安心安全な愛車の運行のためにも、走行前の日常点検はドライバーにとって大切な義務のひとつです。とはいえ、実際にやっているという人は少ないのではないでしょうか。
この記事では日常点検の頻度や、点検のやり方について現役の整備士目線でわかりやすく解説します。
車の日常点検は毎日やるべき?
車の日常点検は、その車の管理者およびドライバーがおこなうべき義務として、道路運送車両法において定められています。
特にタクシーやバスのようなお客さまを乗せて走る事業用の車は、安全運行のため毎日の日常点検実施を会社で厳しく管理しているケースがほとんどです。
一般ドライバーの自家用車も同様に、乗車前には日常点検が推奨されています。
ただ、毎日実施するに越したことはありませんが、日常点検に関する法令が定められた昔と比べて現在の車は故障しにくくなっており、実際にはそこまで頻繁におこなう必要はありません。
そのため、自家用車は最低でも1ヶ月に一回程度、自分自身で日常点検をおこなうことをおすすめします。
そうすることで、トラブルを未然に防げたり車の変化を早期に発見することができます。
一般的な車の日常点検項目
一般的な車(自家用車)の場合、どのような箇所を日常点検すればよいのかを「車の周囲」や「エンジンルーム」、「車内」といった場面ごとに分けて解説していきます。
車の周囲でおこなう点検
まずは乗車前に、車の周りをぐるっと一周しながら以下のような異常がないか点検します。
- タイヤの状態
- 車の下廻りにオイル漏れや冷却水漏れはないか
- 灯火類は割れていないか
- ワイパーゴムが千切れたりしていないか
タイヤは重点的にチェックしよう
タイヤの日常点検は、一般ユーザーにとっての難易度のハードルも高くなく、なおかつ重要な部品なので特に定期的なチェックは欠かさず実施してください。
タイヤは年数経過するとひび割れが出てきて、ひどくなるとバーストの原因になります。一般に溝があっても4〜5年程度で交換することが推奨されています。
また、知らぬ間に縁石にタイヤをヒットさせたりしていると、タイヤ側面にコブができていることがあり、これもバーストにつながるおそれのある非常に危険な状態です。
残り溝が少ないとタイヤの排水機能が低下するので、雨の日にハイドロプレーニング現象を起こしやすくなり、スリップ事故の原因になります。
空気圧は非常に重要で、高すぎても低すぎてもNGで規定値に合わせた調整がおすすめです。
ガソリンスタンドに行けば空気圧ゲージがあり、誰でも確認と調整が可能です。
空気圧が足りないと、タイヤが熱を持ちやすくなりバーストの原因になります。
タイヤの日常点検で見るべきポイントを以下にまとめます。
- 側面にコブがないか
- 表面にひび割れや亀裂がないか
- 残り溝は十分にあるか
- 空気圧は適正値か
エンジンルームでおこなう点検
エンジンルームで行う点検は主に以下のようなものです。
- ウィンドウウォッシャー液の量
→冬場に氷点下になる地域は、水ではなく市販のウォッシャー液を使用することで、凍結予防になる - ブレーキフルードの量
→フルードタンク内のMAX-MINの目盛りの間にあるか確認 - 冷却水の量
→リザーブタンク内のMAX-MINの目盛りの間にあるか確認 - エンジンオイルの量
→エンジン停止状態でオイルレベルゲージを抜いて一旦拭き取り、再度差し込んだ後にF-Lの間に液面が付着するか確認
※ゲージの目安量の刻印は車種によって異なります。また、レベルゲージの無い車もあります。その場合は車内のメーターやモニターで確認できるものがあります。 - バッテリーの液量
→バッテリーの液量がUPPERLEVEL-LOWLEVEL内にあるか、または6つある部屋のうちどこか1箇所だけ極端に量が違わないか確認。見づらいので、背面からライトで照らすと分かりやすいです。ただし、液量を確認できない作りであったり、補充できない密閉型のバッテリーを採用しているケースも多いです
車内でおこなう日常点検
日常点検は車外だけではなく車内でも実施します。
エンジンルーム内の点検などと比較すると、運転前に簡単にチェックできるので、実施のハードルも低いです。
車内でおこなう日常点検は以下のとおりです。
- ブレーキペダルの踏みしろ
→エンジンの掛かっていない状態で数回踏み込んで、ペダルが固くなるか。またその状態で踏み込んだままエンジンを始動して、ペダルが奥に入るか確認。また、踏み残りしろが通常より少なくなっていないか確認 - パーキングブレーキの引きしろまたは踏みしろ(電動パーキング車を除く)
→引きしろ・踏みしろは車種によるが5〜8ノッチ程度が適切。多すぎないか少なすぎないか確認 - メーター内に警告灯が点灯していないか
→点灯している場合、整備工場に連絡をする - ウォッシャーの噴射状態は良好か
- ワイパーの拭き取り状態は良好か
ほかに人がいる時にやりたい灯火装置の点検
ほかに人がいる場合には、ヘッドライト等の灯火類が切れていないか是非チェックしていただきたいです。
特にブレーキランプやナンバー灯は普段、目につかない部分なので球切れのまま走行している車が多いです。
みなさんも街中で、よく見かけませんか?
車内でライトスイッチを操作して、外にいる人に前後のライトの点灯状況を確認してもらいましょう。
灯火装置の点検項目は以下のとおりです。
- 前後のスモールランプ
- ヘッドライトのロービーム
- ヘッドライトのハイビーム
- 左右前後のウィンカー
- ブレーキランプ
- バックランプ
- フォグランプ(ある場合)
走行中におこなう点検
走行中は普段と比べて車に以下のような違和感がないか確認します。
- 加減速の状態
→アクセルの踏み込みに応じたスムーズな加速をするか、ブレーキの踏み込みに応じたスムーズ減速をするか - 異音の確認
→足廻り、エンジンなど各所から異音の発生はないか
明らかな異音や走行に違和感を感じた場合は、すぐに車屋さんに相談しましょう。
取り入れやすい車の日常点検
普段、車を使用するなかで取り入れやすい日常点検を3つご紹介します。
タイヤのチェックは定期的に
すでに解説したように、タイヤの定期的なチェックは必要性が高いです。
空気圧の点検は1ヶ月ごとにできればベストで、無理な場合は最低でも2〜3ヶ月ごとには実施したいところです。
空気圧は自然と抜ける分だけではなく、外気温によっても変化するので、特に夏の暑くなってきたタイミング、冬の寒くなってきたタイミングに合わせて確認することをおすすめします。
また空気圧の点検と併せて、タイヤの残り溝や劣化の状態も点検するようにしましょう。
ワイパーの拭き取り状態は雨の日に確認でもOK
日常点検の中にワイパーの点検も含まれていますが、雨の日にワイパーを使うときに拭き取り状態を意識して確認しておけば、あえて日常点検ごとにする必要はありません。
拭き残しが気になったり、ワイパーがビビるときは良好な視界確保のためにも早めに処置しましょう。
エンジンオイルの次回の交換距離を確認
エンジンルームでおこなう、エンジンオイルの汚れや量のチェックは意外とハードルが高いです。
エンジンオイルを交換したときは、ほとんどの整備工場で次回の交換距離を書いたステッカーを運転席ドアを開けた見やすいところに貼ったり、カードをウィンカーやライトスイッチにぶら下げたりします。
そこで普段の車の使用頻度にもよりますが、1ヶ月に1回で良いので、このステッカー(カード)を確認して、現在の走行距離と見比べて適切なオイル交換時期を過ぎないように心掛けましょう。
適切なオイル交換時期を守れていないユーザーは意外と多いですが、エンジンの健康維持のために大切なことです。
車の日常点検のやり方
日常点検は毎日ではなくても、ガソリンスタンドへ給油に行ったタイミングや洗車をするときなど、何かをするついでの分かりやすいタイミングを自分のなかで決めておくと実施しやすいです。
また、日常点検に便利なチェックシートをJAFのホームページよりダウンロードすることができます。
注意点や、見るときのコツを写真を使って解説してあるので、こうしたチェックシートを使うこともおすすめです。
特にエンジンルーム内の油脂類の補充や点検は、補充場所を誤ると非常に危険です。
わたし自身も、過去にエンジン冷却水のリザーブタンクにウォッシャー液を満タンに補充してしまったオーナーを見たことがあるので、意外と他人事ではありません。
そこで、マイカーの取り扱い説明書にもその車種に合わせた日常点検のやり方が載っているので、参考にすると良いでしょう。
日常点検は慣れれば10分程度あればできます。
整備士のまとめ
日常点検は必要だと分かっていながらも、なかなか実施のハードルが高く疎かになりがちです。
いきなりあれもこれも始めるのは簡単なことではありません。
タイヤやワイパーの状態、灯火類の点灯状況など、ガソリンスタンドでの給油や洗車のついでにできる簡単なことから徐々に始めてみると習慣化しやすいです。
せっかくの大切な愛車の健康ために、すこしずつ関心ごとを増やしていってみましょう。
- Supervised by 整備士 ヒロ
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保有資格:2級整備士。国産ディーラー整備士、輸入車ディーラー整備士の経験がある、現役の整備士。 整備士経験は10年以上で過去にはエンジニアとして全国規模のサービス技術大会に出場。 車の整備に関する情報をtwitterで発信している。