ザ・対決 スバル インプレッサ WRX STI Aライン VS 三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート
スポーツハッチバック編
スバル インプレッサ WRX STI Aライン vs 三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート

 永遠のライバルたるスバルのインプレッサと三菱のランサーエボリューション。ここに来て、さらに裾野を広げ、インプレッサからは待望のATを搭載したWRX STI Aラインが登場し、ランサーエボリューションのベースとなるギャラン フォルティスにもスポーツバックが追加されている。
 このスポーツバックのラリーアートにはランサーエボリューション譲りのツインクラッチSSTを贅沢にも搭載する点には大いに注目だ。これで両ライバルにおいて、ハッチバックのATが揃ったことになる。エンジンに関してはどちらもターボを搭載し、フルタイム4WDによってそのパワーを余すところなく、伝えるのも一緒。
 まさに永遠のライバルといった由縁はここにもあるのだが、AT同士による実力対決が気になるところ。今やATといってもMTのイージードライブ版ではなく、独自の個性で勝負しているだけに、その対決結果はいかに?

佐藤まいみ
PHOTO/森山良雄 構成・文/近藤暁史
モデル/ 佐藤まいみ

ROUND1:ファーストインプレッション

スバル インプレッサ WRX STI Aライン
スバル インプレッサ WRX STI Aライン リヤ
2.5リッターターボ+ATで
リーズナブルな価格設定

 インプレッサWRX STIの一部改良に合わせて追加設定されたのが、インプレッサWRX STI Aラインだ。基本的にはWRX STIのATバージョンと考えればいいのだが、じつはそれだけでなく、エンジンが2リッターに対して、Aラインではレガシィにも積まれる2.5リッターのターボを心臓部に収めているのだ。
 しかも価格はWRX STIより50万円以上安いのだから、かなりのお買い得モデルといっていいだろう。ただし、ブレンボ製フロントブレーキやレザーシートはオプションのみでの用意なので、選び方次第ではかなり価格はアップしてしまうことも考えられるので要注意だ。
 このAラインで興味そそられるのは、コンパクトなボディと300馬力ものスペックを誇る2.5リッターターボの組み合わせがどんな味わいかということ。シングルスクロールターボながら下からモリモリとトルクがわき上がるように出るのは排気量アップの恩恵の部分。スペック的に見ても2800回転から最大トルクを発生するので、扱いやすさは抜群。低回転からアクセルを踏んでもストレスなく加速していく。インプレッサWRX STI Aラインは、ギャランフォルティス スポーツバックよりも車重が100kgも軽いというのは大きなアドバンテージだろう。
 ミッションは一般的な5速ATだが、ステアリング裏に装着されたパドルシフトの反応はよく、シフトダウン時に自動でブリッピングして回転を合わせてくれるのは、雰囲気演出という点でもワクワクさせられる。駆動方式はもちろん4WD。前後輪に対するトルク配分を連続可変で行なうVTD(不等&可変トルク配分電子)タイプで、どんな状況でも安定した走りを楽しむことができる。

[エコ&燃費]
 バルブタイミングを連続して制御するデュアルAVCSを採用することで、ハイパワーだけでなく燃費の向上にも力を入れている。またスバル自慢のSI-DRIVEが装備されるので、任意で燃費重視のモードを選ぶこともできる。ただし、排ガス規制に関しては、50%低減に止まる。

[安全性能]
 スリップ時の挙動安定だけでなく、コントロール性についても配慮したスーパースポーツABSを標準採用している。また横滑りを防止するVDCも標準で装備されているのも、最近のスバル車に見られるいい傾向だ。

[取材時実測燃費]
7.8km/L

[スバル インプレッサWRX STI価格帯]
315.0〜368.55万円

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート
三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート リヤ
ツインクラッチSSTも用意した
大人のスポーティハッチバック

 セダンであるギャラン フォルティスの5ドアハッチバック版となるのがスポーツバック。スポーツバックと銘打つだけに、ただのハッチバックではなく、ハイデッキを強調したスタイリッシュなフォルムは、ヨーロッパテイストを全面に出したものだ。フロントマスクはフォルティス・ラリーアートと共通だけに、かなり押し出しは強く、スポーティなテイストにあふれる。
 エンジンは2リッターのみ。CVTとの組み合わせはスポーツとツーリング。さらにはラリーアートも用意される。こちらはまさにランサーエボリューション譲りといった内容で、ターボ&ツインクラッチSST&4WDのみで、走りはかなり充実しているといっていい。ただし、AYCなどを装備するS-AWCではなくAWCとなる。
 ターボに関してもランサーエボリューションがレスポンスとパワーを両立させたツインスクロールターボなのに対し、低速域のトルクを重視したマイルドな味付け。現にパワーは240馬力で、ランサーエボリューション的な過激なものではない。その分を35kg-mという太いトルクと間断のないシフト操作を可能にするツインクラッチSSTが補った形になっており、ハッチバックらしいキビキビとした走りを楽しむことはできる。ランサーエボリューションの弟分と考えれば納得いくだろう。
 インテリアでもバケットタイプのシートを採用するなど、スポーティな演出が試みられているが、ベースのフォルティス同様に素っ気ないのは残念なところ。ただし、ハッチバック化により、ラゲッジまわりの使い勝手も高まっているのは注目だろう。

[エコ&燃費]
 三菱が長年に亘って熟成させてきたこだわりのMIVECを採用するなどして、燃費はラリーアートでも10.2km/Lとなかなかのもの。ただし排ガス基準はNAで4つ星。ターボは3つ星。燃費基準に至ってはNAが達成のみで、ターボはなしと少々さみしい。

[安全性能]
 ヨーロッパも視野に入れたモデルだけに、全員分のヘッドレスト&3点式シートベルトを用意している。また横滑りを防止するASCはラリーアートに標準で、それ以外はメーカーオプションで選べる。急ブレーキ時に自動でハザードが点灯するESSを装備しているのは日本車ではまれ。

[取材時実測燃費]
9.1km/L

[三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック価格帯]
192.15〜301.35万円

スバル インプレッサ WRX STI Aライン プレミアムパッケージ
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4415×1795×1475mm
車両重量
1480kg
エンジンタイプ
水平対向4気筒DOHCターボ
総排気量
2457cc
最高出力
300ps(221kw)/6200rpm
最大トルク
35.7kg-m(350N・m)/2800〜6000rpm
ミッション
5速AT
10・15モード燃費
10.0km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/ダブルウィッシュボーン
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ベンチレーテッドディスク
税込価格
336.0万円
三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート
ボディサイズ(全長x全幅x全高)
4585×1760×1515mm
車両重量
1580kg
エンジンタイプ
直列4気筒DOHCターボ
総排気量
1998cc
最高出力
240ps(177kw)/6000rpm
最大トルク
35.0kg-m(343N・m)/3000rpm
ミッション
6速ツインクラッチSST
10・15モード燃費
10.2km/l
サスペンション(前/後)
ストラット/マルチリンク
ブレーキ(前/後)
ベンチレーテッドディスク/ディスク
税込価格
301.35万円
スバル インプレッサ WRX STI Aライン 2.5リッターターボエンジン

排気量を2.5リッターとすることで、パワーよりもトルクを重視した設定。とはいえ300馬力を発生し、十分すぎるほどのハイパワーではある。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン 18インチホイール

MT仕様と同じく18インチのタイヤ&アルミホイールを装着する。STIのロゴが入れられたブレンボ製キャリパーはオプションで選択できる。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート 2リッターターボエンジン

ランエボと同じ2リッターターボながら、より低速域でのトルクを重視したセッティング。街中でも扱いやすくパワー不足な印象はまったくない。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート 18インチホイール

ラリーアートは18インチのタイヤ&ホイールを履く。インプレッサやランエボとは違い、オプションでもブレンボ製のキャリパーは装着できない。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン インパネ

インパネのデザインはシフトレバーなどを除いて、MT仕様とほぼ共通。スポーティさだけでなく、上質さも兼ね備えている。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン シフトレバー

ミッションはトルコンタイプの5速ATを採用。レバーでのマニュアル操作はもちろん、パドルでもシフト操作が可能だ。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート インパネ

カーボン調のパネルを装備するなど、スポーティな演出がなされている。日常の使い勝手の良さもしっかり考えられている。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート シフトレバー

MT車並のダイレクト感ある走りが楽しめる6速ツインクラッチSSTを搭載。もちろんパドルシフトも装備している。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン メーター

メーターのデザインはMT車と基本的に共通。レブインジケーターなどがない代わりに、シフトインジケーターなどを装備する。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン パドルシフト

パドルシフトを装備し、スポーティな走りが楽しめる。シフトダウン時のブリッピング制御は、スポーツモデルらしい演出で好印象。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート メーター

メーターは文字盤も大きく、とても見やすい。中央のインフォメーションディスプレーには、さまざまな情報が表示できる。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート パドルシフト

変速時のタイムラグの少なさは特筆もの。知らないうちに改良が加えられているようで、ATモードでのスムーズさも増している。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン フロントシート

MT仕様はアルカンターラ/本革が標準だが、Aラインはファブリック/合成皮革となる。ただし本革仕様もオプションで用意。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン リヤシート

リヤシートの広さに大きな不満は感じられない。一部改良後のモデルは、中央席にも3点式シートベルトとヘッドレストが標準装備になった。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート フロントシート

ラリーアートのシートは、形状こそ他のモデルと同じだが、ラリーアートのタグが装着される。サイドのサポートも十分だ。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート セカンドシート

元々海外市場をメインにしているだけあり、広さも十分。人数分の3点式シートベルトとヘッドレストはもちろん標準装備だ。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン ラゲッジ

このクラスのハッチバック車としては十分満足できる容量が確保されている。開口部の広さや内部の形状も使いやすい印象だ。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン ラゲッジ

リヤシートを倒せばかなり大きな荷物も積み込めるスペースが現われる。フロアもフラットになるので、長いものなども積みやすい。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート ラゲッジ

若干、インプレッサよりも広いように感じられる。海外がメインのクルマだけありトノカバーも標準装備でセキュリティーも万全。

三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート ラゲッジ

リヤシートはラゲッジ壁面のレバーを操作するだけで簡単に倒せる。フロアは2段式になっており、使いやすい工夫がなされている。

スバル インプレッサ WRX STI Aライン vs 三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアート

スバル インプレッサ WRX STI Aラインは、MT仕様に比べてしなやかな設定の足まわりを持っている。そのため市街地や高速道路でも快適にドライブすることができる。それでいてコーナーでの限界も非常に高いのには驚かされる。対する三菱 ギャラン フォルティス スポーツバック ラリーアートはというと、こちらも日常の快適性を重視したセッティングが施されている。ただ、運転する楽しさではインプレッサの方が、やや有利な印象だ。