モータースポーツのような走りが魅力のBMW Mシリーズ。その中でも、M2はコンパクトスポーツカーとして人気を集めている。今回は2023年2月にフルモデルチェンジを果たしたM2について、試乗を通じてその走行性能や価格、燃費を解説する。
中古車情報
- スリリングだったが、爽快感抜群だった初代M2(F87型)
- 古典的かつ力強いスタイリングの2代目M2(G87型)
- そそる「Mスイッチ」
- 日本の道路事情でも扱いやすいM2
- クルマとドライバーが、一体化するようなハンドリング
- M2は硬めの乗り心地。街中、山道ではコンフォートモードを推奨
- 最後の純ガソリン車になるか?
- M2の燃料と航続距離
- BMW M2新車価格
- BMW M2燃費、最高出力、ボディサイズなど燃費
スリリングだったが、爽快感抜群だった初代M2(F87型)
2016年、初代BMW M2(F87)を筑波サーキットで試乗した際、刺激的な走りに感動したことをよく覚えている。直6 3.0Lツインターボエンジンは基本的にM3やM4と同じだが、最大出力は若干抑えられ370ps。それでも、初代M2(F87)はホイールベースが短いため、M3/M4よりもシャープなハンドリングを実現していた。タイトターンの多い筑波サーキットでは、むしろM3/M4より速く感じたほどだ。
ただ、切れ味鋭いハンドリングはドライバーに高いスキルを要求する。電子デバイスを完全オフにすると、スピンする危険が高くなるスリリングな一面も。だが、それをうまく操れたときの快感は格別だった。その楽しさが評価され、初代M2(F87)は2016-2017日本カー・オブ・ザ・イヤーのエモーショナル部門賞を受賞した。
古典的かつ力強いスタイリングの2代目M2(G87型)
そんな初代M2が2023年2月にフルモデルチェンジを経て、2代目M2(G87)となった。新型は初代よりも少し大きくなり、全長は+105mm、ホイールベースは+50mmと拡大。デザインもメリハリが効き、ひと回り大きく見える印象だ。
2代目M2のデザインは、大きく変化した。初代は控えめな「羊の皮をかぶった狼」のようなスタイルだったが、新型は「オラオラ系」に変身。
特徴的な四角いエアインテークや横バーを採用した直線的なフレームレスのキドニー・グリルがひときわ目立つ。さらに、前後のブリスターフェンダーがマッチョなスタイルを強調。Cピラー付近から広がるリアフェンダーや、フロントフェンダーから水平に広がるデザインは、筋肉質なイメージを醸し出している。
そして極め付けが、前後のブリスターフェンダーだ。
リアフェンダーはCピラーの付け根部分から、モコっと広がりを見せ、タフな筋肉をイメージさせる。フロントフェンダーは、ボンネットの切れ目部分からほぼ水平に広がりを見せワイド&ローなシルエットを生み出す。
この二つのブリスターフェンダーを見事に融合させているのがサイドステップだ。ドア中央から下部向けて一旦絞り込まれ、ボトム部でグッと広がりを見せ、前後のブリスターフェンダーの下端とつながる。やや、古典的なエアロスタイルともいえるが、分かりやすいスポーツカーの表現だ。
また、フロント19インチ、リア20インチのアルミホイール&タイヤは、ツライチのセットでフェンダーギリギリの隙間が指2本半程度という、王道のスポーティな仕上がりだ。
そそる「Mスイッチ」
インパネはM3/M4とほぼ同じデザインだ。センターコンソールは、ドライバー側に傾けられ、コックピットのようなドライバーオリエンティッドなデザインとなっている。
視認性に優れたカーブドディスプレイはタッチ操作も可能で、iDriveのダイヤル操作も備えている。運転中はダイヤル操作、停車中はタッチパネルと使い分けができ、便利だ。
フラットボトムのDシェイプ型ステアリング上部には、レッドのセンターマークが入る。昭和スポーツカーの名残ともいえる手法だが、若い世代には新鮮かもしれない。また、ステアリングスポーツ両サイドには、赤く塗装されたM1/M2ボタンを設置。事前に自分好みに選択したエンジンやサスペンション、パワステ、ブレーキなどの設定をボタンひとつで呼び出すことができる。ちょっと派手だが、そそるスイッチだ。
シートにはM3/ M4共通のMカーボン・バケット・シートをオプション設定。多点式シートベルトにも対応し、横方向のGを強力にサポートする。
シートは、前席2脚で約10kgもの軽量化を実現した。標準シートもバケットタイプだが、座り心地もよく、長距離移動でも快適だ。
日本の道路事情でも扱いやすいM2
バケットシートに座りエンジンを始動させると、直6 3.0Lツインターボエンジンの息吹がボボボォーと室内に伝わってきた。S58型エンジンは最高出力460㎰、最大トルク550Nmとかなり強力だ。
高出力のターボエンジンだが、極低速域でも想像以上にトルクがある。日本の道路事情でも扱いやすい。高出力ターボエンジンにありがちな気難しさは一切感じることがないフレキシブルさが際立った。
ゆっくりとアクセルを踏み込み、60km/hまで加速。ターボエンジンながら急激なトルクの盛り上がりはなく、自然吸気エンジンのようなスムーズな加速が楽しめる。
アクセル開度100%にしてみると、体は一気にシートバックに押し付けられ、強烈に加速する。0-100m/h加速は、わずか4.1秒。4,000回転以上でのパンチある加速力とエンジンの回転フィールは、まさに珠玉の名機といえるほど。とにかく、気持ちいい。
BMWはBEV(バッテリー電気自動車)に積極的だが、エンジンへのこだわりも健在だ。
クルマとドライバーが、一体化するようなハンドリング
パワーを効率よく路面に伝えるため、前275/35R19、後285/30R20の極太タイヤを装備。ドライな路面であれば、誰もが460㎰という大パワーを比較的安心して体感することができる。後輪駆動でも実現できたのは、トラクションコントロールなど電子デバイスの恩恵が大きい。
SportモードやTRACKモードを選択すると、後輪の横滑りを許容する設定になる。路面がウェットなど、滑りやすい路面ではドライバーに高いスキルが要求されるので要注意だ。逆にスキルのあるドライバーであれば、自在に操りM2のドリフトを楽しむことができる。
ハンドリングは精緻で、ステアリング操作に忠実に反応。50:50の重量配分が、クルマとドライバーの一体感を生む。これほど走り続けたくなるクルマは、そう多くはない。
M2は硬めの乗り心地。街中、山道ではコンフォートモードを推奨
低速域での市街地走行では、スポーツ系モードでは硬すぎて快適とは言い難い。特に荒れた路面では、Mアダプティブサスペンションが硬さを感じさせ、衝撃がダイレクトに伝わる。コンフォートモードにすれば、乗り心地が向上し快適になる。山道でもコンフォートモードがベストで、トラクションを失うことなく安定した走りを楽しめた。
最後の純ガソリン車になるか?
2代目M2は、最新の衝突被害軽減ブレーキや運転支援機能を標準装備。サーキット走行後の疲れた状態でも安心感を与えてくれる。
2代目M2(G87)の新車価格は、9,880,000円。走行性能や装備を考えるとお買い得と言えるが、誰もが買える価格帯ではない。2代目M2(G87)は、最後の純ガソリン車となる可能性もあるので、ガソリン車好きには必見の1台だ。
M2の燃料と航続距離
燃料タンクは52L、WLTCモード燃費は10.1km/L。実燃費は8~9km/L程度で、航続距離は416~468km。頻繁にガソリンスタンドに通うことになりそうだ。
BMW M2新車価格
- 8速AT/6速MT:9,880,000円
BMW M2燃費、最高出力、ボディサイズなど燃費
代表グレード | M2(8速AT) |
全長×全幅×全高 | 4,580mm ×1,885mm ×1,410mm |
ホイールベース | 2,745mm |
車両重量 | 1,730kg |
最低地上高 | 123mm |
駆動方式 | 後輪駆動 |
最小回転半径 | 5.2m |
乗車定員 | 4人 |
エンジン型式 | S58B30A型 直6 DOHC ツインターボ |
排気量 | 2,992cc |
エンジン最高出力 | 460PS(338kW)/6,250rpm |
エンジン最大トルク | 550Nm(56.1kgm)/2,650-5,870rpm |
ミッション | 8速AT |
0-100km/h加速 | 4.1秒(ヨーロッパ仕様車値) |
WLTCモード燃費 | 10.1km/L |
サスペンション前/後 | ストラット/マルチリンク |
タイヤサイズ 前/後 | 前275/35R19 後285/30R20 |
トランク容量 | 390L |