三菱eKワゴン

 

<燃費性能は向上したものの、安全装備は放置>

三菱eKワゴン三菱eKワゴンは、三菱 と日産 の軽自動車 における合弁会社NMKV が開発した初のモデルだ。日産デイズが姉妹車にあたる。

2013年6月にデビューしたeKワゴンは、激戦のハイト系ワゴンクラスに投入された。当時ワゴンRとムーヴが、激しい燃費戦争中。最後発モデルのeKワゴンは、当時29.0㎞/Lでトップだったムーヴの燃費値を超えなくてはならない宿命にあった。

そんな燃費戦争中に開発されたモデルだったため、とにかく燃費重視の設計となっていた。圧縮比12.0とし、軽自動車中トップの高圧縮比エンジンを搭載。軽自動車初となる水冷式EGRクーラーを装備するなど、徹底的に低燃費化の技術が投入されたのだ。

その結果、eKワゴンの燃費は29.2㎞/Lとクラストップを獲得。燃費戦争は、これで、一時休戦となるはずだった。しかし、スズキはイッキに巻き返しに出たのだ。フルモデルチェンジされたばかりのワゴンRを大幅改良。話題のエネチャージを搭載し、ライバルを大きく引き離す30.0㎞/Lというクラストップの低燃費で、ナンバー1の座を再び奪取した。eKワゴンの燃費ナンバー1の座は、わずか1ヶ月程度というNMKVにしてみれば屈辱的ともいえる結果となった。

この30.0㎞/Lという低燃費性能はずば抜けていて、その後、ホンダ がこのクラスにNワゴンを投入したものの、30.0㎞/Lという低燃費性能を超えることができなかった。さすがのホンダも、この低燃費性能を超えることができず、Nワゴンは29.2㎞/Lという燃費に甘んじる結果となった。

30.0㎞/Lという燃費で、今度こそ燃費戦争は休戦しそうな様相をみせていたが、なんとeKワゴンが、わずか1年で一部改良を施し燃費をワゴンRと同じクラストップの30.0㎞/Lとして登場した。NMKVの燃費に対するこだわりも相当なものだ。

この燃費性能を得るために、新たな技術が追加された。その技術とは、「アシストバッテリー」の搭載だ。このアシストバッテリーは、eKワゴンの後に登場したスーパーハイト系のekスペースに搭載された低燃費技術だ。

基本的に、この技術は、スズキのエネチャージとほぼ同じ。加速時にはオルタネーターを切り離し、エンジンの負荷を軽減。減速時に、オルタネーターで発電した電力を効率よく電池に充電するというものだ。充電した電力は、アイドリングストップ時や加速時に、電装品などに使い低燃費化する。スズキのエネチャージとの大きな違いは、スズキが電池にリチウムイオンを使っているのに対して、eKワゴンは安価なニッケル水素電池を使用していることくらいだろう。

燃費向上と同時に、走行性能も改良された。eKワゴンは、燃費重視過ぎたため、とにかくトルクがないクルマになっていた。今回の改良では、CVTの仕様を最適化。エンジンの吸気ダクト形状を改良し、動力性能を向上させた。エンジンスペック的には、とくに変化がないのだが、実際の走行するとやや低・中速域でのトルクが出ているようで、以前のモデルよりは若干力強さを感じられた。

燃費も向上し、走りも良くなったeKワゴンだが、安全装備の軽視姿勢は相変わらずだ。未だに横滑り防止装置であるASCは、カスタムのターボ車がオプションで選べるだけで、他のモデルはオプションでも選べないという状態。

eKワゴンは、2014年内末くらいまでを目標に、追突被害軽減自動ブレーキの装備を急いでいる。今時の軽自動車では、もはや当たり前の安全装備となっている。この追突被害軽減自動ブレーキは、横滑り防止装置ASCの機能を使っているため、追突被害軽減自動ブレーキが用意されるまでは、横滑り防止装置を装備しない考えなのだろう。ekワゴンの購入を考えているのなら、この追突被害軽減自動ブレーキが装備されてからがよい。

もはや、最近の軽自動車は、並みの普通車以上に高い安全装備をもっている。ホンダNワゴンは、燃費で若干負けたものの、横滑り防止装置は全車に標準装備。最廉価グレード以外では、追突被害軽減自動ブレーキとサイドエアバッグ+サイドカーテンエアバッグまで標準装備されている。軽自動車は、足代わりだから安価な方が良い。そんな風潮もあり、価格重視になりがちだ。しかし、自分自身や同乗者のリスク回避や、運転ミスによる他人への危害を少しでも考えるのなら、価格や燃費だけでなく安全装備に関してもジックリと比較して買うべきだろう。

eKワゴン価格:■eKワゴン E 2WD 1,080,000円~G 4WD 1,373,760円

eKカスタム価格:M 2WD 1,305,720円~T 4WD 1,590,840円