シボレー コルベットZ06 エクステリア

フェラーリやポルシェも敵ではない『コルベット Z06』の圧倒的な走行性能!

 シボレー コルベット Z06に搭載されるV8 OHV7.0Lエンジンは、最大出力511ps、最大トルクは64.9kgmを発生。アルミフレームの採用により、車重も1440Kgと驚くほど軽い。これに500psオーバーの組み合わせなのだから、その加速感といったらもう・・・。 

ロングノーズ、ショートデッキの古典的なスポーツカースタイル

コルベットZ06 フロントマスク
コルベットZ06 サイドライン
コルベットZ06 リアビュー

 私は、ユーロ・コンパクトやややくたびれたドイツ車が好きで、正直アメリカ車に触れ合う機会はあまりなかった。しかし『コルベット』だけは、昔から「特別」。ある意味、信仰心のような眼差しで見ていた。その証拠に書斎のテレビの上に飾られた「ミニ・チャンプス」は、初代コルベットのC1型から現行のC6型まですべて備わっている。
 そんな隠れコルベットファンの私が、どうしても試乗してみたかった『コルベットZ06』。昨年のルマン24時間レースで、クラス優勝を果たしたマシンのDNAを受け継いだこのクルマ。期待に胸を膨らまさずにはいられない。
 エクステリアでは、先代のリトラクタブルヘッドライトを廃し、空力に優れたクリアレンズのヘッドライトは、精悍さを増した印象だ。
 全長4465mm×全幅1935mm×全高1250mmというディメンションを持つボディは、一言、幅広で低い。これぞスポーツカースタイルというエクステリアデザインは、初代から継承され、美しい曲線を描くロングノーズと、すぱっと切り落とされたようなショートデッキが、独自のスペシャリティ感を演出している。

いよいよ、ヘビーマッスルに乗り込む

コルベットZ06走行シーン

 重く分厚いドアを開き、ブラックレザーのバケットシートに身を沈めると、身長167センチの私には、「座布団一枚!」と言いたくなるほど着座位置が低い。パワーシートのハイトスイッチを最高位置に合わせ、ようやくノーズの先端が目視できた。
 エンジン始動には、キーを差込み回すといったロジックは不要。インテリジェントキーを携帯し、クラッチもしくはブレーキを踏んでいれば、エンジン始動が可能。プッシュ式のイグニションスイッチは、欧州車のようなスマートな形状ではなく大きく無骨なもので一目瞭然。まるで「ミサイル発射ボタン」とでも形容するのがふさわしい。 

強烈な加速は呼吸さえ乱す

 踏力を要するクラッチを踏み、エンジンを始動した瞬間キャビンが一瞬揺れ、ノーズで息を潜めていた怪物が目を覚ました。それと同時に、6連メーターの指針がフルスケールまで跳ね上がり、「Welcome to CORVETTE」とオンボードディスプレイに表示された。直訳すると「ようこそコルベットの世界へ」なのだろうが、私には「このクルマ危険につき要注意!」としか判断できなかった。
 重いクラッチからゆっくり足を浮かすと、さすが7.0Lの大排気量が生み出す強大なトルクのおかげで、怪物は極めて従順にタイヤを転がしはじめた。
 試乗時間は90分と短いが、この怪物の性格を知るには十分な時間といえる。

 アイドリング程度の回転を保ったまま一般道を走り、高速道路の合流レーンまでやってきた『コルベットZ06』。一時停止を厳守し、交通の流れが途切れた瞬間、アクセルを踏む右足に力を込めた。
 大パワーアメリカ車の常であった、ブラックマーク&白煙といった派手な発進加速は、このクルマにはなく、極太のP325/30ZR19のリアタイヤが、アスファルトを蹴り上げ、有り余るパワーを無駄なく路面に伝えている。すぐさま、肺を圧迫し、呼吸すら苦しくなるような加速Gが襲い、「トバトバトバ…」という全身を揺るがす排気音とともに、1速6300rpmですでに時速100キロに到達。2速、3速とシフトアップを繰り返しても、一向に衰えることのない加速感は目眩すら覚えるものだ。私が、近年試乗した数々の車種の中では、最も強烈な加速を演じたクルマといえよう。
 この怪物を日本の高速道路に解放す行為に、罪悪感を感じながら、タコメーターより勢いよく上昇する速度計の数値をみて、思わずアクセルから右足を浮かしたほどだった・・・。

ワインディングでも滅法速い

 『コルベットZ06』は、相当なマスを感じるエクステリアだが、車両重量は7.0Lエンジンを搭載しているとは思えないほど軽量。アルミフレームの採用により、実に1440kgを実現している。
 低重心のエンジンと専用チューニングのサスペンションにより、コーナリングスピードは驚くほど速く、ロールも最小限。しかし、コーナーリング中に右足のさじ加減を誤ると、たとえワイドなタイヤでもアウト側にヒップを振り始める。この時点での速度がすでに、相当なものなので、私の腕では、これ以上の「オイタ」は不可能だった!
 ブレーキはフロント6ポッド、リア4ポッドを採用。設計はサーキットユースを考慮したものなので、ワインディングで少々頑張った程度では根を上げるような軟なものではない。カッチリとしたフィーリングは、定評のあるポルシェ911シリーズ(タイプ997)にも勝るとも劣らないものだ。 

フロント6ポッドの専用ブレーキシステム
フロント355mm、リア340mm径のベンチレーテッドクロスドリルローターに、フロント6ピストン、リア4ピストンキャリパーを組み合わせた『Z06』専用ブレーキ。
リアP325/30ZR19 の極太タイヤ
強大なパワーを路面に伝えるリアタイヤは、P325/30ZR19を採用。おそらく、ランボルギーニ『ムルシエラゴ』の次にワイドサイズだろう。
重低音を奏でる4本出しマフラー
 大口径4本だしマフラーは、アイドリングから豪快なV8サウンドを奏でる。

 『コルベットZ06』は、ルマンで培われたレーシングテクノロジーをフィードバックさせたスペシャリティなクルマ。世界一級の動力性能を有しながら、価格は945.0万円。この性能を考えれば十分に『お買い得』だといえるだろう。

written by 外川 信太郎