ザ・対決 日産 エルグランド VS ホンダ エリシオン
フルサイズミニバン編
日産 エルグランド vs ホンダ エリシオン

 トヨタのアルファードが2代目となり、新型へとスイッチしたことで、激戦の様相を呈してきたのが、フルサイズのミニバン。価格的にももはや立派な高級車といっていい。車種自体は多くないものの、トヨタ、日産、ホンダが力を入れて開発を行ない、まさに三つ巴の状態となっている。このクラスともなると、パッケージングと走り、そして装備を高いレベルで両立させなくてはならないのが特徴となる。今回は、日産のエルグランドとホンダのエリシオンをピックアップ。エルグランドといえば、元祖ファーストクラス、フルサイズミニバンの先駆けとして、モデル末期となった今でも人気は衰え知らず。一方、ホンダのエリシオンは3モデルのなかでは後発となるが、お馴染みの低床・低重心プラットフォームを採用するなど、走りにも力を入れている。じつにホンダらしい味付けのモデルだ。アルファードの購入の参考としても、気になるその結果だ!

PHOTO/佐藤靖彦 構成・文/近藤暁史
モデル/

ROUND1:ファーストインプレッション

日産 エルグランド
日産 エルグランド
日産ならではの押しの強さ
使い勝手も着実に進化

 2002年の登場以来、日産だけでなく、日本のフルサイズミニバンの代表格として君臨してきたエルグランド。日産本来のイメージである、押しの強さを全身で表現しており、強烈な存在感を放っている点が人気の秘密だろう。しかもモデル末期にも関わらず、人気も衰え知らずといっていいほどだ。とくに内装は、ファーストクラスと呼びはじめた先駆者だけに、高級感に抜かりはなし。とくにセカンドシートはゆったりとしたサイズが確保されているだけでなく、座り心地や足もとなど各部のクリアランスも十分で、掛け値なしで快適なドライブを楽しむことが可能。また3列目についても造りもよく余裕たっぷりで、フルサイズの恩恵に預かっている部分といっていいだろう。エンジンは2.5リッターと3.5リッターの2タイプが用意されている。どちらもV6というのもミニバン唯一のFR駆動と相まって、高級な走りという点でアドバンテージをもつ。ただし、ワインディングなどでは、高い車高や2トン近い重量もあって、ロールはけっこうきつい。キャラクターを考えると攻め込むタイプではないので、大きな問題とならないはずだ。あくまでも似合うのはクルージングで、大人7人が快適に長距離を移動できるという、まさにファーストクラスの名に恥じないのが持ち味。2007年10月に行なわれた一部改良では、フロントグリルを2段としてさらに押し出しを強くするとともに、内装の質感もアップさせている。世界初となる「アラウンドビューモニター」も採用され、取り回しも楽になった。

[エコ&燃費]
 エンジンは今となっては古い部類のVQ型となるだけに、遜色はけっこうある。車両重量/パワーなどを考えると、ヒトケタ中盤の燃費も仕方がないが、このご時世つらいのは確かだ。燃費基準も2.5リッター・FRの+10%が最高というのはつらいところ。排ガスも「平成17年基準排出ガス50%低減レベル」に止まる。

[安全性能]
 重量級だけに、前後の制動力を最適化するEBDやブレーキアシストは標準で装備されるが、横滑りを防止するVDCは3.5リッターモデルにメーカーオプション。2.5リッターでは設定はなく、緊急ブレーキ対応型のプリクラッシュシートベルトやインテリジェントブレーキアシストも同様となるのは少々残念なところ。ちなみに2列目/3列目中央席のシートベルトも2点式となる。モデル的に古いからというのがその理由だろうが、人命にもつながる点だけに配慮が欲しいところ。

[取材時実測燃費]
5.6km/l

[エルグランド価格帯]
346.5〜438.9万円

ホンダ エリシオン
ホンダ エリシオン
ホンダらしさを演出しつつも
後発の強みを活かし切れず

 エルグランド、そしてアルファードに続いて、ホンダがフルサイズクラスに送り込んだのがエリシオンだ。もちろんホンダ自慢の低床・低重心ボディを採用して走りのよさをアピール。最上級グレードとして、国産ミニバン最高スペックの300馬力を誇る3.5リッターV6搭載のプレステージも用意され、ホンダらしさを存分にアピールしている。
 ただし、ミニバンの命であるパッケージングについてはエルグランドやアルファードと比べるとかなり遜色があるというのが正直なところ。そもそものボディサイズが2車と比べて小さく、ひと回りほどは違うだけに、比較されるのはつらいところ。ただし、後発ながら小さいというのは明らかなミスといっていいのではないだろうか。確かに走りはよく、最初に紹介したプレステージは別格としても、2.4リッター/3リッターともに軽快で上までキッチリと回る味付けだし、フィーリングもかなりシルキーでさすがはホンダと関心するほど。重心の低さも手伝って、コーナーでも意外な踏ん張りを見せる。
 デザイン的にはマイナーチェンジでフロントマスク&テールまわりのデザインを大胆に変更。元々個性が足りなかったのが問題で、個性を演出したかったのだろうし、販売的にもてこ入れのはずが、取って付けた感が強まってしまい、相変わらず不振から抜け出せずにいるのは事実。内装の質感も上々で、ライバルと比べて小さいといってもスペース的にはゆったりだけに、残念なところだ。


[エコ&燃費]
 エンジンは2.4リッターが4気筒で、それ以外はV6。エンジンのホンダということに加えて、新しいユニットでもあるだけに、星4つを獲得しているなど、不満はない。また燃費についても、2.4リッターでは10km/lを超える数値を出しており、重量級であることを考えると文句なしといっていいだろう。とくに高速巡航での燃費はいい。

[安全性能]
 安全性に力を入れているホンダだけに、横滑りを防止するVSAは3リッターには標準装備されるのは立派。ただし、2.4リッターには設定すらないのは残念なところ。サイドカーテンエアバッグは上級グレードのみにメーカーオプションだ。衝突安全性自体は、歩行者保護も含めてボディ形状からしっかりと開発している。

[取材時実測燃費]
7.2km/l

[エリシオン価格帯]
280.35〜451.5万円

250ハイウェイスター ブラックレザーエディション
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4835×1815×1910mm
車両重量
2030kg
エンジンタイプ
V型6気筒DOHC
総排気量
2495cc
最高出力
186ps(137kw)/6000rpm
最大トルク
23.7kg-m(232N・m)/3200rpm
ミッション
5速AT
10・15モード燃費
8.6km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/マルチリンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格
325.5万円
プレステージ S HDDナビ スペシャルパッケージ
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4920×1845×1790mm
車両重量
1830kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHC
総排気量
2354cc
最高出力
160ps(118kw)/5500rpm
最大トルク
22.2kg-m(218N・m)/4500rpm
ミッション
5速AT
10・15モード燃費
10.2km/l
サスペンション(前/後)
ダブルウィッシュボーン/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
329.7万円
日産 エルグランド 2.5リッターエンジン

エンジンは2.5リッター(写真)と3.5リッターの2種類を用意している。2.5リッターもV6となるのは他のライバルにはない特徴といえる。

日産 エルグランド 17インチホイール

ハイウェイスターはスポーティなデザインのホイールを装着。乗り心地はソフトで快適だが、コーナーでのロールはやや気になるポイントだ。

ホンダ エリシオン 2.4リッターエンジン

エリシオンは2.4リッター、3リッター、そして3.5リッターエンジンを搭載している。2.4リッターでも十分な動力性能を発揮するのは魅力だ。

ホンダ エリシオン 17インチホイール

スポーティな17インチホイールを装着する。プレステージの3.5リッターは18インチとなるが、快適性とハンドリングのバランスはとてもよい。

日産 エルグランド インパネ

木目調のパネルを多用するなど、フルサイズミニバンらしい高級感は十分。ナビの画面はドライバー側に向けられるところなどはとても特徴的だ。

日産 エルグランド シフトレバー

5速ATはショックもなく滑らかな走りを実現している。ただ、燃費などの面では6速ATやCVTに劣るのは否定できない部分といえる。

ホンダ エリシオン インパネ

高級感の中にもスポーティさをプラスしたいかにもホンダらしいインテリア。ただ、左右のウォークスルーができないのはやや残念なポイントだ。

ホンダ  エリシオン シフトレバー

ミッションはエンジンとのマッチングも良好で、スムーズでダイレクト感のある走りが味わえる。燃費も優れており、経済性も高いのは魅力だ。

日産 エルグランド フロントシート

ブラックのレザーは手触りもよく高級感たっぷり。シートのサイズも十分確保されているので、快適なドライブを楽しむことができる。

日産 エルグランド セカンドシート

エルグランドのセカンドシートはスライド量も大きく、とても広々とした印象。オットマンも装備しているので、長距離ドライブでも快適に過ごせる。

ホンダ エリシオン フロントシート

セダンのようなセンターコンソールがあるため左右のウォークスルーができない。スペース的には十分で、運転席からの視界もよい。

ホンダ エリシオン セカンドシート

写真の7人乗り仕様はサイドの張り出しが大きく、サポート性の高いシートを装備している。足元や頭上のスペースも文句なしの広さを確保する。

日産 エルグランド サードシート

さすがにフルサイズのミニバンらしく、サードシートでも大人が余裕を持って座れるだけのスペースを確保している。クッションも厚みがあり快適だ。

日産 エルグランド メーター

メーターはシンプルなデザインでとても見やすい。デビュー時期が古いということもあり、インフォメーションディスプレイは装備していない。

ホンダ エリシオン サードシート

サードシートはクッションも十分あり、快適に移動できる。また、きちんと3点式のシートベルトを備えているのも見逃せない美点といえる。

ホンダ エリシオン メーター

オデッセイなどにも共通するイメージのメーターは、独特の立体感があり近未来的なデザインといえる。視認性がとてもいいのも魅力的なポイントだ。

日産 エルグランド ラゲッジ

フル乗車時でもそれなりのラゲッジスペースを確保している。開口部も広くとられているので、大きな荷物の出し入れも容易に行なえる。

日産 エルグランド ラゲッジ

サードシートを収納しセカンドシートも前方にスライドさせれば、広大な空間が現われる。かなり大きなものも積めるので使い勝手はとてもいい。

ホンダ エリシオン ラゲッジ

エリシオンのラゲッジスペースはエルグランドに比べてやや狭めな印象。だが、フロアは低いので重いものでも比較的楽に積み込むことが可能だ。

ホンダ エリシオン ラゲッジ

7人乗り仕様ということもあり、ラゲッジの使い勝手は今ひとつ。2/3列目を前方にスライドさせるだけなので、スペースもあまり広くできない。

日産 エルグランド vs ホンダ エリシオン

日産 エルグランドは車重が重いということもあり、2.5リッターモデルでは高速走行時など、やや力不足な印象を受ける場面もある。だが静粛性は高く、長距離移動でも疲労感は比較的少なめ。対するホンダエリシオンは、独自の低床低重心プラットフォームのおかげもあり、軽快なハンドリングが楽しめる。車重もボディサイズの割には軽いので、2.4リッターモデルでも満足できる走りを味わえる。