ライター紹介

自動車評論家

松下 宏 氏

中古車の業界誌から自動車誌の編集者を経て、自動車評論家に。 誰でも買える価格帯であり、小さくて軽く、そして燃費がよいということを信念として評論。

アイが並みの軽自動車ではないことは、走り出すとすぐに感じられた。しっかりした乗り味を感じさせる安定した足回りが、フラットな乗り心地を実現している。ともすれば乗り心地を重視するが故に柔らかくてふにゃふにゃした感じになりがちな軽自動車の足回りとは違って、アイの足回りは極めて高い走りの質感を感じさせる。軽自動車の水準を超えた走りといっていい。
 搭載エンジンはインタークーラー付きターボ仕様の直列3気筒660ccのみの設定で、47kW/94N・mのパワー&トルクは2WD車で900kgほどのアイのボディに対して十分なもの。軽々と引っ張ってくれる。アクセルを踏み込んだときでも静かな室内が実現されているのも、エンジンをリヤミッドシップに搭載したことの効果が大きいし、ロードノイズなどが抑えられているのは騒音対策などがしっかりなされた結果といえる。
 リヤミッドシップの駆動方式は、FFに比べれば直進安定性で不利な面があるが、実際の走りではそれを感じさせることはなかった。限界域では違いが出るのかも知れないが、常用域では全く不利を感じない。これはコーナーの立ち上がりでハンドルを切った状態で加速したときなどでも同様で、ミッドシップであることのネガはまず感じられない。
 強いていえば、ステアリングを切り始めた当初の手応えと舵の効き具合に多少の違和感があるのが難点といえば難点。ただ電動式パワーステアリングのフリクションなどは感じさせない仕上がりだ。
 ベースグレードで120台後半からという価格設定は、軽自動車のものとしては明らかに高めの水準。専用設計となる部品が多いだけに止むを得ない面もあるが、もう少し手頃な価格であって欲しいところ。最上級グレードのGで4WDを選ぶと160万円を超え、カーナビなどのオプションを装着すると車両価格が200万円近いものになるからだ。
 買うならMの4WDがお勧め。車両本体価格は150万円強ほどだから、1BOX系の軽自動車などの上級グレード並みの水準。4WDがお勧めなのは2WDに比べて一段と高い操縦安定性が確保されるからだ。重心高が下がることも操縦安定性に貢献している。

代表グレード M 4WD
ボディサイズ[mm](全長×全幅×全高) 3395×1475×1600
車両重量[kg] 960
総排気量[cc] 659
最高出力[ps(kw)/rpm] 64(47)/6000
最大トルク[kg-m(N・m)/rpm] 9.6(94)/3000
ミッション 4AT
10・15モード燃焼[km/l] 18.0
定員[人] 4
税込価格[万円] 151.2
発売日 2006.1.24
レポート 松下 宏
写真 和田 清志

「i」でもっとも売りになっているのはハンドリングである。MRレイアウトが生み出す感覚はFFの軽自動車を乗り継いだ人にとって非常に新鮮だろう。軽快で小気味良いフィーリングを是非味わって欲しい。

リアのフロア下に収められた新開発、直列3気筒DOHC MIVEC インタークーラーターボエンジン。64馬力を発生しちょっと重量級の「i」を頼もしく加速させる。このレイアウトでターボだとオーバーヒートの心配もしてしまうが、エディショナルファンを設置したり、アンダーカバーで風を入りやすくしたりして対策しているので問題ないとのこと。ただリアシートに座っていてやかましいエンジン音は改良して欲しいポイント……。

軽自動車なのに、ナント前後でタイアサイズ(幅)が違う! これはバブル期のオープン型軽自動車「ホンダビート」以来のことでは? フロントのサイズは割と一般的であるものの、リアはエンジンの重さなどに配慮して太目のタイアで対応している模様。