【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】デモンストレーションを行う「トヨタ iREAL」

市販化を想定した現実的な造り

【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 に乗る松下 宏 氏

 トヨタはかねてから一人乗りのモビリティを目指して電動自動車の開発を進めてきた。過去のモーターショーに『PM』『i-unit』『i-swing』などの名前で出品してきたコンセプトカーがそれで、モーターショーのトヨタブースに足を運んだ人なら、これらの電動自動車がステージの上を走り回るシーンを見たことがあると思う。
 昨年の東京モーターショーに出品されたのが今回試乗した『i-REAL』で、リアルという名前が付けられたことからも分かるように、実際に市販することも想定した現実的な移動体としての開発が進められた。
 i-REALに実際に試乗した印象は、けっこう使えそうというものだった。i-REALはふたつの走行モードを持っていて、ひとつは人間がやや早めに歩く程度の速度、もうひとつは原付バイクと同じ時速30km程度で走るモードだ。実力的にはもっと速く走らせることが可能だが、原付バイクの条件に合わせることで市販を目指そうという考えのようだ。

【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 歩行モード
時速6km/hで歩行者と共存して走る「歩行モード」の場合、全長995mmと極めて短くなり、人の目線に近くなるのがこの写真でもわかるだろう。
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 走行モード
こちらは公道での走行を想定した「走行モード」の状態。車高が下がり、全長が1510mmまで延びることで走行安定性を高める。
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 歩行モード
歩行モードでゆっくり走らせてみる。電動車椅子やセニアカーとは違い目線が高いため、歩行者に埋もれることなく自然に溶け込むことが出来そうだ。

街に溶け込む走り「歩行モード」

【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 歩行モード

 i-REALはふたつの走行モードに応じて姿勢を変えることができるほか、もうひとつ乗降モードも持っている。全高をやや下げて腰掛けやすくするモードだ。このモードにすることで女性や子供などでも簡単に乗り込むことができる。
 歩行モードにすると、やや全高が高くなる。この状態では、普通の人が立つのに比べ、目線の高さが10cmほど低くなるという。まあ立った状態とさして変わらない高さと思ったら良い。現在までに市販されている電動車椅子やスズキのセニアカーなどは、低い椅子に腰掛ける形になるため、ほかの歩行者と目線の高さが違いすぎる。歩行者が車椅子に気づかずにつまづくような形になることもあるが、i-REALの高さならほかの歩行者の中に自然に溶け込むことができる。
 座った状態で両手に操作レバーのグリップを握り、走行ボタンを押すだけで走り出すことができる。操作レバーのグリップを前に押し倒すようにすると、ゆるゆると前進を始める。時速数�程度の速度だ。この歩行モードで走らせていると、気持ちとしてはもう少し速く走らせたい感じになるが、歩行者と同じ立場での移動を考えると、この程度の速度が適しているのだと思う。
 左右に曲がるのも同じ操作レバーのグリップを曲がりたい方向に倒すだけで良い。ごく自然な操作でカーブを曲がっていく。停止状態からグリップを倒せば、その場で回転することも可能だ。

【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 歩行モード
停止状態で手元の操作グリップを倒せば・・・
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 歩行モード
その場でグルリと回転させることも可能なのだ。
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 歩行モード
全長わずか1m弱のコンパクトな電動カー「i-REAL」。

すいすいと走る!「走行モード」

【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 走行モード(デモンストレーション)

 走行モードに切り換えると、前2輪、後1輪の前後のタイヤの間隔が開き、ホイールベースが500mm弱から1000mm強に延長される。これに合わせて全高が下がり、ヘッドレストが競り上がってくる。
 走行モードで操作レバーをいっぱいに倒して進むと、時速30km程度まで加速することができる。実力的にはさらに速く走れるだけの性能を持っているそうだが、原付バイクと同じ免許制度に適合させるには、30km走行が原則となる。
 今回の試乗ではこのモードで長い時間走らせることはできなかったが、インストラクターの走りなどを見ていると、かなりスムーズにすいすいと走っていた。
 カーブを曲がるときなども実にスムーズだったが、これはクルマの側が車速や操作レバーによるドライバーの意志を判断して、自動的に姿勢を傾けているためという。バイクは体重移動によって姿勢を傾けて走るが、それには一定の技量が必要となる。これに対してクルマが判断して姿勢を制御するi-REALでは、誰にでもスムーズな走りが可能だ。

【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」
シフトレバー代わりの操作ボタンは右側に配置。
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」
歩行・走行・乗降の各モード切替えは右側に。
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」
電動で自動収納されるヘッドレスト。

50万円以内の価格で販売か

【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 走行モード

 歩行モードと走行モードを持つことで、i-REALは電動車椅子としての機能と原付バイクとしての機能を合わせ持つものとなった。高齢者や身障者など、交通弱者となる人達にとって、移動の自由を確保するための有効な道具になりそうだ。
 トヨタでは原付バイクの免許制度の範囲内で、50万円以下の価格で売り出したい意向のようだ。免許はともかく、50万円だとまだ高いと思う。多くのユーザーが現実的な移動手段として選択肢にできるのは、せいぜい30万円が目安になるのではないか。今後、電池の性能が向上すると同時に、コストダウンも急速に進むはずで、そうなれば30万円という価格もリアリティを持ってくるのではないか。

【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 走行モード
iREALは前2輪(駆動輪)とリア1輪(操舵のみ)の3輪を配置。これが旋回時のブレーキングでも安定を保つレイアウトなのだという。
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 走行モード
走行モードでのコーナリング時には、自動的に姿勢が傾く仕組みが組み込まれる。誰でもスムーズな走りが可能なのだ。
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 走行モード
「これは使えそうだね!」と感想をもらす自動車評論家の松下 宏サン。30万円台での販売が普及の鍵になるとにらむ。
【トヨタ i-REAL(アイ・リアル) 試乗記】「トヨタ iREAL」 走行モード(デモンストレーション)

written by 松下 宏

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車名
トヨタ i-REAL(アイ・リアル)
ボディサイズ【歩行モード時】(全長×全幅×全高)
995x700x1430mm
ボディサイズ【走行モード時】(全長×全幅×全高)
1510x700x1125mm
駆動
インホイールモーター(前2輪)
バッテリー
リチウムイオンバッテリー
最高速度
歩行モード:6km/h 走行モード:30km/h
1充電走行距離
30km
レポート
松下 宏
Photo
CORISM編集部