日産 エクストレイル エクステリア

達人「松下 宏」が斬る!

日産 エクストレイル 評価

松下 宏

職業:自動車評論家
中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員としても、その信念は変わらない。そのため、大本命といわれている車種さえ外して...

最新のクリーンディーゼルを搭載し環境性能の高さは文句なし!

日産 エクストレイル クリーンディーゼル ステッカー

 日産 エクストレイルに追加設定された20GTは、乗用車ナンバーで登録される久々の国産ディーゼル車だ。日本では、石原都知事がPMの入ったペットボトルを振って見せたことで、一時はディーゼルエンジンを搭載する乗用車が完全になくなっていた。一昨年、メルセデス・ベンツがEクラスにディーゼル乗用車を設定したが、国産車ではゼロという状態が続いていた。
 そこに久々に復活したのがエクストレイルだ。エクストレイルはSUVだが、日本ではSUVの多くが登録上は乗用車になるので、久々のディーゼル乗用車の復活である。
 しかもエクストレイルのディーゼルはその環境性能が凄い。国土交通省は現在、ディーゼル車の環境基準として有害な排出ガスやPMの発生量に対して新長期規制を設定している。この基準に合わなければ販売できないのは当然だが、エクストレイルのディーゼルは新長期規制の次に予定されているポスト新長期規制(新長期規制より2倍くらい厳しい)をクリアしているからだ。
 ディーゼル車に対する日本の規制は、排気ガスの有害成分によって多少のばらつきはあるものの、世界で一番厳しいとされている。ヨーロッパでは現在、ユーロ4という規制が実施されているが、日本のポスト新長期はユーロ4の次の次にくるユーロ6くらいの厳しさと言われている。
 その最も厳しい基準を世界で最初にクリアしたのがエクストレイルのクリーンディーゼルで、これが何とも凄いことであるのは確かだ。エクストレイルの後から発表された三菱 パジェロのディーゼルはポストではない新長期規制に対応しただけだし、メルセデス・ベンツのEクラスも新長期対応である。
 2.0Lディーゼルのコモンレール+インタークーラー付きターボは、173ps(127kW)/3750rpm、36.7kg-m(360N・m)/2000rpmのパワー&トルクを発生する。ガソリンエンジンと比較すれば、パワーの173ps(127kW)は2.5Lガソリン並みの実力だし、36.7kg-m(360N・m)は3.6Lガソリン並みの実力となる。物凄いパワー&トルクを発生するのだ。それでいて、燃費性能は10・15モードで15.2km/Lを達成している。これが最新のクリーンディーゼルの特徴である。

日産 エクストレイル フロント
エクステリアデザインは通常のガソリン仕様と全く同じで、見た目だけで違いを見分けることはできない。派手なステッカーは試乗車だけのもの。
日産 エクストレイル リヤ
リヤにはディーゼルエンジン搭載を示すエンブレムとステッカーが貼られている。ディーゼル仕様らしい差別化はほとんどなされていない。
日産 エクストレイル フロントマスク
SUVらしい力強さを感じさせるフロントマスク。大きなヘッドライトやグリル、そしてアンダーカバーが存在感の高さをアピールしている。
日産 エクストレイル リヤコンビランプ
立体的な造形のリヤコンビランプもガソリン仕様と同じデザインだ。リヤウインドーにはクリーンディーゼル搭載を示すステッカーが貼られる。
日産 エクストレイル
エクストレイルに搭載されるディーゼルエンジンは、ポスト新長期規制に対応したクリーンな排ガスが最大の特徴。その実力のほどは?
日産 エクストレイル
ごらんの通り黒煙はまったく付着することなく、タオルは元通り真っ白のまま。最新クリーンディーゼルの環境性能の高さには驚かされる。
日産 エクストレイル 2リッター ターボディーゼルエンジン
2リッターのターボディーゼルエンジンを搭載。2000回転で最大トルクを発生するのでとても扱いやすい。パワーは2.5リッターのガソリン並みだ。
日産 エクストレイル シフトレバー
ミッションは6速MTのみ。シフトフィールはいいので気持ちのいい走りが味わえるが、ATまたはCVTが用意されないのは販売面ではつらいところ。
日産 エクストレイル 駆動切り替えスイッチ
燃費のいい2WDモード、路面状態にあわせて前後のトルク配分を変えるオート、そして悪路走破時に威力を発揮するロックモードが用意される。
日産 エクストレイル 走り

ディーゼルらしいトルクフルな走りが味わえる!

日産 エクストレイル エンブレム

 実際に走らせた印象も凄い。アクセルを踏み込めば相当に元気良く走らせることができる。エンジンの回転そのものがアクセルワークに応じて極めてスムーズに吹き上がり、4500回転から始まるレッドゾーンを超えて一気に5500回転あたりまで回るようなスムーズさを備えている。これに合わせて大きくトルクが盛り上がり、パワーフィールの良さも相当なもの。軽井沢の峠越えの道をグイグイと登っていく実力を見せる。
 一般道を時速60kmくらいで走っているときの回転数は1200回転ほどで、この回転域だとさすがにトルク感が薄れるが、流して走っているときには室内も静かである。またこの状態からでもギアを選んで加速すれば、すぐに気持ち良い加速が得られる。
 ディーゼル車にありがちな振動や騒音は、昔のディーゼルエンジンに比べたら良く抑えられているものの、最新のクリーンディーゼルのものとしてはやや物足りない面がある。特に加速時の室内騒音などはそれなりに高いレベルにあり、純粋な乗用車用のディーゼルエンジンではなく、SUVだから許されるレベルにとどまっていると思う。
 メルセデス・ベンツEクラスのディーゼルは6気筒の有利さや十分な防音対策がなされていることもあって、室内ではディーゼルであることが分からないくらいの静かさだ。日産がエクストレイル以外の車種にもこのディーゼルを展開しようとするなら、さらに振動・騒音対策をしっかりやる必要がある。
 エクストレイルのクリーンディーゼルは、日本における新しいディーゼルの時代を切り開いたが、今後ディーゼルが広く普及していくかどうかは、さらに静かでスムーズなディーゼルが作れるかどうかにかかっている。また日本ではATまたはCVTとディーゼルとの組み合わせも追求する必要があるだろう。

日産 エクストレイル インテリア
インテリアデザインはSUVらしい力強さと実用性を追求したもの。ナビやオーディオ類のスイッチも操作しやすく、使い勝手はとてもいい。
日産 エクストレイル フロントシート
フロントシートまわりにはドリンクホルダーや小物の収納スペースが豊富に用意されている。視界もいいので、狭い道での取り回しも楽だ。
日産 エクストレイル リヤシート
リヤシートのスペースは十分で、ゆったりとくつろげる。ヘッドレストは人数分用意されているが、中央席は2点式のシートベルトとなる。
日産 エクストレイル ラゲッジ
ラゲッジのフロアは二重になっており、引き出しも設けられている。工夫次第でさまざまな使い方ができるので、アウトドアレジャーでも便利だ。
日産 エクストレイル ラゲッジ
ラゲッジのフロアは完全にフラットになる。汚れたものや塗れたものを載せても簡単に拭き取れるのは、SUVとしてはうれしい配慮といえる。
日産 エクストレイル 17インチホイール
17インチのアルミホイールが標準装備となる。悪路の走破性だけでなく、街中などオンロードでの快適性も重視したタイヤが装着されている。
日産 エクストレイル 走り
日産 エクストレイル 走り
日産 エクストレイル 走り
日産 エクストレイル 走り
日産 エクストレイル 走り
日産 エクストレイル 走り

written by 松下 宏

代表グレード
日産 エクストレイル 20GT
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
4630×1785×1685mm
車両重量[kg]
1660kg
総排気量[cc]
1995cc
最高出力[ps(kw)/rpm]
173ps(127kw)/3750rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm]
36.7kg-m(360N・m)/2000rpm
ミッション
6速MT
10・15モード燃焼[km/l]
15.2km/l
定員[人]
5人
税込価格[万円]
299.985万円
発売日
2008/9/18
レポート
松下宏
写真
高木博史