熟成が進むも、自動ブレーキ関連の安全装備が未装着、価格設定など、選びにくさが際立つ


トヨタサイトヨタは、ハイブリッドセダンであるサイ(SAI)を一部改良するとともに、特別仕様車G“Viola(ヴィオラ)”を設定し発売を開始した。

サイは、2009年に登場し2013年8月に大幅マイナーチェンジを行っている。外装はボンネットからバンパー、ヘッドライト、フェンダーなどを刷新。フェイスまわりのデザインは、まるで別物になるほどの大変身だ。ヘッドライトまわりのデザインは個性的で、ほぼ車両の全幅をカバーする超ワイドサイズヘッドランプを採用した。ライト点灯時には、白色LEDの閃光が切れ目なく中央から両サイドへ力強く発散し、夜にはひと目でトヨタ サイであることが分かる。通常のトヨタ車では、例をみないくらいの大幅改良だ。さらに、デザイン関連だけでなく、ボディ剛性の強化やハンドリング性能の向上、燃費性能の向上なども行われ、クルマの本質も磨き上げられた。

トヨタサイこれだけの変更が加えられたものの、サイの不調は止まらない。マイナーチェンジ前は、1,000台/月に満たない月がほとんどだったが、マイナーチェンジ後は月販販売目標の2,000台を超えるようになった。しかし、マイナーチェンジ効果も1年もたずに収束。また、1,000台を割る販売台数になってきている。

サイが苦戦する理由は、トヨタのラインアップ上の問題もある。2.5Lクラスのハイブリッドセダンは、サイの他に最新の2.5Lハイブリッドを搭載したカムリがある。カムリは燃費やパワーで上回り、ボディサイズもやや大きい。その上、価格も安い。こうなると、あえてサイを選ぶ理由が、あまりない。また、逆に高級感という視点で見ると、姉妹車であるレクサスHSがある。まさに、サイは板ばさみ状態といえる。こうした部分が、サイを選びにくくしている状況でもある。

それでも、トヨタはサイを改良し続ける。モデル末期ながら、バージョンアップするサイの志は高く評価したい部分だ。今回の改良では、世界で初めて「スーパーUV400カットガラス」を全車のフロントドアに採用した。このガラスは、99%以上カットできる紫外線の波長の上限を400nm(従来型 : 380nm)に変更し、快適性を向上させている。モデル末期のモデルに世界初のパーツを使用するなど、なかなかアグレッシブな改良だ。

また、洗車などによる小さなすり傷を自己修復するクリア塗装「セルフリストアリングコート」を全外板色に採用。さらに「ヒルスタートアシストコントロール」に坂道を感知する機能を追加し、車両のずり落ちを緩和する性能を高めている。

機能面では、サスペンションのチューニングやステアリングギヤ比を変更。ステアリング操作時に、車両応答性を高め、優れた操縦安定性を実現している。前回のマイナーチェンジで、ボディ剛性を高めたこともあり、走りの質も熟成されてきている。

こうした改良に加え、サイには特別仕様車G“Viola”(ヴィオラ)が投入された。Viola(ヴィオラ)とは、スミレを意味するイタリア語。「G」グレードをベースに、上品な色調の専用色ダークバイオレットをシート表皮(ファブリック×合皮)など、内装の各所に採用。さらに、ボディ色に特別設定色スパークリングブラックパールクリスタルシャイン(オプション)を含む全4色を設定。これに加え、快適温熱シート(運転席・助手席)、スカッフイルミネーション(運転席・助手席)などを特別装備した。

この特別仕様車Violaの価格は3,996,982円で、ベースとなるGグレードに対して約6万円のアップとなった。装備アップ分相当の価格アップといった印象で、モデル末期のお買い得特別仕様車というものではない。今回の一部改良で、サイの価格は若干アップしGグレードで1万円弱の価格アップとなった。こちらは、改良された内容を考えるとお買い得感はある。

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サイの購入術


トヨタ サイの選び方。サイの競合車となるのは、カムリやホンダアコードなどがある。予算に余裕がある場合、クラウンハイブリッドなども選べるようになる。もはや、競合車に対しても古さが目立ってきているのが現状。じっくりと比べ試乗してみるといいだろう。実際の商談では、こうした競合車の見積りを取り、大幅値引きをさせたい。モデル末期なので、価格的メリットが無いとなかなか選びにくいクルマになっているからだ。

サイのグレード選び面では、最上級グレードのG Aパッケージがおすすめ。サイの一部改良では、残念ながら自動ブレーキなどの安全装備が装着されていない。今や、軽自動車でも歩行者を見つけて自動ブレーキをかける時代に突入しているのに、400万円前後の高級車に自動ブレーキ関連の装備が無いのは大きなマイナスだ。ただ、その中でもAパッケージだけ、プリクラッシュセーフティシステム(ミリ波レーダー方式)が標準装備されている。歩行者は見つけられないが、ミリ波レーダーを使ったプリクラッシュセーフティシステムなので、一定の安全性は確保できる。このAパッケージを選ぶと、レーダークルーズコントロール(ブレーキ制御付)も装備される。この機能は、前車に追従し速度コントロールしてくれるので、安全性だけでなくロングドライブ時の疲労軽減にも効果がある。このAパッケージ車の価格は4,339,637円。さすがに、これだけ高価になるとますます選びにくさが増す。他の競合車とジックリと比べて選びたいクルマだ。

サイ(SAI) 価格


・S 3,303,818円 “Cパッケージ” 3,406,909円
・G 3,938,073円 “Aパッケージ” 4,339,637円
・特別仕様車 G“Viola”3,996,982円

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執筆者プロフィール
クルマ評論家 CORISM代表
大岡 智彦 氏

CORISM(http://www.corism.com/)編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員。