ホンダシャトル

<カローラフィールダーを超えたクラストップの燃費34.0㎞/Lを達ししているが・・・>

ホンダシャトルホンダは、コンパクトワゴンである新型「シャトル」の発売を開始した。このモデルから、従来のフィットシャトルという名前から、フィットが外され単独でシャトルという車名に変更されている。

フィット系のプラットフォームやパワーユニットを使いながら、フィットの名が外されているのはグレイスも同じ。フィットのセダンということであれば、従来ならフィットアリアと呼ばれていた。しかし、同様にフィットのセダンでありながらグレイスという違う車名とされている。

こうなったのは、フィットの派生車であると明確に分かることを顧客が嫌う傾向にあるようだ。フィット=安価なコンパクトカーというイメージがあるのか、フィットの名が付くと安っぽく感じるということのようだ。ある意味、フィットに対して失礼なイメージなのだが、それがマーケットの意思ともいえる。しかしホンダは、この傾向を逆手に取る。

今回の新型シャトルやグレイスも、デザイン的にほとんどフィットのイメージを継承していない。クルマに詳しくない人から見れば、派生車であることも分からないだろう。そうした工夫をすることで、多くの顧客は別のクルマとして認知する。フィットの派生車ということであれば、顧客もフィットの価格をイメージする。しかし、単一車種でフィットとの関連性が分からないのであれば、比べるものが無いのでホンダが提示した価格を受け入れるしかない。その結果、シャトルもグレイスも先代モデルと比べると価格はやや高めの設定となった。これは、顧客のニーズを満たしながら価格アップができたのは、ある意味マーケティングの勝利ともいえる。

同時に、トヨタがセダンのカローラ アクシオ、ワゴンのカローラ フィールダーとカローラシリーズとしているのに対して、ホンダは単一の車名。フィットの派生車としての車名が嫌と感じる顧客がいるように、カローラの派生車としてのフィールダーの車名が嫌という顧客もいるはずなので、そうした顧客の取り込みも視野に入っているのだろう。

ホンダシャトル新型シャトルのパワーユニットは二つ用意された。フィットと同じ1.5Lのハイブリッドシステムと1.5Lガソリンエンジンだ。ハイブリッド車はシステム出力137psとなり、余裕ある走りが可能だ。燃費性能は、ライバルのカローラフィールダーハイブリッドの燃費を超え、クラストップの34.0㎞/Lとなった。

ただし、この34.0㎞/Lという燃費は、単純に喜べない事情がある。なんと、この燃費値が出せるのはエントリーグレードのみ。さらに、あんしんパッケージを装着すると32.8㎞/Lに。もはや宣伝・販促用スペシャルグレードになっていて、装備内容も含めほとんどの顧客が選ばないグレードになっているのだ。そして、売れ筋の中間グレードハイブリッドXが32.0㎞/L、最上級グレードのハイブリッドZが29.6㎞/Lとなっている。つまり、すべてのグレードで33.8km/Lという燃費を出すカローラフィールダーハイブリッドのほうが、燃費性能に優れていると判断でき、同時に顧客にもメリットがあるということになる。

こうした燃費表示は、営業サイドの問題が大きい。燃費ナンバー1と言えないと、顧客の購入リストに載せてもらえないなどという考え方がある。ごもっともな話なのだが、最終的に顧客が選ぶクルマは34.0㎞/Lを達成しているクルマではないことを考えると、あまり顧客視点ではない。ホンダには軽自動車のヒットモデルN-BOXがあるが、このクルマは燃費ナンバー1でなくても売れている。さらに、燃費ナンバー1のスペーシアは一人負け。単に燃費だけでないのは、ホンダも理解しているはずだ。

また、ガソリンの1.5L車には直噴の1.5Lが搭載された。132ps&155Nmをアプトプットし、なかなかパワフルなパワーユニットだ。燃費は21.8㎞/Lとなっていて、なかなかバランスのとれたエンジンだ。ただ、ガソリン車は1グレードのみの設定。装備もシンプルで、仕事用にも使う顧客向けといった印象だ。

スタイリングは、ベース車のフィットをほとんどイメージさせないものとなった。フィットと同じに見える部分は、ドアやフロントフェンダーくらいと非常に少ない。これだけ違うクルマにしたのであれば、少々の価格アップは納得できる。とくに、鋭い眼光をもつLEDヘッドライトも装備されていて、高級感も上手く表現できている。

ホンダシャトルシャトルは、ワゴン車ということもあり、ラゲッジスペースの広さにもこだわった。シャトルは、センタータンクレイアウトを採用しているので、床下に30Lのラゲッジアンダーボックスをもつ。そして、床上には540Lという広大なラゲッジスペースがある。そのため、使使い勝手は非常に良い。5ナンバーという小さなボディサイズながら、ゴルフバッグを4つ積載できるなどの実力をもつ。ただ、荷室を隠すトノカバーが全車にオプションなのは困った設定。せめて、トノカバーくらい標準装備化してほしいところだ。

こうした積載性の高さの他に、狭い道での取り回しの性能を表す最小回転半径も重要。シャトルは4.9m、16インチホイール装着車が5.2mとなっていて、コンパクトカーとして一定のレベルを保っている。ライバルのカローラフィールダーハイブリッドは、エントリーグレードの15インチホイール車が4.9mだが、16インチホイール装着車になると、なんと5.5mにもなる。5.5mというと、5ナンバーミニバン並み。5ナンバーミニバン並みの小回り性能しかないコンパクトカーというのも、非常に使いにくい。そういう面では、シャトルが上回る。

また、シャトルのハイブリッド車には4WD車が用意されている。降雪地域の顧客に、ハイブリッド車の低燃費性能とエコカー減税の恩恵を与えることができる。残念ながら、ライバルのカローラフィールダーハイブリッドはFFのみの設定だ。

ホンダ シャトルの選び方だが、自動ブレーキ関連の安瀬装備ホンダセンシングが装備されていないので、よほど急いで買う必要がなけらば、しばらく様子を見たほうがよい。シャトルには30㎞/h以下の簡易型自動ブレーキしか用意されていないからだ。軽自動車では、すでにカメラを装備し歩行者を見分け自動ブレーキを作動させる機能が用意されている時代だけに、現在の仕様では物足りない。いずれ、ホンダセンシングが搭載されるようになるはずなので、より安全性の高いシャトルを買いたいのなら今は待ちだろう。

とはいえ、急いで買わなくてはならない、もしくは安全装備など興味がないというのであれば、まずはパワーユニットの選択となる。ガソリン車の出来もなかなかだが、静粛性や豪華装備という面ではハイブリッド車に劣る。予算重視や仕事用というのであればガソリン車でもいいだろう。

お勧めは、やはりハイブリッド車だ。エントリーグレードのハイブリッドは、199万円からという価格訴求用モデルなので装備も貧弱。ビジネス用やレンタカー向けといった印象。一般顧客は、ハイブリッドXかハイブリッドZという選択になる。両グレードともLEDヘッドライトは標準装備、低速域の自動ブレーキを含んだあんしんパッケージも標準装備なので装備類は満足できるものとなっている。基本的には、ハイブリッドXで十分といったところ。このグレードが売れ筋になる。最上級のハイブリッドZには、さらに16インチアルミホイールやシートヒーター、フォグライト、ルーフレールなどが装備。これらの差でXとZとでは、19万円ほどの価格差がある。意外と価格差が大きいので、予算と欲しい装備で決めるといいだろう。

■ホンダ シャトルハイブリッド価格

・HYBRID FF 1,990,000円~HYBRID Z  4WD 2,542,000円
・G(ガソリン車) FF 1,690,000円  4WD 1,884,400円