財団法人 地球環境産業技術研究機構(RITE)とホンダの研究開発子会社である株式会社 本田技術研究所(以下ホンダ)は、植物由来の再生可能資源であるソフトバイオマスからエタノールを製造する技術に関する共同研究の成果を発表した。
バイオエタノールは燃焼時に放出されるCO2が、もともと植物が光合成により取り込んだもので、大気中のCO2総量に影響を与えない為、カーボンニュートラルな燃料として、地球温暖化対策に有効なエネルギー源として注目されているが、現在の製造では、サトウキビやとうもろこしの糖質や澱粉質など食用と同じ部分を原料としているため、供給可能量に限りがある。今回の共同研究では、これまで困難とされてきた、稲藁など、食用に供さない植物の茎や葉といった、ソフトバイオマスに含まれるセルロース類からアルコール燃料を製造する技術の基盤を確立し、実用化向けて大きく前進したという。
今回開発されたプロセスは、1)ソフトバイオマスからセルロース類を分離する前処理工程 2)セルロース類の糖化工程 3)微生物による糖からアルコールへの変換工程 4)アルコールを精製する後処理工程の4過程から成り立っている。
既存の技術では、主にソフトバイオマスからセルロース類を分離する工程で副次的に生成される醗酵阻害物質が、糖をアルコールに変換する微生物の働きを妨げ、エタノールの収率が極めて低くなる。これが、ソフトバイオマスからのアルコール製造の大きな障害になっており、解決する策は今まで見出されていなかった。
今回、醗酵阻害物質による悪影響を大幅に減少させるRITE-Hondaプロセスの開発に成功、従来のセルロース系バイオエタノール製造プロセスと比較してアルコール変換の効率を飛躍的に向上させることが可能となった。
この成果により、ソストバイオマスからのエタノール製造に関して、基礎的な課題がすべて解決したという。今後は、工業化に向けて研究を進め、現在は別々の処理で行っている4つの行程をひとつのプラント内で連携させるシステムの開発に取り組み、この連携システム内でのエネルギーリサイクルによる省エネルギー化と低コスト化を図る。
また、新しいバイオアルコール製造システムの社会適合性や経済性を検証するために、パイロット・プラントによる実証実験を計画ほか、将来的にはエタノールだけにとどまらず、バイオマスから自動車用材料を含むさまざまな産業用物質への進化を目指し、更なるCO2低減による地球温暖化防止に貢献していきたいとのこと。