トヨタエスクァイア

<販売店の都合ともいえる新機種だが、高級志向で差別化>

トヨタ エスクァイアまだ、セダンがブームだったころ、トヨタにはマークII、クレスタ、チェイサーという3姉妹車があった。すべて、ベースは共通で、ちょっと姿を変え差別化したモデルだ。セダンが人気だったこともあり、トヨタの全チャネルで販売されており、とにかく売れていた。しかし、セダンブームが終焉を迎えた後、この3姉妹は効率の悪さからイッキに姿を消す。現在では、マークXのみとなっている。

トヨタもそうした効率の悪さから、3姉妹的な車種は作らないとしていたのだが「新型トヨタ エスクァイア 」を投入した。このエスクァイアは、すでに発売済みのノア&ヴォクシーと共通ハードを持つモデル。つまり、5ナンバーミニバン3姉妹の末妹が登場したことになる。

こうした3姉妹化となったのは、国内マーケットが完全にコンパクトと軽自動車しか売れない状況になってしまったことが上げられる。上級モデルとなるアルファード&ヴェルファイアといったクラスも、徐々に販売台数が下落傾向。その中でも、唯一、5ナンバーミニバンだけがなんとか維持している現状がある。そうなると、困るのは高級車中心のラインアップをもっていたトヨタ店とトヨペット店だ。顧客がドンドンと減る恐れがある。そこで、少しでも販売台数のプラスになるクルマとして投入されたのが新型エスクァイアということになる。

また、トヨタの販売店全店で5ナンバーミニバン3姉妹を売ることで、このクラスのマーケットを完全に支配することも可能となる。販売店数=顧客との接点とすれば、ホンダのステップワゴンも日産セレナも非常に厳しい戦いになるのは確実。さらに、この5ナンバーミニバン3姉妹は、クラス唯一のハイブリッド車で商品力も強力。ある意味、販売網&プロダクトとも隙が無いともいえる状況となった。

トヨタエスクァイアそんな役割を担った新型エスクァイアは、トヨタ店とトヨペット店扱いということで、高級感で差別化されたミニバンに仕上げられている。
基本的なハードは、ノア &ヴォクシー と同じ。エンジンスペックやハイブリッド システムは共通となっている。2.0Lの3ZR-FAE型エンジンの出力は、152ps&193Nmを発揮。燃費性能は16.0㎞/Lという低燃費を誇る。

ハイブリッドシステムは、1.8Lエンジンと組み合わされシステム出力は136ps。そして、燃費性能はライバルを圧倒する23.8㎞/Lを誇る。

高級感という差別化ポイントを最も感じさせる部分は、エクステリアデザイン。バンパー下部まで伸びる堂々とした縦基調のフロントグリルをはじめ、ドアハンドルやバックドアにメッキ加飾を施しギラギラ感がすごい。アルファードやヴェルファイアと共通するきらびやかさと圧倒的な存在感を表現している。それにしても、トヨタのミニバンデザインは強面系が急速に加速中。もはや、ファミリー層向けのノアでさえ、先代のヴォクシー以上の強面になっているほど。そうしたモデルが人気であるとはいえ、あまりに3姉妹すべてがその方向というのも芸がない。違う提案があってもいい。

また、新型エスクァイアのインテリアも高級感をアピール。インストルメントパネルからドアトリムにかけて合成皮革をあしらい、金属調加飾やステッチを採用。全体的にラグジュアリーな雰囲気にまとめている。

シートもラグジュアリー志向だ。セカンドシートには、キャプテンシートを採用。横スライド機構と薄型のワン
タッチスペースアップサードシートの組み合わせにより、足元に広大なスペースを生む810mmの超ロングスライドを実現した。サードシートを跳ね上げ、セカンドシートを最後端までスライドさせれば、かなりラグジュアリーな空間となる。セダンが売れないため、価格帯が同じようなマークXの顧客にエスクァイアを勧めるという狙いもあるだろう。

また、セダン系の顧客が高齢という現実もある。新型エスクァイアは、低床フロアとしながら、広い室内空間とクルマとしての走行性能を両立。そのため、高齢者も姿勢変化が少なく乗り降りが可能なのだ。

もちろん、低床フロアはその他にも大きなメリットがある。ミニバンは、背を高くすると空気抵抗も増え、燃費も悪化。さらに、重心も高くなり、カーブでの安定感も無くなり、横転の危険も増す。全高のアップは、走行性能という面でメリットは、何一つないというのが実情。低床フロア化することで、こうしたデメリットをできる限り回避している。

トヨタエスクァイア居住性に燃費、走行性能と新型トヨタ エスクァイアは、全体的に高いレベルでまとめられたミニバンだ。ただし、大きな弱点がある。それは、いわゆる追突被害軽減自動ブレーキなどの含んだ安全装備だ。プリクラッシュセーフティシステムも、オプションでも用意されていない。また、高級をテーマにしている割には、サイドエアバッグやカーテンエアバッグもオプション。安全装備という視点では、残念ながら高級どころか今時のクルマの平均点にも達していない。

トヨタも2015年春から、トヨタ セーフティセンスと呼ばれる安全装備を順次装着していくという。そうなると、新型エスクァイアは、さらに完成度を増すことになるので、購入する場合、トヨタ セーフティセンスが装着されてからがお勧めだ。

エスクァイアの選び方は、まずガソリンかハイブリッドかという選択からだ。予算に余裕があるのなら、お勧めはハイブリッド車。ガソリン車との価格は、かなり大きいため、燃費が向上分による燃料費差で車両価格差分を回収するのは、かなりの距離を走らないと不可能に近い。ただし、リセールバリューは今後もハイブリッド車がガソリン車を圧倒する可能性が高いため、短期の乗り換えの場合、多少無理してでもハイブリッド車選ぶ方が良いだろう。予算重視や乗り潰すつもりなら、ガソリン車でも十分。

ハイブリッド車の購入は、ライバル車にハイブリッドモデルが無いため非常に値引き交渉も困難となる。その場合は、同じノア&ヴォクシーと競合させることが最低限必要だ。また、ガソリン車はステップワゴンが2015年前半にフルモデルチェンジするので、ステップワゴンの登場を待ってからがお勧め。今欲しいというのであれば、日産セレナがお買い得な特別仕様車を設定し、泥沼の値引き合戦にライバル車を引き込もうとしているので、セレナとしっかりと競合させるのもいいだろう。予算重視であれば、セレナには期待できそうな状況になっている。

■トヨタ エスクァイア価格

Xi 2WD(FF) 8人乗り 2,592,000円~Giハイブリッド  2WD(FF)  3,204,000円