三菱トライトン試乗~ピックアップトラックなのに快適!~

三菱のピックアップトラックであるトライトンが、2024年2月に発売された。日本マーケットへの投入は12年ぶりだ。今回は新型トライトンの走行性能やスペックについて試乗を通して紹介する。

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三菱のワイルド&タフネス4WDを象徴する新型トライトン

新型トライトンの車両画像、全景

トライトンは、1978年に発売された「フォルテ」をルーツとする1トンピックアップトラックだ。発売以来45年間で5世代にわたり約570万台を生産し、世界約150ヵ国で販売している三菱の世界戦略車だ。ピックアップトラックなので、国や地域により多種多様な仕様が用意されている。日本に導入されたトライトンのボディタイプは、ダブルキャブで駆動方式は4WDのみだ。

 

日本において、ピックアップトラックのマーケットは非常に小さい。そのため、継続して販売されてきたモデルは、トヨタ ハイラックスくらいだ。

このハイラックスの存在が、トライトン導入要因のひとつでもある。ここ数年、ハイラックスの販売台数が好調だ。年間1万台程度を売り続けている。SUVブームが追い風になり、よりワイルド&タフネスなモデルを好む顧客が選ぶ傾向にある。

 

ピックアップトラックは、日本においては仕事用というよりレジャーユースの傾向が強い。小さなマーケットながら、わずかだが成長も期待できることもあり、新型トライトンが日本に導入された。トライトンの国内販売目標は、月200台、年間で2,400台だ。台数こそ少ないものの、圧倒的なトヨタの営業力と比べると、かなり攻めた販売目標である。販売車種が少ない国内三菱にとっても、より多くの選択肢を提示できるメリットもある。

 

トライトン国内導入理由の二つ目は、ワイルド&タフネスな4WDモデルであるトライトンによって三菱ブランドをアピールすることだ。三菱の乗用車は、軽自動車とOEM車を除くと、ワイルド&タフネスをウリにするモデルがほとんどだ。しかしPHEVなどの電動モデルを推し進める一方で、パジェロ無き今、三菱のワイルド&タフネスな4WDイメージが薄まっている。そんな三菱ブランドイメージを象徴する役割を持つのがトライトンなのだ。

ひと目で欲しいと感じさせるデザイン

新型トライントンの車両画像、後景

新型三菱トライトンのデザインコンセプトは、「BEAST MODE」(勇猛果敢)だ。

新型トライトンのフロントフェイス画像

ワイルド&タフネスを象徴するような力強いフェイスデザインが特徴だ。今回も人とクルマを守る安心感を表現した「ダイナミックシールド」のフロントデザインコンセプトが採用された。「ダイナミックシールド」のデビュー時、少々統一感に欠けていて、違和感が強かった。しかし、様々なモデルに採用され、徐々にデザイン手法も洗練さが増してきている。トライトンではフロントフェイス全体に統一感のある力強さを感じさせる。

新型トライトンのリヤエンド画像

大きな顔に睨みの効いたヘッドライトなど、売れるSUVデザイントレンドを使い上手くデザインされている。この顔を見ただけで、欲しいと感じさせる良いデザインだ。

新型トライトンのインパネデザイン画像

新型トライトンのインパネデザインは、水平基調の骨太系だ。とにかく機能的なデザインで、フロントウインドウから見える視界も良好である。全幅1,930mmというワイドなボディながら、左右の見切りもよく、悪路でも車両感覚をつかみやすい。

新型トライトンのメーター画像

また、なるべく高い位置に設置された9インチディスプレイの視認性も良好だ。このディスプレイはタッチパネル式なので、オフロードなど揺れる車内で的確にタッチするのは難しい。ダイヤル式などで、確実に操作できる別の操作方法も欲しいところだ。

パワフルな新開発2.4Lディーゼルエンジン

新型トライトンの運転席画像

新型トライトンの後席内装画像

新型トライトンの荷室画像

まずは一般道の試乗だ。運転席は、思わず「よっこいしょ」と声が出そうになるくらい高い位置にあり、よじ登る感覚だ。この瞬間、一般的なSUVとは異なり、新型トライトンがピックアップトラックであることを再認識した。

 

新型トライトンに搭載されるのは、2.4L直4ディーゼルターボのみで、新開発された4N16型だ。デリカD:5に搭載されているディーゼルターボエンジンが4N14型なので、デリカD:5より新しいディーゼルターボエンジンである。

アクセルをジワっと微妙に踏み込む。わずかに無反応な瞬間があるものの、ターボの過給が始まると、スッとエンジン回転が上がる。少しアクセルの踏み込み量を増やすと、470Nmという強大なトルクを使い2,140kgという軽くない車体をグイグイと加速させる。

最高出力は204㎰だ。この出力を3,500rpmで発生させる。アクセルを踏み切ってみると、高回転域のパンチはあまり感じない。大トルクでドンドンと変速を繰り返し、スピーディに車速を上げていくタイプ。意外なほど、加速力が鋭い。組み合わされるミッションは、従来型と同じ6速AT。燃費は、11.3km/L(WLTCモード)だ。

リーフスプリングなのにピョンピョン跳ねない!

新型トライトンのエンジンルーム画像

新型トライトンの静粛性の高さには驚いた。ピックアップトラックなので、最初から期待していなかったこともある。もちろん、同価格帯である500万円級のSUVには劣るものの、助手席同乗者だけでなく、後席の同乗者との会話も声を必要以上に大きくすることなく話ができる。新開発されたエンジン音が静かなだけでなく、ロードノイズも効果的に抑えられている結果だろう。

 

さらに新型トライトンに驚かされたのが乗り心地だ。ピックアップトラックなので、ある程度荷物を積載した状態でベストになるようにセッティングされている。空荷であれば、サスペンションは硬すぎて、ピョンピョン跳ねながら走るイメージが頭をよぎる。だが、あまり跳ねない。硬くない。むしろ、一般的なSUVに近い乗り心地なのだ。もちろん、高い速度で大きめの凸凹に突入すると、多少ピョンピョンと跳ねるものの、ピックアップトラックであることを考えると十分に許容範囲といえる。直進安定性も高いので、修正舵も少なく疲れにくい。

 

こうした快適な乗り心地を実現できたのは、新開発されたサスペンションの賜物だ。フロントはハイマウントタイプを採用しており、ストロークを20mm増やして接地性・乗り心地を向上した。リヤサスペンションは強度を維持したリーフスプリング式だ。リーフスプリングは、従来の5枚から3枚に減らし、軽量化しながらフリクションも低減した。

大きなボディは日本向きではないが・・・

試乗前、レジャーユースでの購入者をメインとしている的な説明を聞きながら「よっぽど好きな人以外、ピックアップトラックをレジャーユースで買うなんて無理でしょ」と思っていた。だが、一般道の試乗し「レジャーユース、意外とアリかも」と思え、予想を良い意味で裏切られた。

 

とはいえ、新型トライトンをレジャーユースで使う場合のデメリットも明確になった。試乗コースは、道幅が狭い郊外路だ。全幅1,930mm(GSR)だと、車線内ギリギリである。前方からトラックなどの車両が来れば、結構、気を遣う。クネクネ曲がった道では、車両の安定感は高いのだけれど、車線内に上手く収めることに終始する運転になる。

 

最小回転半径は6.2mなので、狭い路地では苦労する。狭い駐車場では、左右はギリギリなので降車が難しくなり、左右のクルマにも迷惑をかけている状況。小心者だとメンタルが病む。こうした巨大なボディサイズがもたらすデメリットもある。

「狭い場所には停めないし、狭い道も苦にならないよ」という人であれば、レジャーユースでの選択もありだ。

圧倒的な走破性! 7種類のドライブモードで道を選ばない安心感

新型トライトンがオフロードを走行している画像

オフロードでは、新開発ラダーフレームの強靭さに驚かされる。従来型から断面積を65%増やし、曲げ剛性60%、ねじり剛性40%の強化を実現した。さらに、ハイテン鋼の採用比率を大幅に増やし、重量増を最小限に抑えた。

 

地形では、車体のねじれや変形などは、全く感じない堅牢さを見せた。長く伸びるサスペンションにより、路面をしっかりとつかんでいる。

こうした悪路での基本性能の上に、三菱独自の4WD制御「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」が加わる。この制御には、走行シーンや路面状況に応じて計7種類ものドライブモードが設定されている。

  • ノーマル
  • エコ
  • グラベル
  • スノー
  • マッド
  • サンド
  • ロック

オフロード走行時には、色々と試したものの、だんだんと面倒になってきて、途中からノーマルでの走行になった。それでも、ほとんどのシチュエーションで悪路を走破できた。レジャーユースでの使用を想定するのであれば、面倒くさがり用のオートモードが欲しいところだ。ノーマルモードがオートのようなものとも言える。

 

4WD制御「スーパーセレクト4WD-Ⅱ」は、4LLcの選択が可能だ。

  • 2H(後輪駆動)
  • 4H(通常走行向け4WD)
  • 4HLc(悪路向け直結)
  • 4LLc(ローギア直結4WD)

トルク感応式センターデフを備えた4Hでは、タイトコーナーブレーキング現象を発生させることがなく、常に4WDでの走行が可能だ。さらに、新型トライトンには、ランエボ由来のAYC(アクティブ・ヨー・コントロール)も投入されている。大きなボディながら、軽快で安定感ある走りを楽しめる。晴れの市街地では、燃費重視で2H、郊外路ではより安定感ある気持ちよい走りが楽しめる4Hがお勧めだ。

リセールも期待大! 本物のオフローダーはいかが?

新型トライトンの選び方を解説する。上級グレードのGSRとエントリーグレードのGLSでは、機能面での違いはほとんどない。簡単に言うと、より豪華な内外装のグレードがGSRだ。商用で使うのであればGLS、レジャーユースであればGSRを選ぶと良いだろう。

 

タイから輸入されるモデルのため、オプションの設定もない。ディーラーオプションが豊富に用意されているので、そこから自分好みのパーツを選ぶことになる。リセールバリューを重視するのであれば、上級グレードのGSRになるだろう。ボディカラーは、オレンジが魅力的だが、リセールバリュー面ではホワイトやグレー系が無難だ。

 

新型トライトンの販売は好調で、三菱の公式HP上によると2024年5月末で納期は3~4か月とやや長めだ。初期の注文状況(2024年2月13日時点)では、グレード構成比がGSR 88%、GLS 12%である。

主要ボディカラー構成比は、ホワイトダイヤモンド 32%、ヤマブキオレンジメタリック 27%、グラファイトグレーメタリック 20%となっている。

 

最近のSUVは、よりワイルド&タフネス系がトレンドだ。都会派SUVとしてデビューしたモデルも、ワイルド&タフネス系グレードを追加しているほどである。そんなマーケット状況下の中、新型トライトンは本物のワイルド&タフネスモデルとして注目されるのは確実だ。

三菱トライトン新車価格

  • GLS…4,980,800円
  • GSR…5,401,000円

三菱トライトン スペック

代表グレード

トライトンGSR 4WD

全長×全幅×全高

5,320mm×1,930mm×1,795mm

ホイールベース

3,130mm

最低地上高

220mm

車両重量

2,080kg

エンジンタイプ

直列4気筒DOHC16バルブ ディーゼルターボ

総排気量

2,439cc

燃料

軽油

エンジン最高出力

150kW(204ps)/3,500rpm

エンジン最大トルク

470N・m(479kgm)/ 1,500-2,750rpm

燃費(WLTCモード)

11.3 km/L

燃料タンク容量

75 L

ミッション

6速AT

サスペンション

前:ダブルウィッシュボーン 後:リーフスプリング

タイヤ 前後

265/60R18

最小回転半径

6.2m

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員