燃費の悪い高級車は肩身の狭い時代
環境問題である二酸化炭素排出量だけではなく、ガソリン代が高騰し、燃費の悪いクルマに乗るのは喫煙するのと同様に肩身が狭くなってきた。 日本車を代表するクラウンにも、環境に優しいハイブリッド・シリーズが登場。外観はヘッドライトとリヤコンビネーションランプにブルーグラスを採用して、他のクラウンと区別したという事であるが言われないと分からない。一方メーターパネルはハイブリッド車専用のTFT液晶パネルとなり、パワースイッチを押すとクラウンのロゴが浮かび上がった後に、スピードメーターやパワーメーターが現れる。エコモードとスポーツモードでメーターパネル色が変わる芸の細かさがあるが、パネルデザインの新しさがもう少し欲しい。
GSとは大違いのスムーズな加速に驚く
通常の発進はモーターだけで動き出すため無音状態である。そのまま加速しているとエンジンがいつの間にアシストしている。段差の無い滑らかな加速が続き、エンジンの存在を忘れるほど静粛性が高い。エンジンのこもり音を打ち消す、アクティブノイズコントロールも静かさに貢献しているのだろうが、あまりに静か過ぎてロードノイズが一番耳障りであった。
どんなスピードでもアクセルを強く踏み込めば、予想したより強力な加速をする。3.5Lエンジンとモーターを合わせて345馬力もあるのだから速いのは当然であるが、静粛性を維持したまま加速Gを感じるのは不思議な感覚である。同じハイブリッドシステムのレクサスGS450hは暴力的な加速をしたが、こちらはクラウンに相応しいスムーズな加速で、洗練度はクラウンの方が優れている。
欧州車ファンの琴線には触れない乗り味・・・
運転席の本革シートは私の重い体重でもしっかり包み込み疲れが少ない。更に試乗車にはオプションのシートベンチレーションも付いており快適である。ハンドリングは良好で、後席に座るより自分で運転したいと思った。峠道を、しかも雨で滑りやすい路面でも他車をリード出来るペースで走れた。車両重量が1800kgをオーバーしているとは思えないほど軽々した動きで、FR車の素直な運動性能を楽しめる。整備された道路では感じなかったが、不整な路面を走行するとステアリングに感じるショックが大きくなり、乗り心地も急に悪くなる。リヤシートに座っても同様で、路面が悪いとサスペンションの硬さを感じる。全体の乗り心地としては昔ながらの懐かしいクラウンの乗り味と感じたが、一度欧州車の乗り味を覚えたユーザーを取り込むのは難しいだろう。
装備は“これぞクラウン!”と言える、先進性と実用性の高いものが用意されている。VDIMの車両制御システムにより、様々な条件下で車両を安定させる。レーンキーピングアシストやレーダークルーズコントロールも無くても困らないが、あれば運転のサポートになる。夜間走行に役立つナイトビジョンもオプションで選べる。クラウンに無いものは無いと言い切れるほどで、スイッチ類についても以前のトヨタ車より使いやすくなっている。
新世代ハイブリッドの完成度には大満足!
ハイブリッド車は日々進化して、レクサスLS600hから新世代になったと感じていたが、クラウン・ハイブリッドも同様で車としても完成度が高い。峠道と高速道路をハイペースで駆け巡りハイブリッドとしては不利な状況にかかわらず、燃費は常に10km/l以上はキープした。便利なオプション品を除いても車両価格が600万円以上(ガソリン車プラス100万円)で、環境に関心のある富裕層しか購入できないのが一番の欠点だろう。ガソリン車と同価格帯にまでコストダウンされる日が早く来るのを期待したい。