「おもてなしの心」を随所に感じさせる「レクサス LS460」試乗記

U・Iパッケージ、操作系の装備ではもう少しわかりやすさが欲しいところ

「おもてなしの心」を随所に感じさせる「レクサス LS460」試乗記

 「おもてなしの心」を訴えてきたレクサスの真打のLS460。最初に乗ったモデルは豪華仕様のバージョンU・Iパッケージ。ゲストとして後席に座ると上質の室内空間が広がり、身体に感じる空気はとても自然です。リヤシートではエンジン音や変速ショックも少なくとても快適です。マーク・レビンソンの音響システムは、音量を上げても音割れや変な共鳴もなく澄み切った音が車内を包む世界最高の音質で、DVDを見ていると車内にいることを忘れてしまいます。ただ、後席用モニターが天井に取り付けてあるので、ディスプレイを下げるとルームミラーが見えにくくなると感じました。ドライバーの視界確保という安全面を考えると、贅沢に前席左右のヘッドレストにディスプレイを埋め込んで欲しいですね。

 操作系では装備が沢山のためスイッチが多く、使いこなすのは難しいです。私のような中高年にはパッとラジオを聞く事でさえ簡単にできない場面も多々ありました。「おもてなし」ということであれば、もう少しスイッチ類は整理して欲しいのと、折角日本語表示のスイッチがあるのに一部に英語表示を使っているのは残念です。

続いてSバージョンでの運転、トップレベルの静粛性を保ちつつ、スムーズに加速!

 次は19インチを履いたバージョンSに乗り換え、今度は「おもてなし」をする運転を担当です。エンジンは遙か遠くでアイドリングをしているかのように、振動も音も少なく、まさに世界トップレベルの静粛性だと感じました。アクセルペダルを踏むと、モーターのように軽い動きでスピードを上げます。世界発の8速A/Tは変速ショックが少なく、「おもてなし」運転はとても楽です。アクセルペダルを一番奥まで踏み込むと遠くでエンジン音が少し高まり、0-400mの13秒台の加速力は、後席のゲストが「速い!」と唸る程です。あまりにもスムーズな速さのためか運転手には少々伝わりにくいです。ドライバーは、気が付くととんでもないスピードになっている可能性があるので、スピード違反に注意ですね。

「おもてなしの心」を随所に感じさせる「レクサス LS460」試乗記

 さて、ハンドリングはというとエアサスペンションはロールも少なく、リヤタイヤの追従性も良く少舵角時の旋回性も高いです。3モードの減衰力可変は「コンフォート」「ノーマル」「スポーツ」の3モードが用意されています。通常はコンフォートモードがお勧めで、ノーマルモードは、少々固すぎ。スポーツモードはサーキットで使うようなレベルのように感じました。電動パワーステアリングはアシスト量が多くとても軽く仕上がっています。その影響なのか、ステアリングインフォメーションも少なく走ることが好きなオーナーなら、もう少しクルマとの一体感が欲しいと感じるのではないでしょうか。

威圧感がないのがおもてなしの心?

 全体的には不満が非常に少ないクルマです。そのためなのか逆に際立った個性も少なく見えてしまうというのは、いじわるな評価かもしれません。レクサスブランドのフラッグシップモデルゆえに、自然に見る目が厳しくなってしまっているともいえます。ヨーロッパ車に代表される、いわゆる高級車はドアを開けた瞬間から(外観のスタイルからも)独特の別世界が広がって、時には威圧感さえ感じ、自分の日常生活を超えた空間が高級車を実感させられます。それに対してLS460は、ボディスタイルも室内の演出も一歩下がって「おもてなし」を全面に出し、誰にでも気楽な高級車を提供しているように感じます。レクサスとブランドは変わっても、クラウンやセルシオの延長線上、そんな気がしてなりません。車両価格が1000万円になるクルマを購入する人に、どの程度「おもてなし」が理解してもらえるかが既存の輸入車ユーザーを攻略するポイントなのではないでしょうか。

「おもてなしの心」を随所に感じさせる「レクサス LS460」試乗記
「おもてなしの心」を随所に感じさせる「レクサス LS460」試乗記
「おもてなしの心」を随所に感じさせる「レクサス LS460」試乗記

 新しい高級車の概念として「おもてなし」は、これからの高級車に対して一石を投ずるには間違いありません。最高級車として今後の熟成と来年発売のハイブリット+ロングホイールベースモデルにさらに期待します。