新型マツダアテンザ スポーツ&スポーツワゴン

達人「国沢光宏」が斬る!

マツダ アテンザ 評価

国沢光宏

職業:自動車評論家
歯に衣を着せぬ原稿で、なにかと話題の自動車評論家。歯切れの良い文章も分かりやすく、多くのファンをもつ。カートップやベストカーなど、多数の自動車雑誌に寄稿するだけでなくWRCなどのTV解説まで幅広い活動を行なっている。

ハード面は文句ない完成度!

新型マツダ アテンザ

 新しいアテンザ、昨年の秋にフランスでハンドルを握った時も、今回沖縄でハンドルを握った時も、正統派の良いクルマだと感じた。カタログとかコマーシャル用の文章を書くならメチャクチャ簡単です。高く評価できるポイントをたくさん持っており、そいつを少しづつ取り上げていくだけでスペースが一杯になるからだ。

新型マツダアテンザ エンジンルーム

 例えばエンジン。排気量を200cc拡大しながら最高出力を落としている(ハイオク仕様からレギュラー仕様にもなった)。カタログの数値を重視してきたこれまでの日本車だと考えられないこと。結果、低い回転域から太いトルクを出す優れた実用性能を持つエンジン特性を実現。しかも高回転域まで引っ張れば楽しいというオマケまで付く。

 ハンドリングも良い。強固なボディ剛性が効いているのだろう。「日本車もついにヨーロッパ車のようになりましたね!」と感心しきり。コーナリングスピードやコントロール性はヨーロッパのライバル(プジョー407やVWパサート)と比べたって一歩もヒケを取っておらず。

新型マツダアテンザ 走り

                      ハンドリングも文句なし!

 デビューと同時に高い評価を得ているのがデザイン。最近のマツダ車は全般的に好評ながら、新型アテンザのワゴンなどクルマを長年撮ってきたプロのカメラマンでさえ「カッコいいです!」。ヨーロッパでも新型アテンザはスタイリッシュだと言われているそうな。確かにバランス良い。

 それでいてリーズナブル。『20C』という、ほぼフル装備となるグレードが4ドアセダンなら207万円。ステーションワゴンボディでも革巻きハンドルなど加わって228万円。一回り小さいボディサイズのトヨタ・プレミオあたりと同じくらいの価格設定としてきた。

新型マツダアテンザ スポーツ
アテンザのアイデンティティと新鮮さをうまくミックスしたスタイリング、全幅は1795mm
新型マツダアテンザ スポーツ
アテンザスポーツは、普及仕様以外全グレードにリアスポイラーが標準装備される
新型マツダアテンザ セダン
アテンザセダンのリアビューも見た目にはアテンザスポーツとほとんど変わらない
新型マツダアテンザ スポーツワゴン
スポーツワゴンはステーションワゴンらしい堂々としたスタイリング
新型マツダアテンザ スポーツワゴン
リアコンビランプは全車LEDとなる、ルーフレールの用意もある
新型マツダアテンザ スポーツワゴン 走り
ハンドリングは3ボディとも大きな非常に高いレベルだ

「欲しい!」と思わせる魅力に期待したい

 それなら売れるか? となると「う〜ん」。今や「ハード的に良いクルマ」は当たり前となった。というか「こらアカンですね!」という新車って皆無に近い。何で売れるモデルと売れないモデルが出てくるのだろう。失敗作の条件を三つ挙げると「カッコ悪い」「ライバルより高価」「決定的な特長を持たないこと」みたいになります。

 新型アテンザは一つ目と二つ目を完全にクリア。されど三つ目で引っかかってしまう。文頭に書いた通り「マツダ車を買おうと考えている」という人なら、良い点を並べれば購入を決意するに違いない。けれど広島県を除けば「マツダ車は購入対象にしていない」という人の方が多いと思う。

 残念ながらそういった人を振り返らせるだけの個性や特長、魅力を持っていないのだ。次世代クリーンディーゼルを搭載するとか、間もなく実用化段階に入る「セルモーターを使わずエンジンを始動出来るシステム」(街中で気軽にアイドルストップが可能)を採用し圧倒的な省燃費車に仕立てるといった「新しさ」でもあれば良かったのに……。

新型マツダアテンザ インテリア
ドライバーのテンションを高揚させる雰囲気を持つインテリア
新型マツダアテンザ セレクトレバー
ATはFF車が5速、4WDは6速となり、スポーツモードも付く
新型マツダアテンザ リアシート
リアシートは大柄な男性でも十分くつろげる広さを確保している

 このままだと数ヶ月は話題に上がるため販売台数も期待できるが、半年するとメディアに登場する機会は激減。そのまま目立たない存在になってしまうだろう。せっかく良いクルマを作ったのに販売台数伸びず、話題にもならないとなれば一生懸命クルマ作りをしてきた人にとって不幸なこと。マツダの営業担当は何とか盛り上げて欲しいです。