オートライト メルセデス・ベンツCクラスのヘッドライトスイッチ。オートが基本で、すでにオフ機能は無い

<薄暮時の交通事故が多く、65歳以上の交通死亡事故は全年齢の中で50%以上! >

国交省はオートライトの標準装備化を検討しているという。オートライトは、車両に設置されたセンサーで周囲の明るさを検知。暗いと判断した場合、自動でヘッドライトを点灯。また、周囲が明るい場合は、自動で消灯する便利な機能だ。

交通事故が一番多い時間帯は、夕方の16時~18時といわれている。薄暮時は、クルマが見えにくくなることが影響して事故が多いといわれている。また、交通死亡事故は年々減少傾向にあるものの、なんと65歳以上の死亡事故は、死亡事故全年齢の内、なんと50%を超えてしまった。高齢化社会で、高齢者が多いというのも理由のひとつだが、それ以上に、薄暮と高齢者の組み合わせが、より交通事故を増やしている傾向にある。

もともと、薄暮時にはクルマが見えにくい。さらに、雨が降っていたりすると最悪。日本は白・黒・シルバーというボディカラーのクルマが多い。いわゆるモノトーンのクルマは、薄暮時や雨天時には、周囲の景色に溶け込んでしまうのだ。とくに、高齢者は視野が狭くなっていたり、色の判別、空間認識が低下している。そのため、クルマが周囲にいるのに気が付かないまま事故になるケースが多いといわれている。

こうしたクルマの存在が認知できなかったことから起きる事故を減らす効果があるのが、ヘッドライトの早期点灯。ヘッドライトを早期に点灯することで、薄暮時でもクルマを認識しやすくなる。一部の団体では、思いやりライトなどと呼び、多くのドライバーにこうした現状を知ってもらい早期ヘッドライト点灯の啓蒙活動を行っている。

しかし、こうした活動もなかなか浸透しない。若手のドライバーは、加齢による視野が狭くなったり空間認識が衰えていく経験が無い。当たり前だが、高齢者になったことが無いから、高齢者の感覚が分からない。また「ヘッドライトは自分が見るためのもの」という認識が強く、ヘッドライトを点灯させることで「自分のクルマが見てもらっている」という意識が無い。さらに、都市部では街灯が明るく道もよく見えるから尚更だ。

<ヘッドライトの早期点灯は「安全意識の高いカッコいい人」。早期点灯しないのは「安全意識の低い人」>

そうした状況を少しでも良い方向へ導きたいと考えてのオートライト装着義務化なのだろう。しかし、装着義務化だけでは、かなり難しい。というのも、オートライトという装備そのものは、かなりベーシックなものとなっていて、軽自動車などにもすでに標準装備されているクルマも多い。商用車などを除けば、かなり高い装着率を誇る。それなのに、薄暮時にヘッドライトを点灯しているクルマが少ないからだ。

それは、なぜか、日本では比較的明るいうちからヘッドライトを点灯させることが「恥ずかしいこと」されている。他人に見てもらうためのライトという認識が無いため、昼間からライトを点灯している間抜けもの的感覚なのだろう。そのため、オートライトが付いているクルマであってもオートライトの機能をオフにして、手動でヘッドライトの点灯を行っていたりするドライバーが多い。自動車メーカーの中には、顧客からヘッドライトが薄暮でも点灯するのはカッコ悪いという顧客の要望を聞き、かなり暗くならないとヘッドライトが点灯しない設定にしていたりするクルマもあった。

だから、単にオートライト装着義務化しただけでは、現状とさほど変化がないようにも思える。そうしたことをすでに察知してか、最近のメルセデス・ベンツなどは、ヘッドライトのオフ機能が無い。オートがデフォルトでオート、ヘッドライトオン、スモールライトの機能しかないのだ。そうなると、もはやすべてのドライバーは、オートで使うしか無い。最悪でもスモールライトの点灯となっている。メルセデス・ベンツのように徹底的にやらないと、そう簡単に薄暮時のヘッドライトの点灯は容易ではないだろう。ヘッドライトの点灯をドライバー任せにしていては、薄暮時の事故は減らないというメッセージにも受け取れる。

欧州では、さらにデイタイムランニングライトなどと呼ばれる装備が義務化されている。これは、ヘッドライト以外のライトを常時点灯させるというもの。日本では、オートバイが常時点灯が義務付けられているため、オートバイと見分けられないなどが理由で、デイタイムランニングライトは認可されていない。ただ、オートバイと見分けられなくても、何かがいるということだけは分かるので、オートバイと見分けられないことがダメな理由にはならないだろう。誰もが交通事故の被害者や加害者にはなりたくないはず。大切なのは、周囲に自車の存在を周知することだ。

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