ライター紹介

自動車評論家

松下 宏 氏

中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。 誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。

扱いやすいエンジンとCVTによる滑らかな加速を実現

 日本仕様はエンジンもトランスミッションも1機種のみ。MR20DE型エンジンとエクストロニックCVT-M6との組み合わせだ。エンジンはどちらかというとトルク重視のチューニングがなされていて、パワーは137馬力と2リッターエンジンとしてはさほどではないが、トルクはしっかり20.4kg・mを発生している。これとはCVTとの組み合わせによって滑らかな走りが実現されている。
 CVTではエンジン回転の上昇と車速の上昇がドライバーの感覚に合わずに違和感を感じることが多いが、デュアリスでは頑張って違和感をなくしたとのこと。完全に違和感がないわけではないが、そこそこ自然なフィールである。マニュアルモードを選択してアクセルを踏み込んでいくと6000回転くらいまで引っ張ることができる。まあ、CVTは無理に回しても効率が悪くなってしまうから、自動変速に任せておくほうが良い。

ハッチバック車のような軽快なハンドリングが魅力

 足回りはしっかりした乗り味が特徴。デュアリスではザックスとの共同開発によるハイスピードコントロールのショックアブソーバーを採用したとのこと。セダンやハッチバック車に比べると全高が高くて車両重量の重いSUVながら、自然で軽快感のある走りを示してくれる。このあたりはSUVとは違う普通のハッチバック車に乗っているような感覚だ。
走行中の室内騒音は決してうるさくはないが際立って静かでもない。ヨーロッパと日本では騒音に対する要求が異なるので、日本向けにはエンジン音などをさらに静かにしても良い。4000回転くらいまで回すとエンジン音だけでなくCVTの金属音もわずかに聞こえてくる。

●お勧めグレード

円安傾向が続く中で、デュアリスには比較的割安な価格が設定されている。ユーロほどではないが英国ポンドも今は高水準にあるので採算面ではけっこう厳しいのではないかと思われる。それはともかく前述のような装備の差があって20Sと20Gの価格差は27万円ほど。グレード間の価格差としてはちょっと大きめなので迷うところだが、上級グレードの20Gを選びたい。
FFにするか4WDにするかはユーザーの住む地域や使い方によっても変わるが、私は個人的には、SUVのようなクルマを買うなら4WDという古い観念にとらわれている。FFを買うならわざわざSUVでなくても良いからだ。
で、全グレードにオプション設定されているのが35万円弱のHHDナビ(バックビューやサイドビューモニターもセット)とVDCや後席中央3点式シートベルトなどの安全装備。カーナビはともかく、安全装備がオプションというのは納得しがたい。ヨーロッパでは国によって異なるとのことだが、ドイツでは全車標準にしているのに、日本でそうしない理由が分からない。メーカーの意志として安全装備の重要性を明確にし、それをきちんとユーザーに伝えることが大切だ。
デュアリスを買うなら、納車に時間がかかるなどと脅されても、絶対に13万6500円の安全装備をオプション装着しよう。

代表グレード 20S FOUR
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 4315×1780×1615mm
車両重量[kg] 1450kg
総排気量[cc] 1997cc
最高出力[ps(kw)/rpm] 137ps(101kw)/5200rpm
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 20.4kg・m(200N・m)/4400rpm
ミッション CVT
10・15モード燃焼[km/l] 13.8km/l
定員[人] 5人
税込価格[万円] 216.3万円
発売日 2007/5/23
レポート 松下 宏
写真 佐藤 靖彦

中低速域のトルクがたっぷりあるので非常に扱いやすいエンジンだ。CVTとのマッチングもよく滑らかな走りを実現している。

20Gはアルミホイールが標準装備となる。スタイリッシュさと力強さを兼ね備えたデザインを採用する。