黒字に黄色い文字のナンバープレートである黒ナンバー。貨物運送業を行う軽自動車がつけるもので、あまり馴染みが無い人もいるでしょう。ネット通販の台頭により近年は軽自動車の貨物運送が解禁され、個人でも事業用として取得する人が増えています。
今回は、黒ナンバー取得の条件や方法について解説します。
黒ナンバーとは
黒ナンバーとは、事業用の軽自動車に装着されるナンバープレートのことです。具体的には、軽貨物運送事業(貨物軽自動車運送事業)に使う車両に装着されます。見た目は黒地に黄色の文字が入ったナンバープレートです。
軽貨物運送事業は届出を行うだけで開業できますが、事業に使用する車両には必ず黒ナンバーを付けなければいけません。
現在は5ナンバーの軽乗用車でも取得可能
黒ナンバーを取得できる軽自動車は、以前は4ナンバー車(地域名の隣の番号が4から始まる)か、構造変更した軽乗用車に限られました。4ナンバー車は車検証の用途欄に「貨物」と記載される小型自動車で、いわゆる軽バンや軽トラックのことです。
しかし令和4年10月27日以降は、5ナンバーの軽乗用車でも黒ナンバーの取得が可能になっています。
事業用の普通車は「緑ナンバー」
事業用の普通車に装着されるナンバープレートは緑地に白の文字で、「緑ナンバー」と呼ばれます。普通車の場合は貨物運送だけでなく、人の運搬(タクシー)を行う車両にも緑ナンバーが装着されます。
黒ナンバー取得のメリット・デメリット
【メリット】
- 自家用車より税金が安い
- 少ない初期費用で、早く開業できる
黒ナンバー車は、自家用の軽自動車と比べて自動車税や自動車重量税が安いです。また黒ナンバーの場合、自分で手続きをすれば数千円で取得でき、手続きも1~2日で完了します。車両1台と運転手1人から始められる点も含めて、事業を始めやすいのもメリットです。
【デメリット】
- 自家用車より保険料が高い
- 加入できる任意保険が少ない
長距離を走る可能性が高い軽貨物車は、自家用の軽自動車より自賠責保険料や任意保険料が高いです。また任意保険では加入できるプランも限られています。任意保険料は、月1万円以上かかるケースが多いです。
黒ナンバーの取得条件
黒ナンバーの取得条件は、以下の通りです。
- 条件①車両が1台以上ある
- 条件②営業所・休憩施設がある
- 条件③営業所から2㎞以内に車庫がある
- 条件④運送約款を用意している
- 条件⑤運行管理体制を整えている
- 条件⑥損害賠償能力がある
条件①車両が1台以上ある
軽貨物運送事業の開業に必要な最低車両台数は1台です。リース車両のように、自分で所有していない車両でも構いません。
現在は4ナンバー車や構造変更をした軽乗用車でなくても、黒ナンバーを取得できます。ただし構造変更をしていない軽乗用車は、最大積載量が以下のように限られます。
積載できる貨物の重量は、乗車定員数から乗車人数を控除した数に五十五を乗じた重量(単位キログラム)以内とすること。
出典:国土交通省「貨物軽自動車運送事業における軽乗用車の使用について」
例えば乗車定員4人に対して運転手1人が乗車する場合、最大積載量は(4-1)×55=165㎏です。これに対して4ナンバー車の最大積載量は350㎏です。そのため運送業として便利なのは、4ナンバー車でしょう。
条件②営業所・休憩施設がある
営業所や休憩施設は、自己所有でなくても賃貸物件で構いません。また個人事業主の場合、自宅を営業所兼休憩施設として届け出ることも可能です。
条件③営業所から2㎞以内に車庫がある
原則として、車庫は営業所の近くに併設する必要があります。ただし併設が難しい場合は、営業所から半径2㎞以内の設置が認められています。また自己所有の駐車場でなくても構いません。
条件④運送約款を用意している
約款とは、事業者が不特定対数の人と同じ契約をするために定めている契約条項です。運賃や事業者の責任を明記します。
運送約款は、国土交通省に「標準貨物自動車利用運送約款」というものが用意されています。一般的には自分で作成せず、この約款を活用します。提出書類の一つ「運賃料金設定届出書」に使用の旨を記載すれば、用意は不要です。
条件⑤運行管理体制を整えている
開業にあたっては、乗務前の点呼など指導・管理体制を整えておく必要があります。運行管理には管理者が必要ですが、事業者自身が管理者になっても構いません。
条件⑥損害賠償能力がある
万が一事故を起こしてしまった場合のため、任意保険に加入するなど、損害賠償能力を有する必要があります。
黒ナンバーの取得方法
取得までの大まかな流れは以下の通りです。
- 必要書類の準備
- 運輸支局で書類提出、事業用自動車等連絡書の受取
- 軽自動車検査協会で書類等提出
- ナンバープレートの受取
黒ナンバーの取得では、営業所の地域を管轄する運輸支局と軽自動車管理協会の2ヶ所に足を運ぶ必要があります。
必要書類・ものと提出先
黒ナンバーの取得に必要な書類やもの、提出先は以下の通りです。
書類 | 提出先 | 備考 |
---|---|---|
貨物軽自動車運送事業経営届出書 | 運輸支局 | ・正本と控え(コピー可)の2部必要 ・運輸支局で入手または運輸支局のHPで書式DL |
事業用自動車等連絡書 | 運輸支局、 軽自動車検査協会 |
・正本と控え(コピー可)の2部必要 ・運輸支局で入手または運輸支局や国土交通省のHPで書式DL ・運輸支局で押印を受けたものを、軽自動車検査協会に提出 ・押印を受けてからの有効期間は1ヶ月 |
貨物軽自動車運送事業運賃設定届出書 | 運輸支局 | ・運輸局提出用、運輸支局提出用、控えの3部必要 ・運輸支局で入手または運輸支局のHPで書式DL |
運賃料金表 | 運輸支局 | ・正本と控え(コピー可)の2部必要 ・運輸支局で入手または運輸支局のHPで書式DL |
車検証のコピー | 運輸支局 | ・1部必要 |
車検証原本 | 軽自動車検査協会 | ・クルマに置いてある原本を持参 |
ナンバープレート | 軽自動車検査協会 | ・前後に装着している2枚を持参 |
住民票(個人事業主) ※法人の場合は法人謄本 |
軽自動車検査協会 | ・発行から3ヶ月以内のものを用意 |
なお提出書類の様式は都道府県によって異なる場合もあります。管轄の運輸支局のHPなどで、書類を改めて確認しましょう。
黒ナンバーに関するよくある質問
Q. 取得にかかる費用は?
黒ナンバー取得にかかる費用は、住民票の発行手数料やナンバープレートの発行料金程度です。ナンバープレートの発行料金が1,500円前後なので、2,000~3,000円程度でしょう。
Q. 代行での取得はできる?費用相場は?
黒ナンバーの取得は、行政書士事務所や専門の代行業者に依頼できます。代行での委託費用は2~4万円が相場です。
Q. 税金はいくら安くなる?
自家用の軽自動車の場合、自動車税は年間1万800円です。一方、事業用の貨物軽自動車(黒ナンバー)は年間3,800円です。また重量税は自家用の軽自動車が6,600円(2年)、事業用の軽貨物車が5,200円(2年)です。
Q. 車検は何年ごとに受ける?
黒ナンバーの場合、継続車検は自家用車と同じように2年に一度です。ただし初回の継続車検も、新車登録(届出)から2年後です。この点は自家用車と異なるので注意しましょう。
Q. 黒ナンバー車はプライベートと併用できる?
黒ナンバー車を事業用とプライベートの双方で使うことは可能です。ただしガソリン代などは、事業用(経費計上分)とプライベート用で分けて経費精算する必要があります。
Q. 軽貨物運送事業におすすめの車種は?
軽貨物車で人気なのは、スズキ「エブリィ」、ダイハツ「ハイゼットカーゴ」、ホンダ「N-VAN」の3車種です。
特にエブリィは軽バンの中でも積載性に優れており、荷物をより多く積みたい人におすすめです。全体的に車両価格も安価で、中古車も多く出回っています。
Q. 節税対策に中古車が良いって本当?
個人事業主や法人が車両を購入する場合、中古車はお得だといわれます。これは、中古車だと減価償却期間が短く、一度に計上できる経費が大きくなりやすいからです。普通車では約4年落ち、軽自動車では約2年落ちで一度に全額償却できるようになります。詳しくは以下の記事を参照してください。
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- Supervised by norico編集長 村田創
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中古車のガリバーに勤務して20年以上のベテランが車の知識をわかりやすく解説します。車のことは、多くのメーカーを横断して取り扱うガリバーにぜひ聞いてください。「車ってたのしい!」を感じてほしいと思っています!