マツダRX-8

達人「国沢光宏」が斬る!

マツダ RX-8評価

国沢光宏

職業:自動車評論家
歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

馬力ダウンは勇気ある決断!

マツダRX-8

 普通、フルモデルチェンジやマイナーチェンジすると最高出力は向上する。しかしRX-8の場合、250馬力から235馬力に下がってしまった。「あらら?」と思った人も多いんじゃなかろうか。なぜパワーを落としたのだろう。

 実はこの流れ、アテンザから始まってます。モデルチェンジで排気量を2.3リッターから2.5リッターに上げながら、最高出力を低くしてきたのだ。なぜか? カタログデータより実用性能を重視したからに他ならない。

 具体的に書くと、中低速トルクを厚くし燃費や乗りやすさの向上を狙ったワケ。加えてハイオク仕様からレギュラーガソリン仕様に変更。お財布にも優しくなっている。

 RX-8が登場した03年を振り返ると、当時はまだ「カタロク上のスペック」にこだわるユーザーも多かった。加えて「ローターリーエンジンの復活」という意気込みや、S2000(RX-8のロータリーもレシプロ換算すると2リッター級)に負けたくないといった思いも強かったことだろう。半ば強引にS2000とイーブンの250馬力を絞り出したんだと思う。

 その後ユーザーの価値観が大きく変化。今やスポーツモデルですら、スペックよりも燃費やフィーリングを重視する時代になってきた。興味深いことにライバルだったS2000も、2.2リッター化で最高出力を下げています。

 このような意識改革、以前から「スペックより実際の性能を向上させて欲しい」と主張していた私からすると大歓迎だ。考えてみれば、ヨーロッパ車ってスペック見ると日本車に劣ってるのに、乗り比べたら日本車より元気に走る。「数字より実用性が重要」ということを、ついに日本のメーカーも認識し始めたのだろう。

RX-8 Type RS インテリア
インテリアは、ステアリングのデザイン変更が目立つ程度
RX-8 TypeRS シート
追加されたType RSはレカロシートが標準装備となる
RX-8 Type E インテリア
ラグジュアリーグレードのType Eには本革シートが奢られる

楽しさは相変わらず、でも乗り味はググッと上質に!

マツダRX-8

 乗るとどうか? ハイパワー仕様(6速MTのみの設定)で印象深かったのが乗りやすさ。スタート時のクラッチミートからして容易になったし、マイナーチェンジ前よりも常時1速高いギアで走れる感じ。気になる絶対的な速さは、最高出力が下がった代わりに有効なパワーバンドは広がっており、以前と何ら遜色なし。

マツダRX-8 エンジンルーム

 ファンの多いロータリーエンジンのフィーリングもエンジン自体の煮詰めが進んできたらしく、もはや「気持ちいいっす!」としか言いようがないほどのレベルに仕上がった。

 テストコースでハンドリングもチェックすると、以前から高く評価されていたコーナリングスピードや「操る楽しさ」といった部分は従来通り。その上で操作に対する正確さや質感が大幅に向上している。

 なぜ良くなったか? 大きな要因はボディの強化だろう。マツダは以前から優れた軽量化のノウハウを持っていたのだが、スポーツモデルになると「徹底的に軽くする」という気持ちが出過ぎてしまう。結果、ボディのガッシリ感まで削ぐことに。

 マツダのエンジニアも「車重を重くせずに、剛性感を高めたい」と感じていたらしく、マイナーチェンジでサスペション取り付け部の板厚アップなど“局部”の補強を実施(ほとんど車重の増加にはつながらない)。今まで同乗者から文句の多かった乗り心地もかなりマイルドなものに変わっている。

 19インチタイヤを履く追加グレードのType RSはビルシュタイン製ダンパーの効果もあって、ファミリーカーとして問題なく使えるほど。また、耐久性を重視した日本製ダンパーを使うTypeS(18インチタイヤ)の乗り心地も、「スポーツモデルと見れば納得できるレベル」まで改良されている。

マツダRX-8 19インチホイール
Type RSのホイールは19インチ、フロントサスクロスメンバーの剛性アップも行われている
マツダRX-8 6速MT
ロードスターと同じマツダ内製となった6速MT、ギア比の変更やシフトフィールの向上にも注目
マツダRX-8 6速AT
6速ATはマニュアルモードへの切り替えなしでも、ステアリングスイッチの使用が可能になった点が目立つ
マツダRX-8 走り
マツダRX-8 走り
マツダRX-8 リアビュー

 久しぶりにRX-8のハンドルを握ってみたが、やっぱり楽しい。あまり売れているクルマじゃないものの、もし興味があるならこの機会に味見してみたらいかがだろう。