屋根が無くてもポルシェはポルシェだった!
すっかり、静かになり乗りやすくなったポルシェ911であるが、スポーツカーではないと否定する人はいないだろう。今回はその911シリーズで一番オシャレな911Sカブリオレ・5速ティプトロニックS(AT)を試乗した。
最近のオープンカーは耐候性、静粛性を重視しハードトップのバリオルーフを採用する傾向にある。911は車両重量の増加及び重心が高くなることによる運動性の低下を嫌い、ソフトトップを採用した。理屈で言えばそれがソフトトップの採用理由だろうが、エレガントな実車を見ると「そんなの関係ない」。私は911カブリオレに乗るのは、ドイツで1週間借りたのに続き、これで2回目である。ポルシェを乗ると思うだけでも気分は高揚する。
試乗日の気温は10℃以下と寒かったが、迷わずにコンソールのスイッチを押しルーフを開けてスタートした。電動ソフトトップ機構は時速50km以下であれば、走行中でも開け閉めが可能で、約20秒という短時間で動作が終了する。開閉が簡単なので気持ちの良いオープンにして走る機会も多くなるだろう。ウインドデイフレクターを装着すると後ろからの風の巻き込みは軽減され、アウトバーン120km/h走行でも快適だった。200km/hでの高速巡航も可能だったが音だけは容赦なく耳に届いた。当然日本の法定速度ではルーフを開けても余裕だが、雪が舞う試乗日ではシートヒーターを入れても寒くなってきた。冬に気持ち良く走るには帽子はあったほうがいいだろ。
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五感に響く気持ちよさがポルシェの真髄!
オープンボディとはいえボディの剛性は高く、クーペと比べても遜色はない。ソフトトップの開けるとAピラーの振動が収まらないクルマが多いが、このカブリオレはそんな様子は全くない。ニュルブルクリンクの北コース走行時でも、少し走るだけで剛性の高さを実感した。数カ所あるジャンピングスポットでもボディのヨレもなくピタと路面に貼り付くように接地する。最新の911に乗っていつも感心するのが、コーナー進入時にFR車の様にスムーズにフロントが入っていく事である。そして高速加速時でもドッシリした安定性は、あたかも重いものがフロントに乗っているかのようである。勿論、RRの美点であるトラクションとアクセルコントロールによる旋回の自由度は維持したままで、ニュルブルクリンクやアウトバーンの高速走行も安全に楽しめた。
カレラでも3600ccで325PSもあるのに、カレラSの3800cc、355PSのエンジンパワーは1570kg(テイプトロニック車)には十二分で、アクセルを踏んでいるだけで5.4秒後には時速100kmに達する。このエンジンの美点は高回転になればなるほど元気になり、数字以上の速さを感じる。911を運転するとスポーツカーは絶対的な性能だけではく、五感を気持ち良くさせるものだと再確認させられる。
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1台で2度おいしいカブリオレ、欲しい!!!
唯一の欠点はオートマチックミッションである。5速しかなく、ステアリングに付いたロッカースイッチでのギヤシフトはスポーツ走行では使い難く、パドルシフトが欲しかった。そうは言っても私が都内で乗るならティプトロニックSを迷わず選ぶだろう。
911カレラSカブリオレは実用性の高いスポーツカーに、優雅なスタイルを持ち合わせていて乗れば乗るほど欲しくなるクルマである。車両価格は1545万円と、とても高価であるがルーフを開けた時の周囲の自然との一体感と、閉めたときの独特のスポーツ感を、一台で味わえるだから、二台分の価格と考えれば安いのかもしれない。そんな理由で、いつかはポルシェ!!
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モデル名
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911カレラ Sカブリオレ <5速ティプトロニックS(AT)>
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ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高)
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4425×1810×1300mm
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排気量[cc]
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3824cc
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最高出力(EEC)
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261kW(355PS)/6,600rpm
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最大トルク(EEC)
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400N・m/4,600rpm
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ミッション
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5速ティプトロニックS
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税込価格[万円]
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1482万円
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