トヨタ ウィッシュとホンダ ストリームを徹底的に比較し、どちらが優秀なクルマなのかを検証した。燃費や安全装備といった性能面に加え、デザインやインテリアといった見た目の印象についても詳細にまとめている。どちらが「買い」なのか、ぜひこの記事を参考にしてほしい。

この記事の目次 CONTENTS
1.トヨタ ウィッシュとホンダ ストリームは生まれた時からライバル
2.トヨタ ウィッシュのファーストインプレッション
3.トヨタ ウィッシュの性能
4.トヨタ ウィッシュのエンジン&インテリア
5.ホンダ ストリームのファーストインプレッション
6.ホンダ ストリームの性能
7.ホンダ ストリームのエンジン&インテリア
8.比較結果は燃費性能で圧勝したクルマ

ライター紹介

自動車ライター&エディター

近藤 暁史 氏

某自動車雑誌の編集者から独立。その前はファッションエディター(笑)。とにかくなんでも小さいものが好きで、元鉄チャンで、今ではナローゲージを大人買い中。メインのクルマは19歳の時に買ったFIAT500。エンジンのOHからすべて自分でやり、今やもうやるところがない状態でかわいがっております。表向きは自動車ライターながら、業界唯一の省燃費グッズの評論家というのがもうひとつの顔。

1.トヨタ ウィッシュとホンダ ストリームは生まれた時からライバル

街中での取り回しや使い勝手だけでなく、走りにもこだわったMクラスミニバンの先駆けといえばホンダのストリーム。それに対して、トヨタが真っ向勝負でリリースしたのがウィッシュだ。
なんとボディサイズまでまったく一緒という、露骨なライバル対決であった。

その後、モデルチェンジ時期の違いもあって、直接比較されることは少なくなったが、トヨタのウィッシュがフルモデルチェンジを行ない、一歩先んじた感はある。

逆にストリームは大幅な変更を実施するマイナーチェンジで巻き返しを図るが、取材時はマイナーチェンジ前のモデルで、ハンディは大きいように見えた。
現行のウィッシュは走りを中心にエコと経済性を高めており、独自の路線を歩み始めたようにも見えるだけに、元祖走り系Mクラスミニバンであるストリームにも勝機はあるようにも思える。
トヨタとホンダの真っ向勝負、ここに再現か!?

2.トヨタ ウィッシュのファーストインプレッション

先代はホンダのストリームを大きく意識したものだったが、2代目となる現行型は独自路線を採ってきた。

まずはデザイン。このクラスだとなにかとスマートに見せることで、5ナンバー感や使い勝手のよさをアピールするものだが、それにはあえてこだわっておらず、ボリュームはかなりのもの。
ライトをつり目にしたり、Bピラー以降をブラックアウトしていることもあって、ミニ エスティマっぽい雰囲気を醸し出す。

パッケージングよりも走りを充実

ボディスタイルは3つで、ワイドな3ナンバーサイズもある。ただし、肝心のパッケージングは大きな進化を遂げていないのは残念なところ。
その理由はシャーシ自体を先代からキャリーオーバーしているからだ。
とくに3列目はかなり窮屈だが、子供用などとハナから割り切っているのかもしれない。
その反面、走りは一新されて大きく進化している。つまり現行ウィッシュの真骨頂は走りにあり、といってもいい。

バルブマチック採用がトピックス

エンジンは1.8リッター/2リッターという布陣は変わらないものの、ノア/ヴォクシーで実績のあるバルブマチックを搭載し、低回転を中心にした低燃費とパワーの両立を実現している。
さらにミッションも1.8リッターが4速ATだったのに対して、両エンジンともスーパーCVT-i化。しかも7速シーケンシャルモード付きという豪華さ。
さらに2リッターの一部グレードではミッションだけでなく、ステアリングまで制御するダイナミックスポーツモードも備わり、スポーティな走りを楽しむことができる。

3.トヨタ ウィッシュの性能

トヨタ ウィッシュの性能について解説していく。

エコ&燃費:バルブマチックが大きな効果を発揮

バルブを最小限しか開けないバルブマチックはエコ&省燃費に大きな効果を発揮。バルブマチックのあるとなしでは燃費が10%ほど違うという。
さらにCVTの賢さもアシスト。ただし、エコモードが全グレードに付くわけではないのは残念なところ。

安全性能:標準装備が増え、文句なしに先進

全グレードに横滑りを防止するS-VSCとサイドエアバッグが標準となるのは文句なしに先進的だ。
ただし、2列目中央のシートベルトが3点式でないのは、車両規定の改定目前に登場したクルマとしては残念。

取材時実測燃費

15.1km/L

トヨタ ウィッシュ 価格帯

184.0〜248.0万円

トヨタ ウィッシュ 1.8S(FF)のスペック

トヨタ ウィッシュ 1.8S(FF)のスペックは以下の通り。

ボディサイズ(全長x全幅x全高) 4590×1720×1590mm
車両重量 1360kg
エンジンタイプ 直列4気筒DOHC
総排気量 1797cc
最高出力 144ps(106kw)/6400rpm
最大トルク 17.9kg-m(176N・m)/4400rpm
ミッション CVT
10・15モード燃費 16.0km/l
サスペンション(前/後) ストラット/トーションビーム
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格 209.0万円

4.トヨタ ウィッシュのエンジン&インテリア

次は、トヨタ ウィッシュのエンジン&インテリアについて詳しく解説する。

パワフルさと低燃費を両立させたエンジン

トヨタ ウィッシュのエンジンは全車バルブマチック仕様となった。これによりパワフルさと低燃費を両立させているのだ。

1.8S(写真)は16インチ、2.0Zは17インチのアルミホイールが標準装備。その他のグレードは15インチ仕様となっている。

実用性が高く、使いやすいインテリア

飛行機の翼をイメージしたというインパネは、質感も申し分なし。
小物の収納スペースも豊富で実用性の良さも備えている。

ミッションは全車CVTを採用。
滑らかな変速はもちろん、バルブマチックエンジンのおかげもあり、実用燃費の高さは驚くほど。

内装色はブラックに加えて、明るいベージュ系(写真)も追加された。ピラーを細く見せる工夫により、狭い道などでも運転しやすい。

セカンドシートは7人乗りのベンチシートタイプ(写真)が基本だが、2.0Zは6人乗りとなり、セパレートシートを装備している。

セカンドシートに比べてサードシートはスペースはあまり拡大されていない。だが大人も何とか座ることはできる実用性はある。

メーターはスポーティさを強調したデザイン。中央の液晶ディスプレーには平均燃費やエコドライブモニターの表示ができる。

7人フル乗車時でも普段の買い物などには十分なスペースが確保されている。開口部は広いので使い勝手はとてもいい。

セカンド/サードシートともにシートの収納はとても簡単。妙な段差や隙間もなく、ラゲッジスペースを有効に使うことができる。

5.ホンダ ストリームのファーストインプレッション

このジャンルの先駆けといえば、ストリームだ。ただし、現行モデルに関しては登場からかなり時間が経っている点が気になる。

マイナーチェンジ直前ゆえにハンディは大きかったか!?

2代目となる現行型は低床・低重心を実現すべく、シャーシから新開発されている。その結果、多くの立体駐車場に入る1545mmという低全高を実現し、かつ、室内も広々としているのがポイント。
3列目でも低床の効果が発揮されているのか、足もとに十分なクリアランスが確保されているので最低限座ることができるスペースを確保している。

さらに乗降性についても配慮されている。やはりホンダ自慢のシャーシの恩恵は大きい。
もちろん、5ナンバーサイズ堅持のボディも取り回しはいい。

i-VTEC装備でパワーと経済性を両立

エンジンは1.8リッターと2リッターの2タイプ、i-VTECを装備することで、パワーと経済性を両立。
組み合わされるのは前者が5速ATで、後者はCVT(4WDは5速AT)で、それぞれの特性を引き出すような選択といっていい。

アブソルートの後継グレードRSZ

さらにホンダらしいという点では初代にあったアブソルートの後継グレードとしてスポーティなRSZも用意されていることだろう。
足まわりに専用チューニングが施されるだけでなく、フロントまわりのデザインもオデッセイのような迫力のあるものに特別に仕立てられている。

ただし、走りの味付け自体は以前のアブソルートのようにハードではなく、しっとりとした感じだ。

6.ホンダ ストリームの性能

ホンダ ストリームの性能について詳しく解説。

エコ&燃費:排ガス基準はいいが、減税は対象外

マイナーチェンジ直前のエンジンではi-VTECということもあり、排ガス基準は全グレードで75%低減レベル。つまり4つ星を獲得しているのはいいのだが、燃費基準はFFでも+10%達成とかなり厳しい。
このままではもちろんグリーン&エコ減税の対象にはならない。

安全性能:Mクラス以外は見るべき装備があまりない

追突軽減ブレーキ+Eプリテンショナーとインテリジェント・ハイウェー・クルーズ・コントロールのセットに関しては、Mクラスでは贅沢な装備だ。
しかし、それ以外は見るべき装備があまりないのは残念なところ。

取材時実測燃費

10.2km/L

ホンダ ストリーム 価格帯

180.6〜255.15万円

ホンダ ストリーム 1.8X(FF)のスペック情報

ホンダ ストリーム 1.8X(FF)のスペック情報は以下の通り。

ボディサイズ(全長x全幅x全高) 4570×1695×1545mm
車両重量 1350kg
エンジンタイプ 直列4気筒SOHC
総排気量 1799cc
最高出力 140ps(103kw)/6300rpm
最大トルク 17.7kg-m(174N・m)/4300rpm
ミッション 5速AT
10・15モード燃費 14.8km/l
サスペンション(前/後) ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後) ベンチレーテッドディスク/ドラム
税込価格 180.6万円

7.ホンダ ストリームのエンジン&インテリア

ホンダ ストリームのエンジン&インテリアについて詳しく解説。

車重は同等でも、燃費はウィッシュに敵わない

ストリームも1.8リッター(写真)と2リッターをラインアップ。車重が同等にもかかわらず、燃費はウィッシュに敵わない。

ベースグレードの1.8Xは15インチのスチールホイールを装備。スポーティなRSZは17インチのアルミホイールを履く。

スポーティさと快適な室内空間を合わせもつ

ホンダらしいスポーティさも感じさせてくれるインテリア。視界の良さもウィッシュに引けを取らず、運転はとてもしやすい。

ミッションは5速ATがメインで、CVTを搭載するのは2リッターのFFのみ。車重はウィッシュと同等だが燃費性能は負けている。

大型のアームレストも備え、快適なドライブが楽しめる。それでいて横方向のサポートもしっかりしており、スポーツ走行にも対応。

ウィッシュとは異なり、全車7人乗り仕様となる。足元や頭上の空間も十分な余裕があるので、とても快適にくつろぐことができる。

サードシートのスペースは、ウィッシュよりも少し余裕がある。視界もそれほど悪くはないので、窮屈な印象はあまりない。

メーターは文字盤も大きく、とても見やすい。中央のインフォメーションディスプレーは、やや表示が小さめに感じられる。

ホンダ独自の低床プラットフォームのおかげもあり、ラゲッジの広さに不満はない。ただ上部の横幅が若干狭めなのが気になるところ。

セカンドシートとサードシートの間にわずかだが隙間ができてしまうのが残念なところ。容量自体には特に不満は感じられない。

8.比較結果は燃費性能で圧勝したクルマ

省燃費性能はウィッシュが圧勝。ストリームはマイナーチェンジ後の性能に期待したい、というのが今回の結論だ。

トヨタ ウィッシュは、全車バルブマチック仕様のエンジンとCVTの組み合わせ。これにより滑らかでパワフルな走り、そして優れた省燃費性能をハイレベルでバランスさせている。
今回の取材での燃費も、車重と排気量が同等にもかかわらず、かなりの差が付いていることからもそれがわかる。
走りに関しては1.8リッターモデルでもパワー不足な印象はなく、ワインディングや高速道路でも想像以上の実力を発揮する。

対するホンダ ストリームは、デビュー時期が古いこともあり、環境性能や安全性ではウィッシュに及ばない部分も多い。
ただし、マイナーチェンジを目前に控えているので、そのあたりが改善される可能性は高い。
肝心の走りは、やはり低床・低重心プラットフォームのおかげでコーナーでの安定感も高く、いかにもホンダらしい味付けだ。

(PHOTO/ 森山良雄 モデル/ 佐藤まいみ