スマート・フォーツーK

もう買えない“輸入車唯一”の軽自動車の魅力をお届け!

 スマートといえば「フォーツークーペ」が登録台数の大半を占めておりますが、維持費の面で大きな差が出る「フォーツーK」。輸入車で唯一軽自動車登録が可能なクルマなのです。
 日本で正規輸入が始まったのが2001年。軽自動車の規格に適合させるように、「フォーツークーペ」の全幅1515mmを1470mmまで絞り、タイヤも前後同サイズを採用。ホイールもいわゆる“鉄チン”ですが、一応、デザインもされており、クルマとマッチしております。
 2002年には、「フォーツークーペ」同様、ヘッドライトをマルチリフレクター式に変更。燃料タンクも22Lから33Lと大幅に容量アップを果たしました。
 さらに翌年には最後のマイナーチェンジが行われ、坂道発進で後退を防ぐ「ヒルスタートアシスト」や「ESP」を搭載。しかし2004年に「フォーツークーペ」のエンジンが698ccに刷新されると同時に生産を終了。実質4年弱の短命モデルとなりました。
 この「フォーツーK」をオススメする理由は、昨今の原油価格高騰によるガソリン価格上昇で低燃費車が見直されていることはもちろんですが、所得税、重量税、自賠責保険が大幅に節約でき、有料道路通行費も安い!そんでもって、由緒ある名門の血が流れる列記とした輸入車であるという事です。
 あんな小さなボディでは?と偏見の目で見ている方、そのクルマ造りは、驚くほど堅実。今回は、日本導入年にあたる2001年モデルを持ち出し徹底研究をしてみました。

全長2.5mながらメルセデスベンツSクラス並の衝突安全性を実現!

 スマート「フォーツクーペ」、「フォーツK」共にその小さなボディが際立っており、子供やお年寄りからも「あっ、かわいい!」と指を指されることもしばしば。一見おもちゃのようなキュートなエクステリアですが設計は、かのメルセデス・ベンツが担当しています。
 販売当時、メルセデスベンツの最上級セダンSクラス(W220型)との正面衝突実験を収録した模様を公開しましたが、全長2.5m足らずのボディはフロントガラスすら飛散する事がなく、乗員スペースはまったくもって損傷していないという驚くべき車体剛性、衝突安全性の高さを誇っております。
 「フォーツーK」では、「フォーツークーペ」標準のグラスルーフは省かれておりますが、レッドにブラックのツートンは、「フォーツーK」の専用カラーです。

スマートフォーツーK/フロント
1470mmの全幅は、日本の軽自動車規格に収まる。02年にはライト形状をマルチリフレクター式の“涙目”に変更。
スマートフォーツーK/サイド
全長は2540mmと市販自動車の中では、最も短い。(比較されるスズキ・ツインは2735mmとやや長い。)
スマートフォーツーK/リア
両サイドのリアウインドは、アクリル製。経年変化でくすみや、ズレが生じているケースがあるので要チェック。

驚くほど広い乗員空間と不足のない装備

 エクステリアは、とにかく小さい「スマートフォーツーK」ですが、インテリアは驚くほど広く、日本人の標準体型なら運転席、助手席ともにこのクルマが全長2.5
m足らずのマイクロカーとは思えないほど快適です。  
 シートの容量、ホールド感も十分で手抜きなど皆無。名門「レカロ」社が設計に携わっただけの事はあります。本来、市街地のコミューターとして開発されたクルマですが、長距離走行でも腰痛など皆無でした。しかし、助手席側のシートは、スライドのみでリクライニング機能はありません。
 エアコンやオーディオなど快適機能は標準装備。遊び心溢れるインテリアデザインは、開発時にタッグを組んでいたスイスの時計メーカー「スウォッチ」のテイストが盛り込まれています。(現在、スウォッチ社は、スマート事業から撤退。)
 また、扇型のメーターには、タウンスピードの指針角を大きくとった指針可変式を採用。中央の液晶ディスプレイには、燃料計、水温計のほか、燃料の残量が5.0L以下になると、デジタル表示の燃料計に切り替わり、0.5L刻みでカウントダウンをしていく最新式のセンサーを採用しています。

スマートフォーツーK/シート
質感も高く掛け心地も良いシートの開発には「レカロ」社が関与している。助手席側にはリクライニング機能が付かない点は×。
スマートフォーツーK/インテリア
キュートなエクステリアに負けないポップなインテリアは何ともユニーク。アフターパーツで自分だけのカラーコーディネイトも可能だ。
スマートフォーツーK/メーター
ドイツVDO社製のメーターはウォームホワイトの透過光照明。0-60キロまで10キロ刻み、60-140キロまでを20キロ刻みの指針可変式を採用。

ラゲッジ容量も意外な程のスペースを確保

 シート後方には、2名分の旅行バッグを積載できるほどのスペースが用意されています。床下には、エンジンが搭載されていますが、遮熱性が高く、積載した荷物が熱の影響を受けることはありません。リアラゲッジの開錠は、ステアリング右の電気式スイッチのほか、リモコンキーでも可能です。

スマートフォーツーK/ラゲッジ
運転席のスイッチもしくはキーで開錠をすれば、グラスゲートが最初に開く。通常はこの状態で積載OK。
スマートフォーツーK/ラゲッジ
下のゲートは、左右をレバーを引けばラゲッジの床面とフラットの状態まで下げることができ、積載性も向上。
スマートフォーツーK/ラゲッジ
フルオープンの状態。荷物を高く持ち上げなくても積載できるように、低位置から開く工夫がなされている。

メルセデス製ターボエンジンは、流れをリードできる加速性を持つ

 搭載されるエンジンはメルセデス製598ccSOHC3気筒でオールアルミ製。インタークーラーターボを装着し、最高出力55ps、最大トルク8.2kgmを発生。RRレイアウトを採用しています。
 早速、走ってみましょう。あれ?イグニションキーの挿入口が見つかりません・・・。あっ、シフトレバー手前にありました。まるでサーブのようです。
 やや長いクランキングの後、598ccとは思えない程、低音の利いたサウンドが背中から聞こえてきますが、キャビンにこもるような事はなく、決して不快な音色ではありません。
 トルクコンバーターを持たない電子制御クラッチは、6速シーケンシャル方式の「ソフタッチ」を採用。自動変速と手動変速が選択できますが、前者を選択した場合、クラッチミュートが遅く、変速の際にはややギクシャク感をいがめません。基本的には手動変速を主体に設計されたと考えた方が賢明です。キビキビとした走りを楽しみたいのなら、手動変速で積極的にシフトを操る事をオススメします。

 車体重量700キロ強のボディにメルセデス製エンジン、6速シーケンシャルミッションの組み合わせは相当なもの。街中の流れをリードするくらい朝飯前。0-100キロ加速なら、数倍の排気量を持つクルマでさえ置き去りにできます。ちなみに、私の愛車であるルノー「トゥインゴ改」とシグナルグランプリを演じてみましたが、終始「スマートフォーツーK」のヒップを拝む結果に・・・。正直、完敗です。
 オーナーいわく、小さいという理由から、街中でも煽られることが多いそうですが、ナメるなよ!と言わんばかりに、アクセルを踏みつけると、一時的にターボの過給圧を増大する「オーバーブースト」機能を備え、最大トルクを向上。(8.2kgmから9.0kgm)その結果、俊敏な加速力を発揮します。この上ない取りまわしのよさと相まって、街中では、無敵!だそうです。

スマートフォーツーK/メルセデス製3気筒エンジン
ラゲッジルームの床下に備わるメルセデス製598cc3気筒エンジン。オイルパンにはドレンコックを持たないためオイル交換は上抜き専用。
スマートフォーツーK/専用タイヤ
コンチネンタル製145/65R15 が純正サイズ。軽量ボディには、このサイズでも十分。サスのダンピングは硬いがロールは抑えられている。
スマートフォーツーK/6速シーケンシャルセミオートマ「ソフタッチ」
6速シーケンシャル「ソフタッチ」は、左側が+(シフトアップ)−(シフトダウン)。右側が、ニュートラルとリバース。側面ボタンでオートになる。

 コンパクトユーロハッチ大好き人間の私ですが、「スマートフォーツーK」は、本気で欲しくなった一台といえます。
 愛らしいペットのような姿は、佇んでいるだけで不思議と気持ちまで癒されてしまいます。しかし、メルセデスの高い安全基準で製造され、小さなボディを最大限に生かした設計は脱帽モノです。

 現在の相場で最も流通量が多い価格帯は、50万〜70万円程。クルマのキャラクターからも、グッドコンディションのタマが多く、走行距離が少ないのも「スマートフォーツーK」の特徴です。
 装備の差も普通車登録の「スマートフォーツークーペ」と大差がなく、それでいて年間の維持費は、遥かに安い「スマートフォーツーK」。今後、軽自動車登録の輸入車が登場する可能性は希薄と言えます。好程度が選べる今が買い!ですよ。

スマートフォーツーK

written by 外川 信太郎