新しいA4は取りあえず2グレードが設定された。1.8TFSIには、1.8Lの直噴ターボ仕様のエンジンとマルチトロニックと呼ぶCVTが組み合わされ、FF方式を採用する。3.2FSIクワトロはV型6気筒3.2Lの自然吸気直噴仕様のエンジンが電子制御6速ATと組み合わされて搭載され、フルタイム4WDの駆動方式を採用する。
新型A4に乗り込むときに感じるのはサイズ感だ。1825mmの全幅は従来のモデルから見れば左右3cmずつの拡大に過ぎないとは言うが、やはり大きくなった印象は強い。高速道路などを運転しているときにはさほど苦にならないものの、車庫入れなどのときには神経を使うし、タワーパーキングなどでは入れないケースも出てくる。
最初に試乗したのは1.8TFSIで、1.8Lの直噴DOHC+インタークーラー付きターボによる160ps(118kW)/25.5kg-m(250N・m)の動力性能を得ている。排気量は1.8Lながら2.4Lから2.5L並みの動力性能を持つモデルである。発進時にやや唐突感を感じるくらいの力強さがあり、低速域からトルク感のある走りが得られるのが特徴。
マルチトロニックは8段変速のマニュアルモードが設定されているが、さすがに8速ものをギアを使い分けられるような状況にはなりにくい。せいぜい6段か7段で良かったのではないか。
市街地から高速クルージングまで、全体に静粛性が高まったのが今回のA4で、走行中に聞こえるのはロードノイズとわずかなCVTの機械音くらい。Cd=0.27という空力特性が貢献してか、風切り音は良く抑えられている。
3.2FSIクワトロには、オプションでアウディ・ドライブ・セレクトが装備される。これはインパネ上のモード選択ボタンを押すと、エンジン特性、ATの変速スケジュール、ステアリングの操舵フィール、サスペンションの減衰力などが、コンフォート、オート、ダイナミックの3モードに切り換えられるもの。
さらにインディビジュアルというモードもあって個人の好みでチューニングできる余地もあるが、いずれにしてもコンフォートとダイナミックを切り換えると、それなりにメリハリの効いた走りの違いが感じられる。
動力性能については余裕十分。A4のボディに265ps(195kW)/33.7kg-m(330N・m)のV型6気筒エンジンというのは、過剰なくらいの動力性能だ。ATを積極的にシフトダウンしたときに一瞬の空走感を感じるシーンもあったが、全体的な変速フィールは悪くない。
コンフォートモードで操縦安定性はスポイルされていないし、ダイナミックモードでも乗り心地は悪くないが、1.8TFSIに比べると全体に硬めでしっかりした感じの乗り味となる。ダイナミックにしたときには、キビキビした感じの操舵フィールに特に好感が持てた。
●お勧めグレード
1.8LのFFか、3.2Lのクワトロかという選択はやや究極の選択を迫られるようなところがある。アウディといえば、クワトロに特徴があるのだから、できれば1.8Lエンジンにクワトロを組み合わせたモデルを設定してほしいところ。さらにそのステーションワゴン版が一番のお勧めモデルになりそうだ。
1.8TFSIと3.2FSIクワトロでは価格差も大きすぎて単純な比較にはならないが、今の時点で買うなら1.8TFSIのほうだろう。ただ、いずれにしてもサイズが大きくなった点には注意して選ぶ必要がある。