自動車の安全性能を評価する機関が各国に存在する


交通死亡事故は、年々減少している。減少理由は多岐にわたるが、シートベルト着用の義務化が浸透したことや、クルマのパッシブセーフティ(衝突安全)やアクティブセーフティ(予防安全)性能が向上した結果によるものが大きい。

各自動車メーカーとも、安全性向上に力を入れて開発が進められている。どのメーカーのカタログを見ても、自社のクルマの安全性をアピールする。しかし、顧客側から見れば、A車とB車ではどちらが安全なのか分からない。悪く言えば、安全性が高いとアピールしていながら、実はそれほど安全なクルマではない、というクルマの存在も懸念される。

そうした安全性能を客観的に顧客の立場で評価する団体がある。日本では、JNCAP((Japan New Car Assessment Program)と呼ばれている。国の安全基準に沿って、新車の安全性能を評価しているのだ。

こうした団体は、日本だけでなく欧米、中国、オーストラリア、韓国にも存在する。欧州ではEURO NCAP、アメリカはNHTSA(国家道路交通安全局)とINSURANCE INSTITUTE FOR HIGHWAY SAFETY(IIHS:米国道路安全保険協会)、オーストラリアはANCAP、韓国はKNCAP、中国はC-NCAPと呼ばれている。

基本的に似たような試験だが、微妙に異なる試験や結果の表記


中国を除けば、これらの団体は似たような試験となっている。クルマに求められる安全性能は、国が違えど基本的な部分は共通といえるからだ。そのため、試験結果も当然似たようなものになる。

こうしたテストは、より安全なクルマを生み出す結果となっているものの、一方で悪く言えば試験に良い結果がでるように開発されるクルマもあるという。何年も同じ試験を繰り返せば、いい点がとれるようになるのは当たり前ともいえる。こうなると、どのクルマもほとんど差が無いようになる。

そうしたこともあり、より厳しい状況でのテストを加えたのがIIHSだ。従来ある車両の40%を障害物に衝突させるオーバーラップ試験をさらに厳しい25%にして行われたのがスモールオーバーラップ。衝突のエネルギーが、25%という小さな部分に集中するため、よりボディに大きなダメージが加わるのだ。IIHSの調べでは、重傷・死亡事故の内約25%はこのスモールオーバーラップによるものだという。この試験が行われたのが、2012年。この試験結果は、多くの自動車メーカーに衝撃を与えた。安全性能では定評があるメーカーがことごとくPOORという最低評価となったのだ。当然のことながら、各社競い合うようにスモールオーバーラップ対策が行われ、今では最高評価のGOODを取得できるようになっている。

IIHSの評価は、あくまでアメリカで販売されているモデルの評価である。スモールオーバーラップは、運転席側をぶつけるので、日本は右ハンドルで逆になる。北米用はこうした試験に対応するための補強がされているが、日本向けはこうした補強がされていないなどのケースも考えられるので、必ずしも日本で買うクルマがIIHSの評価通りとはいかないのが現状だ。日本のJNCAPは、もはやほとんどのクルマが最高評価の5スターを獲得している。そろそろ試験内容を改める時期にきている。

日本でも2018年6月からの新型車には、より高い側突安全基準が盛り込まれる


こうした衝突安全に関しては、日本の国交省も新たな動きをみせている。2016年6月に「ポール側面衝突時の乗員保護に係る協定規則」新設。一定速度で電柱など細い障害物に側面衝突したときの衝撃が一定値以下であることや、ドアが外れないこと、燃料漏れが一定量以下であることが義務付けられた。2018年6月から新型車に適用される。こした新たな安全基準が追加されたことで、JNCAPも同じ衝突試験を開始する可能性も高まった。

この流れを受けて、大きく変わりそうなのがサイドエアバッグの存在。多くの国内メーカーは、高級車を除くとサイドエアバッグがオプション設定になっている。今回の安全基準を達成しようとすると、サイドエアバッグの装着が必要になる可能性が高い。サイドエアバッグ標準装備化へのプロローグともいえそうだ。

JNCAPは、自動ブレーキの付いていないクルマでも5スターになる謎とは?


JNCAPの試験結果は、安全なクルマ選びのひとつの目安となるが、注意しなくてはならない点もある。5スターが付いているからといって安全とは限らないのだ。JNCAPの評価には、自動ブレーキや車線逸脱警報などの装備が含まれていないのだ。つまり、パッシブセーフティ機能にのみフォーカスしていると思っていい。自動ブレーキがついていないようなクルマでも5スターが取れることになる。

アクディブセーフティ機能に関しては、先進安全自動車(ASV)として、別に記載され評価されている。クルマの安全性能は、アクディブセーフティもパッシブセーフティも含んだ総合力だ。現在の評価だと、自動ブレーキが用意されていないクルマでも5スターとなる。ユーザーは予防安全性能評価と別々に確認して評価することになるのだ。これでは分かりにくい。

こうした評価のため、自動ブレーキが付いていなくても5スターが取れれば、自動ブレーキの装備が遅れているメーカーはいつまでたっても自動ブレーキが装備されないまま。標準装備化が見送られるのは当然だ。EURO NCAPなどのように、総合力での評価が望ましい。

今からクルマを買うなら、知っておくべき安全性能とは?! 安全装備&便利機能を選ぶならこれだ!

安全装備&安全性能で選ぶおすすめランキング!ボディタイプ別おすすめの車種はこれだ!