スバル レガシィ ボクサーディーゼル搭載車  画像 エクステリア フロント

世界初!水平対向4気筒DOHCディーゼルターボ

 地球の温暖化を防ぐために自動車がしなければならないこと、それは燃費性能を高めることだ。燃費がよければ、地球温暖化の元凶とされるCO2(二酸化炭素)の排出量を抑えることができる。ヨーロッパでディーゼルエンジンが持てはやされているのは、Co2削減に効果があるからだ。が、石原慎太郎都知事の会見以来、日本ではディーゼルが悪者扱いされ、姿を消していた。しかし、背に腹は変えられない、日本の自動車メーカーも遅ればせながら新世代ディーゼルの開発に乗り出してきた。
 富士重工は世界で初めて水平対向4気筒DOHCディーゼルターボの量産化に成功し、春からヨーロッパ市場に投入している。エンジン型式は「EE20」だ。ガソリンエンジンのEJ20型と共通するところはほとんどない。シリンダーブロックからシリンダーヘッド、ピストン、動弁駆動系に至るまで新設計とした。ボア、ストロークともに86.0mmのスクエアタイプで、総排気量は1998ccになる。ディーゼルエンジンとしては異例にコンパクトだ。また、エンジン重量も軽い。

スバル レガシィ ボクサーディーゼル搭載車 画像 エクステリア サイド
スバル レガシィ ボクサーディーゼル搭載車 画像 エクステリア フロント
スバル レガシィ・アウトバック ボクサーディーゼル搭載車 画像 エクステリア フロント
スバル ボクサーディーゼルエンジン 画像
スバル ボクサーディーゼルエンジン 画像
スバル ボクサーディーゼルエンジン 画像

驚くべき静粛性と加速の実力!

 このEE20型は電子制御によるアキュームレーターと高精度インジェクターによるコモンレール式の直噴ディーゼルである。これに可変ノズルの付いたIHI製ターボチャージャーを組み合わせた。ユーロ4排出ガス規制に適合させ、最高出力は110kW(150ps)/3600rpm、最大トルクは(350N・m(35.7kg-m)/1800rpmだ。トランスミッションは5速MTである。
 驚かされたのは、アイドリング時の静粛性だ。バランサーシャフトはないが、ガソリンエンジン並みに低振動で、ディーゼルエンジン特有のガラガラ音も車内にいる限り耳障りではない。同クラスのヨーロッパのディーゼルエンジンと比べても静かで振動が小さかった。思い切り加速すると、レッドゾーンの4800回転まで難なく到達する。約50km/hで2速ギアにシフトアップし、3速ギアには約85km/hでバトンを託した。ハイギアードなギア比に改め、ショートストロークにした5速MTは小気味よいシフトフィーリングだ。
 ガソリンエンジンほど瞬発力は鋭くない。だが、低回転から厚みのあるトルクを発生し、力強い加速を披露する。実用域において湧き出すような力強いトルク感を味わうことができたが、アイドリングからちょっと上の、ターボが威力を発揮するまでの回転域では加速が緩慢だ。3速ギアなどでシフトダウンせずに、そのまま再加速しようとすると低回転ではモサッとした加速になってしまった。そこから先は軽快な加速感だ。V6ディーゼル並みにスムースで、加速したときでも静粛性は高かった。ちなみに100km/hクルージングは5速ギア1900回転でこなす。その気になれば200km/hオーバーで走れる実力派だ。

日本での発売に期待!

 ディーゼルエンジンを積むクルマの多くは、ハンドリングがダルで面白くないが、レガシィのディーゼル車は鼻先が軽く、軽快な身のこなしを見せた。オールシーズンタイヤを履くアウトバックでもキビキビと走る。電動パワーステアリングはフリクションを感じさせないし、操舵フィールも正確で好ましいものだった。
 が、手放しでは喜べない。今のままでは日本の公道を走れないのである。最大の難関は超のつく厳しさの日本の排出ガス規制だ。09年からはNOx(窒素酸化物)とPM(微粒子黒煙)の排出量を一段と厳しく規制する「ポスト新長期規制」がスタートする。これと同等以上の厳しさの規制が北米のTier2BIN5規制だ。この2つの難関をクリアしないと正式発売は無理なのである。富士重工は六連星を掲げているのだから、環境対策で4つ星も取れないようじゃ話にならない。
 また、現在は5速MT車しか設定はないが、日本で売るときはAT車の設定は不可欠である。5速ATやCVTによる2ペダルモデルを設定しないと日本や北米では売りづらい。当然、コストはかさむから販売価格はガソリン車より高くなる。ヨーロッパではガソリン車の約1割アップだ。元を取るには10万km以上走る必要がある。果たして日本のユーザーは新世代のディーゼル車に理解を示してくれるだろうか? 難問が山積しているが、これらを打破して早い時期に日本のユーザーに水平対向ディーゼルを発売することを期待したい。

スバル ボクサーディーゼルエンジン 画像
スバル ボクサーディーゼルエンジン 画像
スバル ボクサーディーゼルエンジン 画像
スバル レガシィ・アウトバック ボクサーディーゼル搭載車 画像 エクステリア フロント
エンジン
EE20(ボクサーディーゼル)
排気量[cc]
1998cc
最高出力[ps(kw)/rpm]
150ps(110kw)/3600rpm
最大トルク[kgf-m(N・m)rpm]
35.7kgf-m(350N・m)1800rpm
CO2排出量[g/km]
148g/km(セダン)
圧縮比
16.3
ボア×ストローク[mm]
86.0×86.0mm
燃料噴射システム
コモンレール式
エンジン全長[mm]
353.5mm
新車見積もり
希望しない電話は一切なし
2日以内のスピード回答
よくわからない諸費用を含めてお見積もり
新車見積もりはこちら

 

関連記事はこちら

日本にディーゼルは必要か!? スバル ボクサー(水平対向)ディーゼルエンジン疑心試乗!

【新車情報】  written by 大岡 智彦 (2008.05.04)

最近、世の中ディーゼル、ディーゼルとエンジン音のごとく少々騒がしい。環境問題は重視しなくてはならないが、日本にはディーゼルエンジンなんて、あんまり必要ないんじゃないの? >> 記事全文を読む


【スバル レガシィディーゼル 欧州試乗記】スムースさは桁違い!? 新水平対向ディーゼルエンジンは○か×徹底検証!!

【新車情報】  written by 国沢光宏 (2008.02.15)

スバルの秘密兵器の1つといわれている水平対向ディーゼル、その実力を達人国沢が斬る! >> 記事全文を読む


【ジュネーブショー2008】スバル レガシィにディーゼルエンジン搭載!走りと環境を両立し快適性・静粛性も実現した「レガシィ/アウトバック2.0D」欧州導入

【新車情報】 (2008.03.05)

スバル レガシィ/アウトバック2.0Dは、スバルボクサーディーゼルと、スバル独自の左右対称パワートレーンであるシンメトリカルAWDと組み合わせることで、走りと環境の両立に加え、ディーゼルとは思えない快適性、スポーティーさ、優れた静粛性を実現している。 >> 記事全文を読む