この記事の目次 CONTENTS
‖S4は、SラインとRSの中間にあるハイパフォーマンスモデル
‖パワーアップと低燃費を両立した新方式「Bサイクル」とは?
‖なんと、約100㎏も軽くなった! 運動性能が大幅に向上
‖歩行者検知式自動ブレーキが標準装備。安全性能は大幅に向上。
‖アウディS4価格

ライター紹介

クルマ評論家 CORISM代表

大岡 智彦 氏

CORISM編集長。自動車専門誌の編集長を経験後、ウェブの世界へ。新車&中古車購入テクニックから、試乗レポートが得意技。さらに、ドレスアップ関連まで幅広くこなす。最近では、ゴルフにハマルがスコアより道具。中古ゴルフショップ巡りが趣味。日本カー・オブ・ザ・イヤー実行委員

アウディは、ハイパフォーマンスモデルのセダンS4とワゴンであるS4アバントをフルモデルチェンジし発売を開始した。

S4アバント_外観

‖S4は、SラインとRSの中間にあるハイパフォーマンスモデル

新型アウディS4シリーズは、ベースとなるA4が2016年2月にフルモデルチェンジしたことを受け登場した。
Sシリーズは、アウディのハイパフォーマンスモデルであるが、アウディには色々なハイパフォーマンスモデルが存在する。

最もライトなスポーティグレードといえるのが、Sライン。
Sラインは、主にエアロパーツなどの外観や足回りをスポーティ仕様にしたグレードもしくはオプション。
それに対して、Sシリーズは、高性能エンジンや専用チューンドサスペンションなどが採用されている。
そして、スポーツグレードの頂点にあるのがRSだ。
RSは、サーキット走行も難なくこなす超ハイパフォーマンスモデル。使い方によっては、街中で扱いにくさを感じるかもしれないが、とにかく速さにこだわったグレードだ。

こうしたアウディのハイパフォーマンスモデルの構成は、多岐にわたっていて選択肢が豊富。
自分の好みや予算に合わせて選ぶことができる。
今回登場したS4シリーズは、そんなハイパフォーマンスモデルの中では、比較的安価で街中での使い勝手や実用性も兼ね備えたバランスの取れたモデルといえる。

‖パワーアップと低燃費を両立した新方式「Bサイクル」とは?

新型S4シリーズには、V6 3.0L直噴ターボエンジンが搭載された。
「Bサイクル」と呼ばれるアウディ独自の新しい燃焼方式が採用されたエンジンだ。
Bサイクルという呼称は、発明者であるAUDI AGのエンジニア、Dr.ラルフ ブダックにちなむ。
排気バルブのタイミングで吸気工程を短縮して燃費効率を高める、「ミラーサイクル」の原理が取り入れられている。

従来ミラーサイクルを採用したエンジンは、燃費効率に優れる一方で、出力性能においては同排気量の通常のユニットより劣る傾向があった。
実用車には向くが、S4シリーズのようなハイパフォーマンスモデルには向かない技術だ。
しかし、アウディは、ターボチャージャーによる過給システムと可変バルブタイミング機構(アウディ バルブリフト)を組み合わせ、さらに圧縮比(11.2)を高く設定することで、パワーと燃費効率を両立したのだ。

このBサイクル技術の投入により、新3.0TFSIエンジンは、15kW(21PS)、60Nm高い260kW(354PS)、500Nmの最高出力、最大トルクを発揮する。
燃費は0.1㎞/Lアップし12.7km/Lと若干向上。
パワーアップさせながら、燃費をほぼ維持できたのは、このBサイクル技術の効果だ。同時にターボの過給システムも変更されている。

そして、エンジンでクルマの軽量化にも貢献している。
アルミ合金製シリンダーブロックとサーマルマネジメント(温度制御)システムを設計から根本的にやり直し、エンジン単体の重量が14kgも軽量化された。軽量化は運動性能と燃費両方に効く、非常に重要な要素だ。

アウディS4シリーズ_外観_走行中_後ろ

‖なんと、約100㎏も軽くなった! 運動性能が大幅に向上

S4シリーズには、新エンジンの他に新開発の8速ティプトロニックが採用されている。
最近のトレンドである多段化に対応。
ベースのA4は7速なので、ミッションもハイパフォーマンスモデル用ということもあり大きく異なる。
この8速ティプトロニックは、低速ギヤを加速を重視の低レシオ化。
7速、8速はクルージング時の燃料消費を抑えるため高レシオ化されている。
また、低燃費化のために55km/h以上で走行している場合、ドライバーがアクセルペダルから足を離すと自動的に「フリーホイーリングモード」に切り替わって駆動抵抗を減らす。
これはいわゆる惰性で走る機能で、低燃費効果が期待できる。

S4シリーズのハンドリングやトラクション性能の要ともいえるのがAWDであるクワトロシステム。
このクワトロは、通常時、エンジントルクが後輪にやや多め(60%)の分配。走行状況に応じて、前後トルク配分を自動でコントロールし、優れたハンドリング性能とトラクション性能を得ている。

また、トルクベクタリング機能が標準装備化されている。
このトルクベクタリング機能は、負荷の少ない内側のホイールに軽くブレーキ力をかけて、より安定して曲がれるようにコントロール。
それに加え、オプションの「スポーツディファレンシャル」を搭載すると、走行状況に応じて、リヤ左右輪間のトルク分配もアクティブに制御。
よりダイナミックで優れたトラクション性能を発揮することができる。
S4シリーズは、ハイパフォーマンスモデルなので、このスポーツディファレンシャルはぜひとも装備したいオプションだ。

アウディS4シリーズ_インパネデザイン

S4シリーズの足回りは、前後ウィッシュボーン式のサスペンションを採用。
Sモデル専用のスポーティなセッティングが施された。
その結果、車高をA4に比べ20mmローダウン。
重心高が下げられているので、よりスポーティな走りが可能となている。

ボディそのものも、大幅な軽量化と高剛性化を実現している。
ねじり剛性を高めつつ、ボディ単体で旧型比15kg軽量化。
エンジンや駆動系、シャシーコンポーネンツ、シートを含めたインテリア装備にまで軽量化され、車両重量は1,680kgとなった。
従来型のS4に対し、100kgもの軽量化された。軽量化は、クルマの運動性能に大きく影響する要素。
ハイパフォーマンスモデルとして、走りの質は大幅に向上しているはずだ。

アウディS4シリーズ_シート

‖歩行者検知式自動ブレーキが標準装備。安全性能は大幅に向上。

安全装備面では、A4同様に大幅に進化した。
歩行者検知式自動ブレーキなどの予防安全装備である「アウディプレセンスシティ」などが装備された。

<ただし、オプション安全装備は安いとは言えない>

アウディS4シリーズ_オプション安全装備

ただし、少々微妙なのがオプションの安全装備。
S4シリーズは800万円を超える高級車なのに、リヤのサイドエアバッグやアウディのウリのひとつバーチャルコックピット、マトリクスLEDヘッドライトパッケージなどがオプションとなっている。

一見、ハイパフォーマンスモデルとしては、お買い得感があるのだが、こうしたオプションをプラスしていくと、価格もドンドンアップするので、それほどお得感は無くなる。

<購入するならオススメは、リセールバリューのあるS4アバント!>

S4シリーズの悩みどころは、セダンかワゴンかの選択。
価格差は29万円。

日本マーケットでのリセールバリューを考えると、どうしてもセダンというのでなければ、やはりワゴンのアバントがお勧めとなる。
日本では、アバントの方が人気が高くリセールバリューが期待できるからだ。
当然、乗り換え時にも有利になる。

‖アウディS4価格

・S4セダン:8,390,000円

・S4アバント:8,680,000円