強力無比のパワーを秘めた 911ターボ 試乗記

997型ポルシェ待望のターボ

強力無比のパワーを秘めた 911ターボ 試乗記

 いよいよ997型ポルシェにもターボが追加された。ポルシェ・ターボと言えば私は最初に思い浮かぶのは1974年にパリ・サロンでデビューした930型のターボである。3リッターで260ps、最高速250km/hと現代の車ではターボの助けが無くても無理なく出せる性能である。しかしポルシェ・ターボの一番インパクトがあったのが、大きなリアウイングと、左右に張り出したリアフェンダーとその中に収まる(当時としては)超扁平タイヤのピレリP7を履いた異次元のスタイルでした。私は自分の部屋に赤いターボの大きなポスターを貼って毎日、溜息をつきながら恋人を見るように毎日眺めていた。

 あれから30年、バリオカムプラスと可変タービンジオメトリー(VTG)付きのツインターボを装備した3.6リッター・エンジンは480PSを搾り出し、4輪駆動システムにより0-100km/hをわずか3.7秒(AT)で疾走するという。

期待を胸にご対面…が、予想に反して攻撃的なイメージとはほど遠い

強力無比のパワーを秘めた 911ターボ 試乗記

 期待を胸にターボの鍵を受け取り、車に近づくと「あれケイマン?」と思ってしまった。フロントに235/35ZR19と、リアに305/30ZR19とファットなタイヤと走りを予感させる5スポークを履き、リアフェンダーには大きなインテークが口を開けている。しかし私が持っているターボの攻撃的なイメージからほど遠く、フロントに装備されたLED式のインジゲータもミスマッチで、全体の印象からはオーラが欠け、1879万円(AT)もする車には見えないのが残念。

先代の996ターボに比べソフトな印象

強力無比のパワーを秘めた 911ターボ 試乗記

能ある鷹は爪を隠すと言うので、スタイルの事は忘れて早速運転席に身体を滑り込ませ、キーを回すと高出力ユニットは簡単に目覚める。アイドリングも滑らかに回り、Dレンジに入れて早速走り出す。一般道は初心者マークを付けても走れるほど普通に運転でき、先代の996ターボより全体に静かになり乗用車に近づいたようだ。試乗時はあいにくの雨であったが、滑りやすい路面でもポルシェとは思えない程、運転は優しい。しかしボディ剛性の高さはステアリングを通して実感でき996ターボよりは全体の印象はソフトでありながら芯の強さからスポーティに感じる。

強力無比のパワーを秘めた 911ターボ 試乗記
強力無比のパワーを秘めた 911ターボ 試乗記
強力無比のパワーを秘めた 911ターボ 試乗記

本領発揮! ワープをも感じさせるかのような加速!

強力無比のパワーを秘めた 911ターボ 試乗記

 ETCゲートを通過して、初めて床までアクセルペダルを踏む。シフトダウンし一瞬のためらいがあった後に急にジェットエンジンが点火したように猛烈な加速を開始する。慌ててアクセルペダルを戻すが、まだ高速道路の進入路である。本線に進入して、大きく息を吸い脳に新鮮な血液を送り込み冷静になる。前が空いたことを確認し再びアクセルを踏むと、強くシートに身体が押しつけられて、あっという間に制限速度を超えてしまい慌ててブレーキペダルを踏む。SF映画に出てくるワープとはこんな感覚だろうか?急激に周囲の景色が後に流れ出す異次元の感覚。しかも滑りやすい路面でも電子制御電子作動式マルチプレートによるPTMの四輪駆動システムは620N mの大トルクをしっかり路面に伝える。ターボラグも殆ど感じないが、むしろ5速ATが最新の他社のATより古くさく感じ、少々性能をスポイルしている。スピードを上げると911のRRレイアウトによるフロントの軽さを感じる。欠点と言えばその程度であるが、大きく性能がアップしているのだからインパクトのあるターボルックを今後期待したい。