誰もがあこがれるグランプリが開幕
F1グランプリも第7戦と中盤戦に差し掛かったが、ここモナコはGPドライバーにとっても(ドライバーの)母国GPと並び、特別なグランプリとなる。
通常の週末は金曜日と土曜日に練習走行が行われ、土曜日の午後に予選。そして日曜に決勝レースが行われる。しかし、ここモナコでは木曜日に練習走行が行われ、金曜日はモナコ大公主催のパーティが行われ、土曜日に練習走行と予選、決勝は日曜と土曜からは他のGPと同じスケジュールだが、表彰式は大公よりトロフィーが授与されるなど、まさに国を挙げてのグランプリとなる。また、ここモナコで複数回優勝するドライバーを「モナコ・マイスター」と呼び、シリーズチャンピオンを予想する上でも重要なグランプリとなる。かつて故アイルトン・セナは、ここモナコを6回制し「モナコ・マイスター」としては代名詞となるが、ミハエル・シューマッハもこれまで5回制し現代の「モナコ・マイスター」と呼ばれる。誰もがあこがれる称号である。
予選の「明」と「暗」
土曜日、抜きどころのないこのモンテカルロの市街地コースは、他のグランプリよりもとりわけ予選が重要で、ポールポジションを獲得するのが重要になる。また、最高速よりもマシンパッケージと、そしてそれ以上にドライバーの技量が順位争いに物をいうサーキットで、最初に脱落したのはフェラーリの若手フェリペ・マッサだった。マッサは、予選アタック1周目1コーナーでクラッシュし、最後尾スタートが決まった。しかし、それ以外は順当にルノーのフェルナンド・アロンソ、フェラーリのミハエル・シューマッハ、マクラーレン・メルセデスのキミ・ライコネンらがポールポジション争いを繰り広げた。
最終ピリオドの終了チェッカーが振られた直後、なんと1位タイムをたたき出し最後のアタック中だったミハエルがコース上でストップ。黄旗が振られアタック中のドライバーはその区間スピードを緩めなければいけない。この影響をもろに受けたのがアロンソだ。アロンソは最後のアタック中、第1・2セクターで最速タイムをたたき出したが、黄旗が振られる最終セクターはタイムが伸びず予選終了。結局予選タイム1番はコース上にストップしたミハエル・シューマッハ、2位にフェルナンド・アロンソ、3位ウィリアムズ・コスワースのマーク・ウェバー、4位キミ・ライコネン、5位マクラーレンのファンパブロ・モントーヤの順となったが、コース上でストップしたミハエルに予選タイム剥奪の重いペナルティが科せられ、フェラーリの2台はF1サーキットの中で最も抜きどころのないモナコで最後尾スタートとなった。繰上げでアロンソが1位、ウェバーが2位スタートとなる。
決勝レースは好バトルの予感も・・・
決勝レースはアロンソがトップを取り、ライコネンがすかさず追随する。3位はウェバーの順で、この展開が48週目まで続いた。3台の間隔は変わらないが、1位アロンソがラップをコントロールし、2位ライコネンがアロンソの隙を窺う。3位ウェバーはその2台に何とかくらい付いている感じだ。この3台の中ではマクラーレン・メルセデスのキミ・ライコネンのペースが最も速いと見えるが、ここモナコは1周のラップタイムが2秒違う程の差があっても抜けないコースで有名だ。
1992年、マクラーレン・ホンダを駆る故アイルトン・セナが、当時異次元の速さを見せていたウィリアムズ・ルノーのナイジェル・マンセルから驚異的な追い上げを受けたが、最後までブロックし続け優勝をさらったレースが記憶に残る。もう10年以上も前の話しだが、歴史に残る好バトルとして今でも語られている。
そんなモナコのコースでは、ルノー&アロンソの組み合わせを攻略することは難しい。ここ数年お決まりのピット作業での追い越ししか期待出来ないところだ。
レースが動いたのが48週目。3番手のウェバーのマシンが火を噴き、1コーナー立ち上がり付近にストップ。好走を続けていただけに残念だ。その影響でセーフティカーが導入され、アロンソとライコネンは2度目のピット作業を行う。せっかくの追い越しチャンスだったが、結局同じピット戦略となりライコネンの優勝は厳しい物となった。
そして50週目にはライコネンにもマシントラブルが発生。コースサイドに停車させ、ライコネンはそのままコース脇に停泊中のクルーザーへと消えた。モナコならではの光景である。
そのままレースは進み、優勝はアロンソ。2位にはマクラーレンのファンパブロ・モントーヤ、3位にレッドブル・フェラーリのデビッド・クルサードが入賞。クルサードはスポンサーであるスーパーマンのマントを羽織って登場した。残念なことに、1ストップ作戦で3位まで浮上していたホンダのルーベンス・バリチェロはピットレーンの速度違反でドライブスルーペナルティを受け4位でゴール。5位最後尾から追い上げたミハエル、6位ルノーのジャンカルロ・フィジケラ、7位BMWザウバーのニック・ハイドフェルド。トヨタのラルフ・シューマッハが8位に入賞も、終盤3位を走ったトヨタのヤルノ・トゥルーリはマシントラブルでリタイア。ホンダのジェンソン・バトンもリタイア。スーパー・アグリのフランク・モンタニーは16位F1初完走。同僚の佐藤琢磨はリタイアに終わっている。
やっぱり今年のミハエルは本物!
結局レースはアロンソが危なげない走りで優勝し、2位モントーヤはコンスタントに走りきった感じ。このレースで最も輝いていたのはベテランのふたりだろう。そのベテランのひとりが3位と大健闘のデビッド・クルサードと、予選でペナルティを受け最後尾スタートながら、着実に追い上げ5位に入賞したフェラーリのミハエル・シューマッハだろう。上位の相次ぐリタイアに助けられたとはいえ、レッドブルというパッケージでの3位は優勝にも値する結果だ。そして、予選のペナルティにより同じフェラーリエンジンを搭載するレッドブルに結果的に負けたとはいえ、ここモナコで最後尾から5位まで這い上がってきたミハエルは、一昨年までの強さと勝利に対するモチベーションを完全に復活させたといって良いだろう。残り11戦のフェラーリの速さに注目だ。そして、マクラーレン・メルセデスの信頼性回復に期待したい。
次は第8戦イギリスグランプリだ。スーパー・アグリのニューマシンが登場するともいわれるが、もう少し時間がかかるようだ。6月11日シルバーストーンサーキットで決勝レースが行われる。