BYD ドルフィンは取り回しがしやすいコンパクトEVだ。2023年9月20日に日本でも発売され、価格も363万円~と、手の届きやすいEVだ。
今回はBYD ドルフィンの価格や走行性などについて試乗を通して評価した。
- BYDのEVについて
- ドルフィンは基準車とロングレンジの2グレードを用意
- ドルフィンのボディサイズはBセグメントとCセグメントの中間
- 日本マーケットへの意欲を感じるドルフィンの全高
- ドルフィンの魅力は予防安全装備や運転支援機能の標準装備
- クラスを超えた上質さを持つインテリア
- ドルフィンの走りは数値以上のパワフルさ
- 驚愕のソフトな乗り心地
- ちょっと雑な運転支援機能
- CEV補助金が適用されれば実質300万円を切る高コスパBEV
- BYDドルフィン 価格・スペック
BYDのEVについて
BYDは、1995年にバッテリーメーカーとして創業した。2003年に中国国営自動車メーカーを買収し、自動車事業に参入した新進気鋭の中国メーカーだ。
そんなBYDが、2023年1月31日、日本参入第1弾モデルとして、CセグメントのBEV(バッテリー電気自動車)であるATTO3を投入した。
続いて第2弾モデルとして、BセグメントのコンパクトBEVであるドルフィンの販売を開始した。BYDは2022年に電気自動車販売台数が世界ナンバー1にもなっている。
今回BYDの主力ともいえるドルフィンに試乗し、BEVへの本気度をビリビリと痺れるほど感じた。
ドルフィンは基準車とロングレンジの2グレードを用意
※上図:BYD ドルフィンの全景
新型BYDドルフィンは、2グレード構成だ(航続距離はWLTCモード)。
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モーター出力 |
バッテリー容量 |
航続距離 |
基準車 |
95ps&180Nm |
44.9kWh |
400km |
ロングレンジ |
204ps&310Nm |
58.56kWh |
476km |
上級グレードとなるロングレンジは、基準車に対してモーター出力がグッとパワーアップしている。リチウムイオン電池はさらに大容量化された。航続距離は少し伸びている。
プラットフォーム(車台)は、EV用に開発されたe-Platform 3.0を採用している。BEVらしく、ボンネットは短くホイールベースが長いのが特徴だ。Bセグメントのコンパクトカーながら室内は広い。
新型ドルフィンの駆動用バッテリーは、リン酸鉄リチウムイオンを使用。ブレードバッテリーと呼ばれ、熱安定性が高いため安全性が高い。このブレードバッテリーが床下に設置されている。
ドルフィンのボディサイズはBセグメントとCセグメントの中間
※上図:BYD ドルフィンの運転席
全長×全幅×全高 |
4,290mm×1,770mm×1,550mm |
ホイールベース |
2,700mm |
最小回転半径 |
5.2m |
※上図:BYD ドルフィンの後席
新型ドルフィンの全長は、国産BセグメントとCセグメントの中間くらいの大きさだが、ホイールベースはCセグメントよりやや長い。ホイールベースは、室内スペースに直結する数値だ。つまり、室内スペースはCセグメント以上の広さをもつ。
最小回転半径はBセグメントのコンパクトカー並みだ。日本の道路環境でも使いやすいサイズとなっている。
※上図:BYD ドルフィンの荷室
日本マーケットへの意欲を感じるドルフィンの全高
BYDの本気度を感じた部分が全高だ。日本都市部に多い立体駐車場の全高制限1,550mmに合わせて、全高を20mm低くしたのだ。こうした制限のある立体駐車場を使うユーザーを見限っている国産メーカーも多い。
輸入車メーカーであるBYDが日本国内特有の事情に合わせ全高を変更した点からは、日本マーケットへの意欲を感じる。さらに新型ドルフィンは、日本に合わせ右ウインカーレバーとした(多くの輸入車は、ウインカーレバーが国産車の逆となる左にある)。
その他にも日本マーケット向けに、日本語音声認識対応のインフォテインメントや誤発進抑制システム、CHAdeMO対応としている。
ドルフィンの魅力は予防安全装備や運転支援機能の標準装備
※上図:BYD ドルフィンの全景
新型ドルフィンの充実した予防安全装備と運転支援機能は素晴らしい。自動ブレーキや車線逸脱防止機能などはもちろんのこと、フロントクロストラフィックブレーキ (FCTB)やリアクロストラフィックブレーキ(RCTB)なども標準装備化されている(このクラスではオプションまたは設定が無いことが多い)。
さらに、幼児置き去り検知システム(CPD)も標準装備だ。車内にあるセンサーが幼児を検知し、ドアロックし一定時間経過すると、ホーンで警報を発する。
新型ドルフィンの予防安全装備や運転支援機能は、このクラスのモデルでトップクラスの実力を誇っている。新型ドルフィンは、どのグレードでも安心して乗れるところが美点だ。国内メーカーも予防安全装備や運転支援機能を積極的に標準装備して欲しいものだ。
クラスを超えた上質さを持つインテリア
※上図:BYD ドルフィンのリヤエンド
※上図:BYD ドルフィンのフロントフェイス
新型ドルフィンの外観デザインは、車名の通り海を自由に泳ぐイルカを表現したという。イルカといえば滑らかな曲線で描かれたシルエットをイメージするだろう。だが新型ドルフィンのボディサイドには、シャープなエッジの効いたキャラクターラインが入る。残念ながら、イルカをイメージすることはできなかった。
※上図:BYD ドルフィンのインパネデザイン
インテリアデザインは、なかなか個性的だ。ダッシュボードの波を連想させるデザインや、ドアノブはイルカのフィンをモチーフとしており、遊び心が散りばめられている。面白いデザインではあるが、やや好き嫌いがハッキリ出る可能性がある。シンプルで、落ち着いたデザインを好む層には向かないかもしれない。
※上図:BYD ドルフィンのタッチスクリーン
驚いたのが質感だ。電動回転式の12.8インチタッチスクリーンを始め、素材の質感がクラスを超えた上質さを得ていた。コスト度外視かと、思えるほどの高い質感だった。
※上図:BYD ドルフィンのメーター
だが、12.8インチタッチスクリーンや小型のTFT LCDマルチメーターは、やや見にくかった。アイコンや文字が小さいので、瞬時に情報を理解するのが難しいかもしれない。
ドルフィンの走りは数値以上のパワフルさ
※上図:BYD ドルフィンのエンジンルーム
試乗したのは新型ドルフィンの基準車だ。出力は95ps&180Nm、航続距離は400km(WLTCモード)という仕様になっている。試乗前、95ps&180Nmという数値を見たとき、ややアンダーパワーに感じ「元気よく走らないだろう」と想定していた。モーターは瞬時に最大トルクをアウトプットする特性があるとはいえ、180Nmに対し車重は1,520㎏と軽くはないからだ。
ところが、新型ドルフィンは想像以上に力強く走り出した。スペック以上の加速感に驚いた。街中では、スムースでキビキビ、不満を感じることは無い。
では、高速道路ではどうか? 合流もとくに不満は感じないほど、スルスルとスムースに速度を上げる。これで、本当に95ps&180Nmしかないのか? と、疑問に思うほど。
とはいえ95ps&180Nmというスペックを感じさせるのは、速度が90km/h程度になったときだ。さすがに加速力は鈍ってくるものの、100km/h程度のクルージングなら、十分な余裕を感じるので安心してよい。
ハンドリングも自然だ。BEVらしい低重心さを生かしたスポーティなタイプと予想したものの、意外に穏やかで違和感はない。
驚愕のソフトな乗り心地
驚愕したのが乗り心地だ。フワンフワンした乗り味で、かなり快適。サスペンションのストロークをしっかりと使い、大小色々な凸凹の上を大きな衝撃も無くスルっと走り抜ける。
これほどの優れた乗り心地ながら、リヤサスペンションはトーションビーム式だ。トーションビーム式特有のゴツゴツ感をキレイに消している。高速カーブでも、大きく車体が傾くことも無く安定感も高い。BEVの低重心さを生かしながら、快適な乗り心地と高い操縦安定性を両立している。さらに直進安定性も良好だった。BEVなのでホイールベースがやや長めである点が作用している。
ちなみに、ハイパワー仕様のロングレンジのリヤサスペンションは、トーションビーム式からグレードアップしたマルチリンク式だ。より優れた乗り心地と操縦安定性が期待できる。
ちょっと雑な運転支援機能
その一方で、惜しかったのが運転支援機能だ。
特に荒さが目立ったのがレーンキープ機能だ。車線変更時やカーブでフロントタイヤが車線に近付くと、唐突にガツっとステアリングを戻させられた。一瞬、何が起きたのか分からず驚いた。こうした現象が、時々起きる。色々な条件があるのだろうが、やや制御の粗さが気になる。
CEV補助金が適用されれば実質300万円を切る高コスパBEV
運転支援機能の制御に荒さを感じさせるものの、新型ドルフィンは総合力で高く評価できる。高評価の大きな要因のひとつが価格だ。新型ドルフィンの価格は、基準車が363万円、ロングレンジが407万円だ。両車共にCEV補助金が65万円出る。この補助金を引いた実際の支払額は、基準車が298万円、ロングレンジが342万円と驚きの車両価格になる。
基準車でも十分な装備なので、それで300万円を切る価格はコスパ抜群だ。国産Bセグメントのコンパクトハイブリッド車並みの価格である。室内の広さやBEVの安価なランニングコストなどを加味すると、新型ドルフィンは購入リストの上位に入るモデルといえる。
新型ドルフィンからは、BEVで世界トップへ駆け上ったBYDの本気度をビリビリ感じた。新興メーカーながら、もはや、総合力では国産BEVでは太刀打ちできないレベルに達していた。
BYDドルフィン 価格・スペック
BYDドルフィン 新車価格
ドルフィン |
3,630,000円 |
ドルフィン ロングレンジ |
4,070,000円 |
BYDドルフィン電費、航続距離、ボディサイドなどスペック
代表グレード |
ドルフィン |
全長×全幅×全高 |
4,290mm×1,770mm×1,550mm |
ホイールベース |
2,700mm |
トレッド(前/後) |
1,530mm |
車両重量 |
1,520kg |
フロントモーター型式 |
TZ180XSF |
フロントモーター最高出力 |
70kW(95ps)/3,714-14,000rpm |
フロントモーター最大トルク |
180N・m(18.4kgm)/0-3,714rpm |
電費 |
約8.9kWh |
電力用主電池 |
リン酸鉄リチウムイオンバッテリー |
駆動方式 |
FF(前輪駆動) |
サスペンション |
前:ストラット、後:トーションビーム |
タイヤ 前後 |
205/55 R16 |
最小回転半径 |
5.2m |
ドルフィンのカタログ情報
- 現行モデル
- 令和5年9月(2023年9月)〜現在
- 新車時価格
- 363.0万円〜407.0万円
ドルフィンの在庫が現在0件あります
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