車の全塗装の費用相場は軽自動車で50万円~、普通車だと100万円を超える場合もあります。塗装費用の相場は車のサイズ以外に塗料や工賃、塗装パターンによっても変わります。今回は全塗装の費用相場や、塗装剥がれの際の部分塗装の費用相場について解説します。「車を全塗装するのか」「部分塗装にするのか」といった判断材料になると嬉しいです。
- 車の全塗装の概要
- 車の塗装剥がれや部分塗装とは?
- 車の全塗装の費用相場
- 車の塗装剥がれ修理、部分塗装費用の相場
- 塗装剥がれには全塗装と部分塗装どっちがいい?
- 車の全塗装、部分塗装の工数期間の目安
- 車を全塗装する前に考えたいこと
- 車の塗装に関するまとめ
車の全塗装の概要
車の全塗装は、その名の通りボディ全体を新たに塗装し直すことです。全塗装と違い、部分塗装は特定の場所のみを塗装し直すことを指します。
また、全塗装といっても以下のように塗る範囲はいくつかのパターンがあります。全塗装のパターンによって費用も変わってきます。例えば、ドア開口部内側なども塗装する場合は、20〜30万円追加で費用がかかります。
【全塗装のパターン例】
- 外観の見えるところだけを塗る
- ドアの開口部や内側まで塗る
- 内装やエンジンなども脱着してボディ全てを塗る(レストア)
車の全塗装のメリット・デメリット
車を全塗装するメリットは、世界に一台だけの自分好みのボディカラーにできたり、色褪せや劣化したボディをリフレッシュできることです。
一方で車の全塗装のデメリットは以下のようなことがあげられます。
- 車を手放す時の査定額が下がることがある
- 新車時のオリジナルの塗装ほどの耐久性がないことがある
- 大きな出費が伴う
- 作業時間が掛かるので、しばらくの間、愛車に乗れない
- 依頼する業者や職人によって、塗装の仕上がりや耐久性の差が大きい
全塗装をする目的によっては費用面といったデメリットの方が大きく感じる場合があるので、その場合は部分塗装や車の買い替えを検討した方がよいかもしれません。
【補足】全塗装とフルラッピングの違い
全塗装は、下地処理も含めて塗料を使用してボディを塗り直すことです。
一方、フルラッピングはボディの塗装はそのままに、上からラッピングフィルムを貼ることです。
全塗装の方が耐久性は上ですが、フルラッピングは飽きれば剥がすことができます。フルラッピングは高品質なフィルムでも耐久性は3年程度と言われています。
また、車両売却時にラッピングを剥がすことで、元のオリジナルの塗装状態に戻すことができるので、カラーを変更することによる査定額ダウンの心配がありません。
ただし、簡単かつ手軽にできそうなイメージのあるフルラッピングですが、全塗装の費用と比較しても決して安いものではありません。
むしろ、全塗装よりも高額になることもあり、非常に高額な費用のかかるカスタムのひとつです。
車の塗装剥がれや部分塗装とは?
車の塗装剥がれには大きく分けて経年劣化とボディの傷による、2つのパターンがあります。
- 経年劣化で、塗装の色褪せやクリアの剥げが発生する
- ボディの傷が原因で、塗装がパリパリと剥がれる
塗装剥がれのよくある発生箇所
塗装の色褪せやクリア剥げが起きやすいのは、ボンネットやルーフなどの太陽の紫外線ダメージを直接受けやすい上面と、バンパーやドアミラーのような樹脂パーツです。
特にソリッド系(単色でシンプルな塗料)のカラーや、赤色のボディカラーは他の色と比べると劣化しやすいです。
一方で、傷が原因で塗装がパリパリと剥がれる症状が発生しやすいのは、狭い道などでドライバーにとって死界になり当てがちな、ボディサイド下部のサイドシル部分や、フェンダーラインなどです。
部分塗装の依頼シーン
一部分の傷による塗装剥がれをきれいにしたい場合は、部分塗装になります。傷が原因の塗装剥がれは、ボディの錆発生や腐食につながるおそれがあることから、早期の修理依頼が望ましいです。状態がひどい場合は、鈑金を伴うこともあります。
色褪せやクリア剥がれが局所的なものであれば、全塗装までしなくても該当箇所の部分塗装で、十分にきれいになります。
また、ボンネットやルーフといった上面の色褪せやクリア剥げであれば、自然なカラーアクセントになるので、ラッピングフィルムを貼るという選択肢もあります。
車の全塗装の費用相場
車の全塗装をする場合、軽自動車では50万~70万円、ミニバンでは70万~100万円ほどの費用がかかります。
ただし、全塗装の費用は使用する塗料や、ボディサイズの違いによる塗る面積の違い、または車体形状の違いによる工数(時間)の違い、さまざまな要因によって同じ車を塗る場合でも費用には大きな違いが出てきます。
全塗装の費用は高額
外観部のみの車の全塗装の費用相場は以下のとおりです。
車のサイズ・種類 | 全塗装の費用 |
---|---|
軽自動車 | 50〜70万円 |
コンパクトカー | 60〜80万円 |
SUV、ミニバン | 70〜100万円 |
※ドア開口部内側なども塗装する場合は、「+20〜30万円」追加で費用がかかります。
どこまでこだわるかで費用は大きく異なる
全塗装の費用相場は、板金塗装工場によって千差万別です。
極端な話、30万円で全塗装してくれる工場も探せばあるでしょう。
逆に、先ほどの費用相場以上の費用(100万円以上)を掲示されることもあります。
こういった技術力が問われる作業は、基本的にはクオリティを求めれば、それに伴って費用が高額になることは必然です。
たとえば、ドア1枚を塗装するにしてもそのまま塗るのか、ドアハンドルや、ドア枠等のゴム・樹脂部品を脱着して塗るかでは、工賃は大きく異なります。
また、下地処理をどれだけ時間をかけて丁寧にするかで、仕上がりの品質は変わってきます。
とにかく費用を抑えたいにしても、安いには安いなりの理由があることを理解しましょう。
塗装料による費用相場
塗料は種類によって費用が異なります。
一般的に新車時にオプションカラーとして設定されているような色は、塗料代も高いです。
また、赤色やキャンディ色、メタリック/マイカ色は高いです。
安い塗料と高い塗料とでは、2〜3倍の価格差があります。
例えば、2〜3万円/1缶のものもあれば、同じ容量でも塗料によっては10万円近くするものもあります。
また、使用する塗料の量は軽自動車であれば3kg程度、大型の車であれば4〜5kgを使用します。(クリアは別)
工数による費用相場
全塗装にかかる費用のうち、もっとも大きく占めるのは職人の工賃です。
全塗装は工数(作業時間)が大きくかかる作業なので、全体の費用が高額になります。
また、先ほどすこし触れたようにゴムや樹脂モールの脱着や細かい部品の脱着の有無、下地処理の品質や塗装の手順等によって、かかる工数は大きく変わってきます。
全塗装にかかる費用が、同じ車でも数十万単位で異なることがあるのは、塗料代よりも工数の違いによるところが大きいです。
【補足】普通車と軽自動車でも全塗装の費用は大きく変わらない
全塗装にかかる費用は、ミニバンや大型のSUVとなると手間も塗る面積も増えるので、高くなるのは当然です。
逆に軽自動車であれば、イコール安い…というイメージがあるかもしれません。
しかし、依頼する業者によっては軽自動車と一般的な普通車ではそこまで費用が大きく変わらないこともあります。
これは、最近の軽自動車は1BOXタイプが主流で塗装面積が広くなり、コンパクトカーなどの普通車と比較して、塗装の範囲や手間が変わらないことが理由です。
車の塗装剥がれ修理、部分塗装費用の相場
塗装剥がれの補修や、部分塗装する場合の費用相場を解説します。
再塗装で修理する場合
再塗装で修理する場合、同じサイズの塗装剥がれであってもパネル1枚分のみの塗装で可能な場合と、周囲のパネルにボカシが必要か等によって費用は大きく変わってきます。
(※ボカシとは、再塗装した箇所が周囲の色と馴染むようにする塗装技術)
スマホサイズほどの部分塗装であれば10,000円前後で済むこともあります。
ドアミラーであれば、15,000円/1箇所 程度の修理費用です。
基本的には手のひら大のサイズまでであれば2〜4万円程度が修理の費用相場となります。
範囲が広がったり、傷を伴うことで塗装前にパテ盛り等のボディ補修が必要な場合は、10万円程度かかることもあります。
塗装剥がれをラッピングで隠す場合
塗装剥がれをラッピングする場合の費用の例は以下のとおりです。
- ボンネットの場合…40,000円〜60,000円
- ルーフの場合…40,000円〜90,000円
- Bピラーの場合‥5,000円〜/1箇所
ボンネットやルーフのラッピングは、軽自動車であれば40,000円前後で施工できる場合があります。
また大型ミニバンやSUVなどになると、ルーフの面積も広く、全高が高いので施工にも手間がかかることから、費用が高くなる傾向にあります。
【補足】白ボケの直し方や色の維持方法
白ボケは、洗車などのボディメンテナンスを日頃あまりおこなっていない車に起きやすいです。また、紫外線の影響や雨、高温といった外的な環境の要因も大きいので、屋外駐車の車は経年劣化により白ボケしやすいです。
「すこし塗装がくすんできたかな?」と初期段階で気付いた場合は、コンパウンドで磨いて塗装の表面を整えることで、ツヤが復活することもあります。
一方で、はっきり白ボケが目立ってきている場合には、磨くだけでは元通りとまではいかず、手遅れであることがほとんどです。
そうならないためには、何よりこまめに洗車をして車についた汚れを落として、ボディの状態を美しく保つことが大切です。
コーティングの施工によりボディを保護することも効果的です。
しかし、コーティングしたから安心だとボディメンテナンスを放置してしまうと、コーティングしない時よりボディ表面が傷んでしまうこともあるので注意しましょう。イオンデポジットの付着などが懸念されます。
予防策として屋外駐車であればカーポートを設置したり、ボディカバーをかけたりして物理的に直射日光を防ぐことがあげられます。
塗装剥がれには全塗装と部分塗装どっちがいい?
全塗装と部分塗装どちらにするかの判断について、あくまで個人的なものですが、おすすめの目安をお伝えします。塗装剥がれを修理するときに、全塗装と部分塗装どちらが良いか悩むのであれば、今後どれくらいその車に乗り続けるかが1番の決め手になります。
- 全塗装をおすすめする場合
5年10年、さらにその先まで乗れる限りは乗り続けるつもりでいる場合。これを機にボディ全体をリフレッシュして心機一転したい場合 - 部分塗装をおすすめする場合
3年5年程度、しばらくは乗りたいし、見た目が気になる場合 - 塗装剥がれを修理しない
次の車検までは乗る、近いうちに乗り換えを考えている、車の見た目は気にならないので走ればokと考えている場合
全塗装は「数十万円〜100万円以上」はくだらない高額な費用がかかります。
同じ金額を出せば、いまの車よりも状態の良い中古車を買える場合もあるでしょう。
愛車への愛着と、今後のカーライフプラン、費用のバランスを考慮して、自分の1番納得のいく方法を選択してください。
車の全塗装、部分塗装の工数期間の目安
車の塗装工数期間として一般的に全塗装は2週間~1ヶ月、部分塗装は3日~1週間ほどかかります。より良い仕上げを求め、塗装の手間が増えるほどに、車の全塗装や部分塗装の工数は増えます。
全塗装の工数
一般的には車の全塗装に掛かる工数は、2週間〜1ヶ月ほどです。
金額の高い全塗装になるほど、作業も丁寧で部品の脱着や、下地処理も含めた塗装にかける手間も増える傾向にあるので、それに伴って工数も増えます。
また、エンジンや内装などもすべて脱着して、徹底的に作業するような場合(レストア)は、数ヶ月単位の期間を要します。
部分塗装の工数
車の部分塗装の場合、最短であれば2〜3時間で修理可能なことがあります。
車を預けて修理する場合は、3日〜1週間程度かかります。
車を全塗装する前に考えたいこと
車を全塗装することを検討しているひとには、大きく分けて以下の2つのパターンがあると思います。
- 車が趣味でカスタムの一環
- 塗装の劣化が気になるのでリフレッシュ
いずれにしても全塗装は高額な費用がかかります。
- どこでやるか?(依頼先)
- どこまで仕上がりにこだわるか?
- そもそも、本当に必要なのか?
しっかりと悩んで、考える必要があります。
全塗装は査定額が下がる可能性が高い
全塗装の意図がカスタムであってもリフレッシュであっても、基本的には車両売却時の査定額が下がる可能性を考慮しましょう。オリジナルの色と同色で全塗装する場合も同様です。なぜなら、再塗装はオリジナルの塗装と比較して今後、塗装の早期劣化の可能性が否定できないからです。
「元の状態より綺麗に塗装してもらったのだから、査定も上がるはずだ!」というのはかならずしも通用しないことを理解しましょう。
一方で、人気かつ希少性の高い低年式車で高品質な塗装状態などであれば、専門ショップに持ち込めば逆に査定額が上がることもありますが、非常に稀なパターンです。
これを機に買い替えも視野に入れる
リフレッシュでの全塗装を考える場合、すでに新車から年数が経過して、走行距離も増えていませんか?(10年〜/10万km〜)
古い車であれば、全塗装をするよりも車の買い替えを検討する方が、車の健康状態も塗装の状態も良い車と出会える可能性もあります。
特段なこだわりがないのであれば、全塗装するよりも車の買い替えをおすすめします。
車の塗装に関するまとめ
全塗装や部分塗装といった板金・塗装は、仕上がりの質を求めるほど、金額は高額になります。
仕上がりの質は以下の3つの要素で左右されます。
- 塗料の質
- 下地処理の質
- 職人の技量
仕上がりの質にこだわる場合は、信頼のできる塗装業者選びがとても重要です。
安い作業には安いなりの理由があります。
安さだけで選ぶと、後悔することもあるかもしれません。
とは言っても、かなり高額な整備費用となる全塗装。
趣味やカスタムの要素以外で全塗装であれば、コスパを考慮すると、新しい車への乗り換えのきっかけにする方が良いかもしれません。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。