は充実しているが、さすがに300万円前後のクルマで歩行者検知式自動ブレーキが無いというのでは、先進性をアピールするDSブランドとしては微妙だ。プジョーやルノーも同様に、フランス車全般がこうした先進装備の装着が遅れている。

こうした自動ブレーキ関連の安全装備の装着は、時間の問題とみられる。また、プジョー&シトロエングループもクリーンディーゼル車の導入を目前に控えている。今、慌てて安全装備が物足りなく、ハイオク仕様で燃料費が高価になるガソリン車を買うのでは、あまり意味が無い。補助金やエコカー減税の対象となり、燃費もよく燃料費も安く、大トルクを誇るクリーンディーゼルは魅力的だ。そう考えると、クリーンディーゼル車が出るのを待つという選択もありだろう。

シトロエンDS4/DS4クロスバック価格


・DS4 Chic 2,930,000円

・DS4 Chic DS LED Vision Package 3,260,000円

・DS4 CROSSBACK 3,380,000円

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。