さあ、走りだ。レクサスIS350/250において、走行性能というのは最も重要な部分のひとつ。まあ、私情だらけということでご容赦願いたいのだが、もはやレクサスISではIS350のバージョンS以外のセレクトはない、なんて勝手に思っている。
ナニがそんなにいいのかというと、ひとつ目はエンジン。新開発の3.5リッターエンジンは、久しぶりのヒット作。どちらかというと、眠い系統のトヨタ製エンジンとしては、とても気持ちいいものに仕上がっていた。まあ、多少低回転域でのトルクが細いような気がするが、そんなの関係ない。レブリミットまでシュイ−ンっとキレイに回り、4千回転付近からさらにパンチが効くようなパワー感は思わず「オオッ」と叫んでしまう。またコレがめっぽう速いから、目じりが下がりまくり。スポーツカーに乗っている気分がする。
通常の直噴エンジンは、筒内直噴インジェクタ−しかもたない。ところが、この2GR‐FSEエンジンは、さらにポート噴射インジェクタ−を装備する。つまり、1気筒あたりふたつのインジェクタ−をもつのだ。フツーのV6エンジンに比べて、トータルで6個もインジェクタ−を増やしガソリンを吹きまくっている訳だ。そりゃ速い。もちろん、インジェクタ−を増やせばいいというもんではなくて、それらを緻密に制御できる技術があってこそ。まあ、このエンジンも今ではクラウンに装備されたりしているが、レクサスだけのプレミアムエンジンとしないところが、いかにもトヨタらしい。いろんなところにたくさん使ってコスト回収ってところですか。レクサスファンにとっては、レクサスだけであって欲しいエンジンだと思うが・・・。
さて、エンジンのつまらない愚痴が出てきたところで次のお気に入りはブレーキ。この対向4ポットキャリパーを装備したブレーキかなり効きます。初めて乗った時は、多少コーナーの奥までブレーキするつもりでいたのに、随分手前で減速終了。激しくノーズダイブしながらの減速というよりは、ガフっとクルマ全体が沈み込み減速するイメージ。減速時のクルマの姿勢も安心感があり、必要以上の緊張感を与えない。ブレーキのコントロール性もまずまずで踏力によってそれなりにコントロールしやすいものだった。
このブレーキもクラウンに装着されていたりする。逆にいうと、クラウンもなかなか侮れないエンジンとブレーキを兼ね備えているということだ。
ハンドリングもトヨタ車とは思えないくらい気持ちよく曲がる。ステアリングを切った分だけスッと曲がり、とても素直な印象。BMW3シリーズのように、指一本分の操舵にもしっかりと応えてくる精密なハンドリングとまではいかないが、それに近い。IS350はそれを目指しているように感じた。
ボディの剛性感も素晴らしい。これも今までのトヨタ車とはひと味違う。もう、ガッチリとした感じ。もちろん、これだけのボディ剛性があるからこそ気持ち良いハンドリングが生まれるのだと確信した。だから、少々飛ばしていてもクルマの安定感は非常に高いレベルにある。少々ラフな運転をしても、リヤサスが路面をつかんで話さない。リヤのボディ剛性もかなり高いレベルにあるはずだ。
少々気になる部分は、トヨタの最新技術で最も進んでいるアクティブセーフティー機能VDIMが2.5リッター車には装着できないこと。この機能は横滑り防止装置(VSC)やトラクションコントロールなどを総合制御し、限界領域を越える前から制御を始め高い安全性を確保するというもの。
ボク自身は、クルマのグレード感で安全装備の優劣をつけてはいけないと思うのだ。つまり、お金を多く出した人だけが安全で、お金を出さない人は危険という図式が成り立ってしまうからだ。2.5リッター車であろうが3.5リッター車であろうが、安全性に関しては平等でなくてはならないと思う。これは、レクサスが考えるグレード感のヒレラルキー的演出のミスだと思う。
少々苦言もあるものの、レクサスIS350はボクにとって久しぶりにいいクルマだなぁと感じた1台。交通量の多い街でも異彩を放ち、存在感も高い。
ミニバンに乗り、高価な後席モニターまで装着し、ディズニーのDVDを流し子供のご機嫌取りを続ける30歳台のお父さん達。それはそれで良いだろう。だけど、クルマ好きなら多少狭くても家長でもある父親のワガママを主張し、子供にはそれが理不尽であったとしてもガマンさせることを覚えさせるのも父親の役目。IS350のようなスポーツセダンを自在に操り、男の本質を子供や奥さんに理解させるのはどうだろうか? 子供や奥さんに迎合するだけが家庭の幸せではないと思う。とくに、クルマ好きなら走ることの楽しさを忘れちゃいけない。クルマの楽しさは女、子供にゃ理解できないもの。30歳台の中年パパ達、レクサスIS350で本来の男らしさを取り戻してみないか?