一段と高い静粛性に驚かされた
LS460では主要コンポーネントに従来のモデルから引き継いだものはなく、基本メカニズムのすべてが新しくなった。V型8気筒の4.6Lエンジンは、先にGSなどに搭載されているV型6気筒3.5Lエンジンをベースに8気筒化したもので、全くの新開発。これが同じく新開発の電子制御8速ATと組み合わされる。もちろんそれらを搭載するプラットホームも新開発のものだし、ひと回り大きくなったボディも全面的に新しい。
そのレクサスLS460に乗って走り出すと、相変わらずの静かさや滑らかさを感じる。ゆるりと動き出したときの独特の雰囲気はいかにもLSらしいものだ。そして静かさや滑らかさは一般道からアウトバーンに至るまでどの領域でも確保されている。
強いていえば、加速時のエンジン音は心持ち大きめともいえるが、時速200km前後の超高速域でもとても静かなクルマに仕上げられている。普通のクルマだったらせいぜい時速120kmくらいかなと思えるくらいの室内騒音でしかない。ドアミラー回りの風切り音がとても静かなのが印象的だった。
『レクサスの静かさ』は世界の指標に
レクサスは初代モデル以来、その静粛性の高さやスムーズさで高い評価を得てきた。というかレクサスLSの静粛性の高さが、その後の高級車のスタンダードになったといっても良いくらいだ。今やほかの高級車メーカーが『当社のクルマはレクサスと同等の静かさだ』という形で引き合いに出すほどだが、その静粛性の高さは今回のモデルでもきちんと受け継がれて進化している。
滑らかで力強い高級車ならではの加速感
超高速域に至るまでの加速も実に滑らかなものだ。停止状態からアクセルを踏み込んで加速していくと、6500回転から始まるレッドゾーンの少し手前の6000回転を超えたあたりでシフトアップしていくが、そのときのショックが良く抑えられていて、とても滑らかに加速していくのだ。
LS460では排気量の拡大によって280kW(psではない)にまで高められた動力性能と、ワイドかつギア比をクロスさせた8速ATとの組み合わせによって、格段に力強くてとても滑らかな加速を体感できる。
8速ギアがハイギアードな設定になることは、高速クルージングでの静粛性にもしっかり貢献しているし、燃費性能にも好影響を与えているのは間違いない。ギアの段数が多くなると市街地やカントリーロードなどの中速域での変速がビジーになったりしがちだが、LS460ではそんな不満を感じるシーンはなかった。むしろクロスしたギア比によるほとんどショックを感じない優れた変速フィールが大きなメリットとして感じられた。
優れた乗り心地と高い安定感
今回の試乗車はヨーロッパ仕様車とアメリカ仕様車が中心で、中にはアメリカ向けの機械式サスペンションの装着車などもあったが、基本的にはほとんどのクルマが電子制御エアサスペンションを採用していた。仕様によって18インチと19インチでタイヤサイズに違いがあったが、全体に乗り心地の良さが際立つ印象だった。
柔らかめの味付けながら、それでいてコーナーでのロールなどはグラっとくる感じではなく、むしろ良く抑えられている印象。乗り心地と操縦安定性をバランスさせたというより、優れた乗り心地を十分に実現上で、高い安定性も確保したという感じ。
ワインディングを走るようなシーンでは19インチタイヤを履いたモデルの安定性が好ましく思えたが、いろいろなシーンを総合すると18インチタイヤ装着車のほうが気持ち良く走れる印象だった。
もっと「濃い」味を
大きく進化したLS460に強いて注文をつけるとしたら、より強烈な存在感が欲しいという点だ。すでに紹介したような圧倒的ともいえる静粛性の高さや滑らかな走りのフィールは、今やレクサスの味として完全に定着したと思う。でもそれ以外にももっと、これがレクサスだという何かが欲しい。ある意味でアクの良さを感じさせるくらいに個性を表現したほうが、レクサスブランドの地位を固めることにつながるのではないか。