<クリーンディーゼル車の制御を変更し、発進加速&レスポンス向上>
現行の三菱デリカD:5は、2007年に5代目としてデビューした。当時は、ミニバンブーム。当然、三菱にとって久しぶりの新型車でミニバンとなれば、話題となるのも当然だ。
ところが、三菱は他社のようにラグジュアリー感あふれるモデルを出すのではなく、三菱の4WD技術を主軸にワイルドさを前面に出し、オフローダー的要素を多く含んだミニバンとして差別化した。これは、他社と同じようなコンセプトでは販売網が弱い三菱が勝てる要素が無いという判断の上でのことだ。しかし、ミニバンブームとはいえ、デリカD:5の販売台数は伸びていかない。
その理由は、差別化されてユニークな存在となったものの、ミニバンとしてはニッチ層向けになったことだ。現在でも販売台数は月販1,000台前後となっている。ただし、少ないとはいえ、この販売台数のまま長期に渡りコンスタントに売れているのだ。三菱にとっては、デリカD:5はベストセラーといえるモデルに成長した。
モデル末期なのに、コンスタントに売れている要因のひとつが、デリカD:5に待望のクリーンディーゼルエンジン が搭載されたこと。2013年に投入され、エコカー減税が免税だけでなくクリーンエネルギー自動車等導入促進対策費補助金の対象車にもなっている。また、大型のボディをもち車重が重いミニバンにとって、低回転から大トルクを発生するディーゼルエンジンとの相性がよく、力強い走行性能も魅力だ。
さらに、軽油を使うことからガソリンに比べ約20円/L程度安いということもあり、燃料費視点ではハイブリッド車並みという経済性も支持される理由のひとつ。また、4WD車で降雪地域の多くの顧客に、減税・補助金のメリットを提示できる数少ないモデルとなっている。
そして、ベストセラーモデルとなっているもうひとつの要因が、小まめな仕様変更や特別仕様車の設定だ。2014年に入り、デリカD:5は2つの特別仕様車を投入し、さらに今回一部改良を施している。
今回の一部改良も、単に見栄えをよくするなどの小手先の改良ではなく、クルマの本質部分である走行性能にかかわるクリーンディーゼルエンジンの制御を変更している。この変更により、発進加速性能およびアクセルレスポンスを向上させているなど、より良いクルマに進化させていこうという姿勢が見て取れる。こうした姿勢は高く評価できる。大ヒットモデルをもつメーカーの中には、マイナーチェンジまで何もせずに3年間放置するところもあるからだ。
エンジン以外の改良では、センターパネルの色をピアノブラックに変更。本木目&本革巻ステアリングホイール、各種木目調パネル(インパネセンター、アッパーグローブボックス、フロアコンソールリッド、パワーウインドウスイッチ)の装着により、インテリアの高級感を一層高める「ラグジュアリーパッケージC」をメーカーオプション設定にするなど、インテリア全体の上質感アップが図られている。
機能面では、便利なエレクトリックテールゲートを、「G-Power package」「D-Power package」グレードにメーカーオプション設定としている。
今後の進化として期待したいのは、現在注目されている安全装備の充実だ。アウトランダー に用意されている予防安全技術で自動ブレーキを装備した「e-Assist」は、早急に欲しい装備のひとつ。トヨタがこうした安全装備の装着が遅れているだけにチャンスでもある。
価格は、ガソリン車の一部の価格がそれなりにアップしている。ところが、エンジン制御に手を加えたクリーンディーゼル車の価格アップは、ほとんど無いに等しいレベル。これは、顧客にとってもメリットがある。
デリカD:5の選び方は、クリーンディーゼル車がお勧め。価格は350万円オーバーとなるものの、ガソリン車と比べても燃料費は大幅に安くなる。そして、大トルクをもつエンジンなので、乗員フル乗車でも余裕ある走りが可能なのも魅了だ。これからガソリン価格が安くなることは到底考えにくいこともあり、リセールバリューも燃費性能の高いディーゼル車が高くなる傾向になるのは確実だろう。短期間での乗り換えを視野に入れているのなら、尚更ディーゼル車がお勧めだ。購入価格は高くても、リセールバリューも高くなると思われるので、いくらか差額は回収できるだろう。
■価格 <2WD 2.0L車 CVT> M 2,397,600円~ D-Premium 4,046,760円