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悩ましき2台 ホンダ フリード と トヨタ シエンタ

クルマ選びって楽しいですよね。でも、最後に選ぶ決め手ってなんだろう?って思うこと、ありませんか。このコーナーは、クルマ選びで悩み疲れたそんなアナタの背中をドーンと押しちゃいます。迷える子羊よ、存分に迷いたまえ・・・・

今回は、いざという時には7人乗れて、でも日常では大きすぎず小さすぎず、という「ちょうどいい」サイズのコンパクトミニバンと呼ばれるカテゴリーから、売れ筋の2台をピックアップしました。実際には「ピックアップした」と言っても、事実上この2台のみともいえる市場ではあります。


◆まさに「ちょうどいい」サイズと使い勝手


「大は小を兼ねる」という言葉があるように、その考え方でクルマ選びをするユーザーが多いのは事実です。いざとなったとき7人乗れたほうがいい、という条件でクルマを選択すると、大きいクルマではトヨタのベルファイアやアルファード、日産ではエルグランドなどが該当し、その下の5ナンバークラスミニバンではトヨタ・ノア、ボクシー&エスクァイア、日産セレナなどが思い浮かびますが、後者でも実際は5ナンバーフルサイズでマス(カタマリ)感が強く、とても大きなクルマに感じてしまうのも事実だったりします。

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そんな中、全長4.2mという小型ハッチバック程度で、それでいて7人乗ることが出来る「コンパクトミニバン」のサイズ感は、まさに日常生活でクルマの大きさが負担にならないのです。7人乗るには実際には少々キツイのは確かですが、滅多に乗ることは無いでしょうし、そのぶん3列目を畳んでしまえばトランクスペースは充分な容量となります。燃費もよく、運転しやすく、人も荷物も積めるこのカテゴリーは、まさに「ちょうどいい」のです。


◆コンパクトミニバンの先駆、フリード

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2008年に登場したホンダ・フリード。全長わずか4mほどで7人乗りを実現したモビリオの後継であるフリードは、全長を4.2mまで延長、室内空間を拡大して居住性の向上を果たしました。デザインは路面電車をモチーフにしたモビリオとは異なり抑揚の大きなダイナミックなものとなりましたが、両側スライドドアはモビリオから引き継いでいます。

2列目はセパレートタイプ(キャプテンシートと称する6人乗り)とベンチタイプ(7人乗り)が用意され、3列目を使用しない場合は左右に跳ね上げることによって荷物の収納スペースを拡大できます。パワーユニットは1.5リットルのi-VTECとハイブリッドの2種類が用意されています。後者のカタログ上のJC08モードの燃費は、21.6km/Lです。


◆デザインに目を奪われがちだが堅実な設計のシエンタ

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一方、2003年に登場した先代に代わり2015年にモデルチェンジを果たしたのが新型シエンタです。くまどりのようなラインを前後に配したこれまでのミニバンとは異なる新しいデザインを纏っているだけでなく、蛍光色のような明るいイエローをイメージカラーにしたシエンタは、その派手で斬新なデザインに目が奪われがちですが、実は内容の濃い、まじめで堅実なコンパクトミニバンに仕上がっています。

ボディサイズは先代シエンタから伸ばされ、ほぼフリードと同じに。ホイールベースも10mmほどしか変わりませんが、全高はシエンタが40mm低くなっていて、デザインの影響もあってよりスマートに見えます。

注目の居住性はライバルであるフリードを徹底的に研究しただけのことはあり、各項目でフリードよりも高い点を与えられます。2列目が2種類用意されることもフリードと同じですが、リアスライドドアの開口部が大きく、また床面高さもフリードよりも低いために乗降性にすぐれているのが特徴です。3列目はフリードよりいくぶんか広く、収納は床下にたたむことが可能なため、より大きい荷物が積載出来ると思います。

シエンタにも1.5リットルエンジンとハイブリッドがラインナップされています。ハイブリッドモデルのJC08モードでのカタログ燃費は27.2km/Lで、フリードより大幅に良い数値を出しています。


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◆決め手は、どこに!?


フリードは2008年の登場のため、新しい上にフリードを研究して登場した新型シエンタとの対決は分が悪いのもたしか。燃費も安全装備も、やはりシエンタが勝っています。ですが、発売8年目の熟成と、シエンタの好みが別れる外観デザイン、フリードの精悍さなどが気に入れば、もちろんまだまだ一線級の性能や使い勝手を誇るフリードをチョイスするのも問題はないでしょう。もしくは、2016年に登場するといわれる新型フリードを待ってみるのも良いかもしれません。


◆迷える子羊よ、迷いは消えただろうか


ということで、迷っているアナタ、いかがでしたでしょうか。気になったらぜひ現車に乗り、触れ、いろいろ感じてみてくださいね。
くるま選びは楽しくもあり、そして悩むもの。これからもいろいろな視点でのクルマ選びをこのコーナーで提案出来たら、と思います。


【イラスト/文 遠藤イヅル】
フリーのカーイラストレーター/ライター。東京都出身。自動車雑誌、WEBサイトにクルマをテーマにしたイラストや記事を多数提供。世界各国の生活感があるクルマを好み、20年間で18台のクルマを乗り継ぐ。クレイジーなほど深くて混沌としたクルマ知識を持つ元自動車系デザイナー。自身のクルマ体験をもと、独創的な視点で切り込むイラストやインプレッション記事は、他にないユニークなテイストとして定評がある。2015年7月現在の愛車はプジョー309SI。最新の掲載誌は遠藤イヅルのfacebookで確認!

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