日産シルフィ

<レザーシートを装備するなど、上質感を向上させた特別仕様車ルグラン>

日産シルフィ日産シルフィは、2012年12月にデビューした中型のセダンで、シルフィという名が付いたモデルとしては3代目となる。それ以前のモデルは、ブルーバード・シルフィという車名だったが、3代目からブルーバードの名前が無くなりシルフィとなった。このシルフィは、すでに北米や中国で発売されているグローバルセダン。北米では、セントラと呼ばれている。

国内向け1.8Lクラスのセダンは、全幅1,695mmという5ナンバーサイズであることが基本。しかし、シルフィはグローバルセダンということもあり、全長4,615×全幅1,760×全高1,495mmというボディサイズをもち、やや大きい。トヨタ のプレミオ &アリオンは、今も5ナンバーサイズを守り、全幅1,695mmのままだ。シルフィが大きくなっているのは、日本をターゲットにしたクルマではなく、あくまで北米や中国向け車であるということ。そのため、日本でのボディサイズなどは無視されている。ただし、単に5ナンバーサイズであれば良いかというと、そうでもなく、狭い道での使いやすさを表す最小回転半径は5.2m。ボディ幅の狭いプレミオ&アリオンより0.1mほど小さく、ちょっと大きくても使いやすさは確保しているのが特徴だ。今では、日本でも5ナンバーサイズというのは、税制的にもあまりメリットの無い数値となっているので、全幅は多くの立体駐車場の制限となっている1,800mm以内であることが、ひとつの目安となる。

シルフィに搭載されているエンジンは、直4 1.8LでミッショはCVTのみの設定。出力は131ps&174Nmとなっていて、燃費は15.6㎞/L。未だアイドリングストップ機能も装備されておらず、燃費性能は今ひとつといった状況。プレミオ&アリオンの1.8Lの燃費は16.4km/Lとなっていて、シルフィより燃費性能は優れているが、こちらも未だアイドリングストップ機能さえ装備されていない。両車とも燃費に関しては、それほど優れたものではない。こうした傾向は、国内でこのクラスのセダン人気が無いことから、メーカー側も力を入れていないことが原因でもある。

また、不人気車種=投資できない、というシンプルなメーカーの考え通り、安全装備面では、両車とも自動ブレーキが用意されていない。日産は、ほぼ全車に自動ブレーキを装備するとしているが、シルフィにいつ装着されるか否かは不明だ。また、シルフィには4WD の設定が無い。人気が無いセダンで、魅力的な装備を装着する投資ができないという、メーカー側の論理が、よりこうしたセダンの魅力を無くし、結果としてさらに売れないジャンルとしている。

実際に、日産ではエクストレイルが人気を集めている。このクルマは、ややボディサイズは大きいが2.0Lで16.4㎞/Lと燃費が良い。その上、自動ブレーキも用意され、車高が高く乗り降りがしやすい都会派SUVだ。FF車のエクストレイルの価格は約231万円からと、コストパフォーマンスにも優れている。シルフィの中間グレードで売れ筋となるXグレードの価格は約215万円であることを考えれば、あえてこのクラスのセダンを買う理由が見当たらないのも事実だ。

日産シルフィしかし、日産がこうしたセダンを売り続けるには理由がある。このシルフィでも3代目ということからも、初代・2代目に売った顧客が多数いるのだ。セドリックやグロリア、ローレルといった昔のセダン派も存在する。そうした顧客の受け皿になる理由があるのだ。こうした顧客が他社に流出することは、日産にとって血を流し続けることを意味するのだ。

そんなシルフィに今回投入されたのは、数少ないセダンにこだわる顧客向けの特別仕様車シルフィ ルグランだ。ルグランとは最上級を意味することから、美しい輝きを実現した専用16インチ切削光輝アルミホイールや、さらなる上質感を与える本革シートと専用合皮ドアトリムを採用している。

上級セダンからのダウンサイザーの受け皿的役割をもつミディアムサイズセダンがシルフィなので、ボディサイズは小さくなっても、上級セダンユーザーを納得させる上質さを与えたモデルとなっている。

シルフィ ルグランの価格は、なんと2,674,080円。レザーシートを使った高級仕様とはいえ、かなり高価な価格設定だ。マツダ アクセラハイブリッド (セダン)が約247万円から。自動ブレーキなどの最新安全装備が標準装備されたハイブリッドS Lパッケージは約281万円。燃費性能は30.8㎞/Lと、シルフィに対して倍近い数値だ。単に高級という視点だけでは、非常に厳しい戦いになりそうだ。

■日産シルフィ ルグラン価格:2,674,080円