マイナンバーカードと運転免許証は、2024年度末までの少しでも早い時期に一体化される見込みです。現時点で一体化は任意であり、情報の紐付けは強制ではありません。また免許証廃止の予定もありません。しかし今後は免許証での非対面の本人確認が禁止される等の影響がありそうです。
「2024年度末までの少しでも早い時期」に開始
2023年6月9日に、「デジタル社会の実現に向けた重点計画」が閣議決定されました。
この中で、政府はマイナンバーカード(以下マイナカード)と免許証の一体化を「2024 年度末までの少しでも早い時期」に開始すると記載。2024年度末と定めていた目標期間を、できる限り前倒しする方針を示しました。
※出典:デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」
一体化すると具体的に何が起こる?
免許証とマイナカードの一体化では、免許証に登録されている情報がマイナカードのICチップに記録されます(=情報の紐付け)。
これによって従来の免許証の携帯は不要になり、マイナカードが免許証として機能するようになります。また優良ドライバー以外でも住所地以外からの免許更新が可能になるといったメリットもあります。
一体化は任意で選択肢は3つ
現時点では、免許証とマイナカードの一体化は「任意」とされています。健康保険証のように廃止の予定もありません。制度導入後、ドライバーには以下の3つの選択肢があります。
- 情報を紐付けせず、従来の免許証を使用
- 一体化して従来の免許証を破棄
- 情報を紐付けし、従来の免許証も保持
それぞれの選択肢にメリット・デメリットがあるので、詳しくは次の章で確認してください。
マイナカードと免許証一体化のメリット4つ
免許証とマイナカードを一体化させると、以下のようなメリットが期待できます。
- メリット①変更手続きのワンストップ化
- メリット②住所地外での免許更新が楽に
- メリット③従来の免許証の携帯が不要に
- メリット④更新講習のオンライン化(見込み)
メリット①変更手続きのワンストップ化
引越しや婚姻による住所等の変更があった場合、これまでは免許証とマイナカードそれぞれに変更手続きが必要でした。 免許証とマイナカードを一体化すれば、変更手続きは市町村役場での手続きで完結できます。警察署や免許センターに赴く必要はありません。
メリット②住所地外での免許更新が楽に
現在の免許証では、免許更新は記載の住所地で行うことが原則です。住所地外でも免許を更新できるのは、5年以上無事故・無違反の優良ドライバーのみ。またこの場合、免許更新期間も誕生日前から当日までの1ヶ月に限られます。
マイナカードと免許証を一体化させれば、優良ドライバーに限らず住所地外での更新が可能になります。また更新期間も、通常の免許更新と同様に誕生日の1ヶ月後まで有効となります。
メリット③従来の免許証の携帯が不要に
免許証とマイナカードを一体化すれば、今ある免許証の携帯は不要となります。マイナカードの携帯は必要ですが、2024年秋には現行の健康保険証が廃止され、マイナカードに一本化される予定です。そのためマイナカードを普段から持ち歩く人が増えるでしょう。
さらに2023年5月から、Androidスマホにマイナカードの機能を搭載する取り組みが始まっています。スマホへの機能搭載が進めば、マイナカードの携帯も不要になると考えられます。
メリット④更新講習のオンライン化(見込み)
免許更新の際に更新場所で受講する更新講習。これがマイナカードとの一体化によってオンライン化されると見込まれます。更新講習は更新手続きの中で最も時間がかかる部分であり、更新場所の混雑解消や受講者の負担軽減が期待できます。
オンラインでの免許更新は、既に2022年2月から一部の道府県で試験導入されています。現時点での対象者はマイナカードを所有する優良ドライバーに限られますが、一体化の制度導入後に対象範囲が広がる可能性もあります。
先述の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」で、政府は一体化に伴って免許証の更新手数料引き下げを検討すると記載しています。政府としては、一体化で行政コストの削減効果があると見込んでいるようです。 なお現在の更新手数料は2,500円(別途講習受講料あり)です。
マイナカードと免許証一体化のデメリット3つ
一体化で様々なメリットが期待できる一方、マイナカードと言えば健康保険証に関連した問題で不安を覚える人も多いです。免許証の一体化でも、以下の3つのデメリットがあると考えられます。
- デメリット①情報漏えいや不正利用の危険
- デメリット②併用の場合は2種類とも更新が必要
- デメリット③紛失等があると長期間運転できない
デメリット①情報漏えいや不正利用の危険
多くの人にとって最も不安なのが、自治体側による情報の紐付けミスや、紛失・盗難による情報漏えいでしょう。紐付けのミスは、本人では防ぎようがありません。またマイナカードに限った話ではありませんが、普段から持ち歩くようになれば、紛失や盗難のリスクも高くなります。重要な個人情報だけに、悪用も心配です。
デメリット②併用の場合は2種類とも更新が必要
マイナカードに免許証の情報を紐付け、且つ従来の免許証も所持する場合は、それぞれについて同時に更新手続きが必要となるようです。手続き方法の詳細は明らかになっていませんが、併用の場合は従来より手間が増える可能性があると認識しておきましょう。
デメリット③紛失等があると長期間運転できない
マイナカードの再発行には、現時点で概ね1ヶ月かかります。そのため従来の免許証を破棄してマイナカードに一体化させると、長期間運転できなくなる可能性があります。
デメリット②では併用による弊害を解説しましたが、紛失や盗難が起こった場合に関して言えば、併用の方が安心でしょう。
免許証での本人確認が廃止に?
現時点で廃止の予定がなく、一体化は任意という免許証。しかし政府は先の「デジタル社会の実現に向けた重点計画」で、以下のように記載しています。
(前略)非対面の本人確認手法は、マイナンバーカードの公的個人認証に原則として一本化し、運転免許証等を送信する方法や、顔写真のない本人確認書類等は廃止する。対面でも公的個人認証による本人確認を進めるなどし、本人確認書類のコピーは取らないこととする。(デジタル庁「デジタル社会の実現に向けた重点計画」)
今後は非対面での本人確認に免許証が使えなくなり、さらに対面でもマイナカードによる本人確認を促す方針です。
健康保険証のトラブルも続いており、まだまだ先行きは不透明ですが、政府としてはマイナカードの多機能化や情報の統合による効率化を推し進める考えでしょう。
自動車関連の政策は他にも
ガソリン補助金の引き下げや走行距離税の検討、ガソリン車やディーゼル車の廃止など、政府が実施・検討している自動車関連の政策は他にも多数あります。以下の記事もぜひ参考にしてください。