資源・環境の時代背景に加えてガソリン価格が高騰しているご時世に、ハマーは完全に背を向けているクルマといえる。
完全な軍用車であるH1に比べたら、H3は普通のSUVに近い存在だろう。しかし、それでもボディの大きさと迫力、また走破性の高さなどは、軍用車をルーツとするハマーならではのものがある。

この記事の目次 CONTENTS
達人「松下 宏」が斬る!
存在感たっぷりの個性的なルックスと走りが魅力!
ハマー H3のエクステリア&インテリア
オフロードでこそ真の実力が発揮される!
エンジンは大きくパワフル、内装はシンプルに
ハマー H3のスペック情報

ライター紹介

自動車評論家

松下 宏 氏

中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。 誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。

達人「松下 宏」が斬る!

達人「松下 宏」が5つの評価軸を用いてクルマを評価いたします。

存在感たっぷりの個性的なルックスと走りが魅力!

ボディサイズはとにかく大きい。全長は4705mm、日本の5ナンバー規格からわずか5mmはみ出しただけだ。しかし全幅は1995mmと、ほとんど2mに近いこのワイド感は相当なものだ。

全高も1920mmと、2mに近い高さとなっている。最小回転半径の数字は5.7mなのでそれほど大きなものではないが、ボディが大きいだけに取り回しが良いとはいえない。

運転席に乗り込むには、サイドステップを使ってよじ登る感じ。実際には、乗り込むときよりも降りるときのほうが大変で、ステップを使って階段を下るような感じになる。

重量級のボディをグイグイと走らせる見事なエンジン

ハマーH3には、2008年6月にV型8気筒エンジンを搭載するモデルが追加されたばかりだ。
今回試乗したのは、従来から用意されている直列5気筒の3.7Lエンジンを搭載したモデル。ハマー用に開発された最新のエンジンで、VVT機構を備えたDOHC仕様だ。

ハマーH3は大柄なボディのため、車両重量も重く、2200kgを超える。
このエンジンの動力性能は245ps(180kW)/33.5kg-m(328N・m)の実力があり、重量級のボディをグイグイと走らせることが可能だ。
吹き上がりもかなり軽快で、アクセルを踏み込めばレッドゾーンの手前まで力強く吹き上がっていく。4速ATなので変速ショックは大きめだが、堂々とした感じの走りを味わえる。

ハマー H3のエクステリア&インテリア

全長こそ短いが、約2mもの全幅は迫力十分だ。角張ったデザインはいかにもハマーらしいもので、悪路走破性の高さを連想させてくれる。

張り出した前後フェンダーや背面タイヤなど、SUVらしさを強調したルックスが最大の特徴だ。切り詰められたオーバーハングもそれらしい雰囲気がある。

オフロード走行用の16インチタイヤ&ホイールを装着している。街中での乗り心地は今ひとつだが、悪路の走破性は想像以上に高い。

3.7Lエンジン搭載モデルは、右ハンドルの選択も可能。インパネの質感は乗用車並みだが、デザインはいかにもSUVらしい力強いデザインだ。

ドリンクホルダーなど小物の収納スペースも確保され、実用性も兼ね備えている。本革シートの質感も上々で、高級感を感じさせてくれる。

全長はほぼ5ナンバーサイズだが、足元のスペースや頭上の空間には余裕がある。全幅が2m近いだけに、横方向の広さは文句なしのレベルだ。

オフロードでこそ真の実力が発揮される!

少し硬めの味付けがなされた足回りは、街中では特に乗り心地が良いとはいえない。
しかし、オフロードに持ち出したときには、しっかりした走りが可能になると思われる。

足回りが硬めな割には、ステアリングは柔らかめのフィールだ。高速道路ではもう少し手応えが欲しい感じもある。

やはり基本的な走破性のレベルが高いH3

今回の試乗では、東京プリンスホテルの駐車場に特設された、スチールマウンテンの上り下りを試した。ハマーH3は、6mほどの高さまで、30度の勾配があるコースを余裕で走らせることができた。

坂道で発進をサポートするヒルスタートアシストや、下り坂での速度を制御するヒルデセントコントロールといった最新機構を備えているわけではない。
しかし、H3は基本的な走破性のレベルが高いので、これくらいの走りは楽々といった感じだった。

ただし、急坂を上っていくときには空しか見えなくなるし、逆に下りではお尻がずり落ちそうになり、なかなか大変な思いをしながら試乗した。これだけの実力を持つH3ならでは、といった感じの走りだった。

最初に書いたように、ハマーH3は時代に即さないクルマであるのは確かだ。しかし、この迫力あるボディを求めてハマーH3を買う人は案外多いだろう。見るからに分かりやすいクルマであることが、ハマーH3が人気を集める理由だろう。

購入は駐車場事情なども考慮した上で

ハマーH3ラグジュアリーの価格は、600万円弱の設定となっている。
価格的に簡単に手の届くクルマではないだけでなく、駐車場事情などもハマーH3のサイズに対応できないと買えない。購入するときには、良く出かける先の駐車環境なども考慮した上で買うことだ。

エンジンは大きくパワフル、内装はシンプルに

5.3LのV8エンジン(写真)が新たに追加された。しかし、従来からの3.7L直5でも、重量級のボディをものともせずに走らせるだけの実力は備えている。

ミッションは4速ATだ。変速ショックは大きめだが、豪快なハマーらしい走りが味わえる。ただし、燃費は決していいとは言えない。

シンプルで、実用性を重視したデザインのメーターを採用している。文字盤は大きくとても見やすく、オフロード走行時でも数値を読み取りやすい。

最新式のカーナビを装備している。装着位置が低いのが気になるが、使い勝手はとてもいい。
エアコンのスイッチも操作がしやすく、好印象だ。

ラゲッジスペースの広さは、十分確保されている。フロアが樹脂製なので、濡れたものや汚れたものを積み込んでも、簡単に拭き取ることができる。

後席を倒せば、驚くほどの広いスペースが現われる。ただし、段差ができてしまうのが残念なポイント。長尺物の収納には気を遣うかもしれない。

ハマー H3のスペック情報

ハマー H3 ラグジュアリー

代表グレード ハマー H3 ラグジュアリー
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4705×1995×1920mm
車両重量[kg] 2220kg
総排気量[cc] 3653cc
最高出力[ps(kw)/rpm] 245ps(180kw)/5600rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 33.5kg-m(328N・m)/4600rpm
ミッション 4速AT
10・15モード燃焼[km/l] 6.4km/l
定員[人] 5人
税込価格[万円] 599.4万円
発売日 2008/7/4
レポート 松下宏
写真 和田清志