ETCが使えなくなる?2022年問題と2030年問題、対象機種の見分け方

ETCが使えなくなる?2022年問題と2030年問題、対象機種の見分け方

ETCの2022年問題と2030年問題とは、法改正やセキュリティ規格の変更により、将来的に一部のETC車載器が使えなくなるというものです。ここでは、いつから、どの機種が使えなくなるのか、対象機種の見分け方などを分かりやすく解説しています。

ETCの「2022年問題」「2030年問題」とは

ETCの「2022年問題」「2030年問題」とは、法改正やセキュリティ規格の変更により、一部のETC車載器が使えなくなるというものです。

2022年問題の対象機種はごくわずかですが、2030年問題ではやや多くの機種が使えなくなります。これを機に、愛車のETC車載器が将来も使えるのか、一度確認してみましょう。

対象機種はごくわずかの2022年問題

「2022年なら過去の話」と思うかもしれませんが、2023年8月末現在、2022年問題の対象機種はまだ使える状態です。ここでは名称の由来や規制の経緯を解説します。

電波法改正で一部機種が使用不可に

2022年問題で使えなくなるのは「現行の電波法の規格を満たさないETC車載器」で、主に2007年以前に製造された製品です。

2005年12月に電波法の関連法令が改正され、通信時に発生する「スプリアス」という不要電波の許容値が厳格化されました。この新基準は2007年12月から全面適用となっていますが、法令の改正前後に旧基準で認証を受けた無線設備も一定期間使えるよう、2022年11月末まで猶予期限が設けられていました。

【スプリアスとは】
必要周波数帯以外の外側に発射される不要電波。スプリアスが多いと、電波障害を起こすことがある

対象となる車載器

2022年問題の対象機種は非常に少なく、対象機種が存在するメーカーも以下の6社のみです。ETC車載器の取扱説明書や保証書、車載器セットアップ証明書や機器本体のラベルに記載されている「型式登録番号」で、対象製品かどうか確認できます。

対象メーカー(対象機種掲載ページ)

日産 パナソニック デンソー
マツダ クラリオン 矢崎

名称の由来である猶予期限は延長中

「2022年問題」という名称は、当初予定されていた猶予期限(2022年11月末)が由来です。しかし新型コロナウィルスの影響で設備製造や無線局の移行に遅れが生じている状況を踏まえ、総務省は2021年8月に「当分の間」期限を延長すると発表。現在も猶予期間が続いています。

移行後も通過はできるが違法に

2022年問題は法改正により一部のETC車載器の使用が禁止されるだけで、ETCシステム自体には変更がありません。そのため今後猶予の期限を迎え、新基準への移行が完了しても、対象の車載器でETCを通過すること自体は可能です。ただし、この場合は電波法違反として、以下のような処罰を受ける可能性があります。

【処罰内容】(※参考:電波法

  • 不法設置・運用のみ:1年以下の懲役又は100万円以下の罰金
  • 公共性の高い無線局への妨害:5年以下の懲役又は250万円以下の罰金

やや多くの機種が使えなくなる2030年問題

2030年問題の対象機種は、2022年問題に比べるとやや多いです。対象機種は将来的にETCゲートを通過できなくなります。

セキュリティ規格の変更が理由

2030年問題は、ETCシステムのセキュリティ規格の変更により生じるものです。サイバー攻撃などの脅威に備え、規格が変更されます。

既に新セキュリティ規格の内容は定められており、対応のETC車載器も順次発売されています。現在のETCシステムは新旧双方の規格に対応しており、将来的に新セキュリティ規格のみに対応するよう仕様が変更される予定です。

旧規格対応の車載器は通過できなくなる

2022年問題の対象機種は、猶予期間終了後も物理的にはETCゲートを通過できます。一方2030年問題の対象機種の場合、ETCシステムのセキュリティ規格変更後はETCゲートそのものを通過できなくなります。古いETC車載器を搭載したまま通過しようとすれば、事故を招きかねません。

規格変更は「最長で2030年頃まで」に

このセキュリティ規格の変更が「2030年問題」と言われるのは、変更時期が「最長で2030年頃まで」とされているからです。

今回の規格変更は将来的な脅威に「備える」ものであり、現行の規格(旧規格)で重大な問題が発生している訳ではありません。国土交通省は、このまま大きな問題がなければ規格変更を「最長で2030年頃まで」に行うと示しています。反対に言えば、何か問題が発生した場合は、規格変更の時期が早まると考えられます。

今のうちに愛車のETC車載器の確認を

新セキュリティ規格の対応製品は、2015年前後から各メーカーで発売されています。しかし2018年頃に発売された製品でも、旧規格の対応製品があるので気をつけなければいけません。例え最近購入した製品であっても、旧規格対応の在庫品の場合もあるので、一度愛車のETC車載器を確認した方が良いでしょう。

2030年問題の対象機種の見分け方

愛車のETC車載器が「新セキュリティ規格対応か、旧規格対応か」を確認する方法は、2つあります。

方法①車載器管理番号で確認する

車載器管理番号でETC新セキュリティ規格対応か確認する方法

※国土交通省「新・旧セキュリティ対応車載器の識別方法」を加工して作成

車載器管理番号は、取扱説明書や保証書、車載器セットアップ申込書、車載器セットアップ証明書、また車載機本体にも記載されていまます。 管理番号の1桁目が「1」なら新セキュリティ対応車載器、「2」なら旧セキュリティ対応車載器です。

方法②車載器本体のデザインで見分ける

車載本体のデザイン1

車載本体のデザイン2

※国土交通省「新・旧セキュリティ対応車載器の識別方法」より引用

書類を確認しなくても、車載器本体のデザインで見分けがつく可能性が高いです。

【新セキュリティ対応車載器の特徴】

  • 「●●●」のマークがある
  • 「ETC2.0」のロゴがあり、「■」マークがない

【旧セキュリティ対応車載器の特徴】

  • 「●●●」のマークがない
  • 「DSRC ETC」のロゴがある
  • 「ETC2.0」のロゴがあり、かつ「■」マークもある

ただし車載器の型式により、識別マークが描かれていない場合もあります。判断がつかない場合は、購入した販売店や車載器のメーカーに問い合わせましょう。

ETC車載器に関するQ&A

Q. 型式登録番号と車載器管理番号は同じもの?

型式登録番号と車載器管理番号は別のものです。型式登録番号は製品の型式を判別する番号で、車載器管理番号は個々の車載器を識別する番号です。

Q. 「ETC2.0」って何?

ETC2.0は従来のETCをバージョンアップしたもので、2016年の春頃から販売されています。従来のETC車載器との違いは以下の通りです。

  • 従来より広範囲の渋滞情報を受信できる
  • 渋滞状況や気象状況を静止画で確認できる
  • 音声や画面で落下物や事故等の注意喚起をしてくれる
  • 一部の場所で初乗り料金をリセットせず一般道に「一時退出」できる

なおETC2.0でも、新セキュリティ規格に対応しているとは限りません。

Q. 中古車でもETCはついてる?

ETCがついている中古車の探し方

※ガリバーの在庫検索画面

中古車でも、ETC車載器を装着している車両は多いです。例えば2023年8月28日現在のガリバーの在庫では、約2/3の車両にETC車載器が搭載されています。 インターネットの在庫検索ではETC装着の車両のみを検索できることも多いので、チェックしてみてください。ただし装着されている製品の種類は、販売店に問い合わせないと分からない場合が多いです。

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Supervised by norico編集長 村田創

norico編集長_村田創

中古車のガリバーに勤務して20年以上のベテランが車の知識をわかりやすく解説します。車のことは、多くのメーカーを横断して取り扱うガリバーにぜひ聞いてください。「車ってたのしい!」を感じてほしいと思っています!